AR-18
えーあーるじゅうはち
概要
基本データ
全長 | 733/970mm |
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銃身長 | 463mm |
重量 | 3170g |
口径 | 5.56mm |
装弾数 | 20/30/40発 |
1963年にアーマライト社で開発。
アーサー・ミラー、ユージン・ストーナーら設計。
アーノルド・シュワルツェネッガー主演の映画ターミネーターでシュワちゃんが警察署内でぶっ放した銃として有名(因みに左手にはフランキ スパス12を構えている。)
開発経緯
アーマライトはAR-15の製造権をコルト社に売却しており、代わりとなる5.56mm自動小銃を開発する必要があった。
当時世界はアメリカを中心とする資本主義とソ連を中心とする社会主義と二分され対立していた。いわゆる冷戦である。
そのソ連はAK47といったAKシリーズを同盟国やソ連が支援している発展途上国に供与した。頑丈性と信頼性に優れたことから後にそれらの国からライセンス生産、さらにはAKシリーズをベースとした銃を生産していたのである。
一方のアメリカもソ連のやり方にならってM16を同盟国や西側寄りの発展途上国で製造させようと考えたのだが、ここで問題があった。リュングマン方式であること、製造法のことである。
リュングマン方式はM16の欄でもあった通り、ガスチューブを介しボルトキャリアに直に吹き付け、作動する方式となっており、ガスピストンと違いバレル上方で重量物が移動しないため射撃精度に寄与できるが、高温高圧のガスが銃の作動部へ吹き付けるため、部品の寿命の減少、汚れのための作動不良等の問題が起きる場合があるということである。製造法もアルミとプラスチックを使用しており、先進国ならアルミ合金は製造できるが発展途上国では製造できるのかどうか分からなかったためで計画は中止となったのである。
そこでアメリカは西側版 AKシリーズという銃を造れないかと考えたとき、アーマライト社のAR-18に注目したのである。
製造法としてM16が採用していたアルミとプラスチックの合金からスチールプレスを多用した製造法に変更され、茶道方式もリュングマン方式からM1カービンやSKSカービンと同系のショートストロークピストン方式となっている。銃床は空挺部隊や車輌部隊にも配慮したことから固定式ではなく折り畳み式を採用している。
このように「M16よりタフ」とコンセプトとされたAR-18だが、ここで問題が発覚。
プレス加工なため機関部の質が悪かったこと、折り畳み式銃床が壊れやすかったことである。
さらに追い打ちをかけることに「現地でAR-18造るよりM16を造って輸出した方がええやん!」ということによりM16が大量生産されて一挺あたりの単価も安くなりこれが輸出されることでAR-18をわざわざライセンス生産する意義が失われ、軍の主要装備として採用する国は現れなかった。
バリエーションとして軍用カービンのAR-18Sがある。
民間型の名称はAR-180。
アーマライトはNATO弾であるSS109に対応したポリマー製強化ロアレシーバーのAR-180Bを2001年より販売したが、レシーバーの製造を委託していたイーグルアームズが倒産したことで2007年に製造が終了した。
次世代アサルトライフルの父
上述のことでいらん子扱いされたAR-18だが、M16のリュングマン式とそのデザインに由来する作動不良を嫌った多くの諸国では、プレス加工・折り畳み銃床・ショートストロークピストン方式のAR-18を参考とし、形状もAR-18に類似したデザインのアサルトライフルを開発した。
ベレッタ AR70/90やH&K G36、L85、MASADAなど多数に上り、その影響はM16よりも大きなものとなった。
かつてライセンス生産していたメーカーも独自の銃を開発している。スターリング・エンジニアリング社のスターリングSAR-87、豊和工業の89式小銃である。台湾軍のT65、91式歩槍である。
正式採用する国はなかったものの、G36やSG550などといった名銃が生まれたことにより、先見性があり次世代アサルトライフルのベースとなったAR-18は非常に重要な銃ともいえる。
そう、この銃のDNAはさまざまなところで引き継がれていったのである。
日本とAR-18
豊和工業ではAR-18のセミオートマチック専用型であるAR-180をライセンス生産し、タイ警察軍やブラジル警察軍などやアメリカの民間向けに海外輸出されていたのだが、アメリカに輸出されたものがあろうことかIRA(アイルランド共和軍)のシンパにより北アイルランドに送られてテロ活動に使用されていた事が発覚し、日本の国会でも問題となったため、豊和工業での製造は打ち切られた。
後に小口径アサルトライフルの試作が豊和工業で開始された際には、AR-18のデザインとプレス加工による製造法が参考にされており、完成した89式小銃はAR-18に似た構造となったため、中国やロシアなどは89式小銃をAR-18の亜種と認識している。
内部構造的には89式小銃のガスシステムにはロングストロークのガスピストンが採用され、トリガーメカや、ボルトキャリアとリコイルスプリングの配置などAR-18と異なる点も多い。
IRAとAR-18
北アイルランドで発見されたAR-180は、製造メーカ名や個体番号などの刻印が削られて、フルオート射撃が可能なように改造された(セミ・オート専用型をフル・オートに逆改造することは内部部品の一部を削る程度で容易に行えた)ものだったが、英国警察の X線撮影による鑑定作業で刻印が復元され原産国が特定された。
当時のIRAは多数の改造AR-180を入手した事で、英軍に対する軍事的劣勢を一挙に挽回する機会を得て「アーマライトと投票箱戦術」と呼ばれたテロと議会の両分野での活発な活動を始め、リトル・アーマライトという歌まで作られた。
英国側はAR-180による攻撃で大きな被害を受けたため、Widow Maker(ウィドウ・メイカー、直訳で「未亡人製造機」。「殺人兵器」の意味だが、致命事故の多発する軍用機など、自陣営が製作したにも関わらず味方を殺傷するものに対するスラング)と呼んだ。