ジンジャーブレッドマン【gingerbreadman】とは、人型をしたジンジャーブレッド(生姜入りのクッキー)のこと。および、それにまつわる民話。
概要
ジンジャーブレッドマンとは人型をしたジンジャーブレッドであるが、クリスマスに作られ食べられることが多い。
これは本格的に冬が始まって寒くなり始めるこの時期に、東洋から伝わった生姜には体を温める薬効があると言われていたため、その効果を期待して寒い時期に備える意味合いがあると言われている。
民話として
むかしむかし、お爺さんとお婆さんが、ある林の傍の古い家に住んでいました。
2人は老いてなお仲睦まじく幸せな夫婦でしたが、子どもが一人もおらず、子どもをとても欲しがっていました。
ある日、お婆さんはジンジャーブレッドを焼こうと思い小麦粉を捏ね、すり下ろした生姜を練り込んだ生地を作り、それを男の子の形に切り抜いてオーブンに入れて焼き始めました。
しばらくしてお婆さんは、出来上がった頃合いを見計らってオーブンの扉を開けました。
するとこんがり焼き上がったジンジャーブレッドの男の子は、そのままオーブンから飛び出し、あらん限りの力で走り出し、逃げていきました。
お婆さんはお爺さんを呼び、二人で追いかけましたが、捕まえることが出来ません。
ジンジャーブレッドの男の子は歌を歌って逃げていきます。
「逃げるよ、逃げるよ、君たちと同じ早さで。捕まえられっこないよ。僕はジンジャーブレッドマン」
そしてすぐにジンジャーブレッドの男の子は、麦打ちをしている人たちがいる納屋に駆け込みました。そして彼らにこんな歌を歌いかけました。
「僕はお爺さんお婆さんから逃げてきた。君たちからだって逃げてみせるよ」
それを聞くと、納屋で麦打ちをしていた人たちも、ジンジャーブレッドの男の子を後から追いかけようとし始めました。しかし、素早く走り去るので追いつくことは出来ません。
やがてジンジャーブレッドの男の子は、麦刈りをしている人たちがいる畑まで逃げてきました。そして彼らにこんな歌を歌いかけました。
「僕はお爺さんお婆さんから逃げてきた。麦打ちをしていた人たちから逃げてきた。君たちからだって逃げてみせるよ」
それを聞くと、畑で麦刈りをしていた人たちも、ジンジャーブレッドの男の子を追いかけ始めました。しかし、捕まえることは出来ませんでした。
ジンジャーブレッドの男の子は歌を歌って逃げていきます。
「逃げるよ、逃げるよ、君たちと同じ早さで。捕まえられっこないよ。僕はジンジャーブレッドマン」
ジンジャーブレッドの男の子は牛の所まで逃げてきました。彼は牛に向かってこんな風に歌いかけました。
「僕はお爺さんお婆さんから逃げてきた。麦打ちをしていた人たちから逃げてきた。麦刈りをしていた人たちから逃げてきた。君からだって逃げてみせるよ」
これを聞くと、牛は追いかけ出しましたが、捕まえることが出来ません。
そしてすぐにジンジャーブレッドの男の子は豚の所まで逃げてきました。彼は豚に向かってこんな風に歌いかけました。
「僕はお爺さんお婆さんから逃げてきた。麦打ちをしていた人たちから逃げてきた。麦刈りをしていた人たちから逃げてきた。牛から逃げてきた。君からだって逃げてみせるよ」
これを聞くと、豚は走り始めましたが、捕まえることが出来ません。
ジンジャーブレッドの男の子は歌を歌って逃げていきます。
「逃げるよ、逃げるよ、君たちと同じ早さで。捕まえられっこないよ。僕はジンジャーブレッドマン」
そうして、ジンジャーブレッドの男の子は川まで逃げてきました。しかし、ジンジャーブレッドの男の子は体が濡れると困るので泳げず、渡りたくても渡れません。
すると、そこへ狐がやってきて、君を運んで川を渡らせてあげるよ、と言いました。
ジンジャーブレッドの男の子は狐の尻尾に飛び乗り、狐はそのまま川に入って泳ぎ出し始めました。
しかしすぐに水が深くなって来ると尻尾は水に漬かりそうです。
狐が、尻尾が濡れてきたから背中に上りなよ、と言ったので、ジンジャーブレッドの男の子はそうしました。
更に水が深くなり、背中も水に漬かりそうです。
狐が、背中が濡れてきたから鼻先に上りなよ、と言ったので、ジンジャーブレッドの男の子はそうしました。
ジンジャーブレッドの男の子が鼻先まで足を伸ばした途端、狐はジンジャーブレッドの男の子を跳ね上げると大きく口を開けてガブリと一口齧り付き、4分1食べてしまいました。
もう一口パクリとやると、半分食べてしまいました。もう一口パクリとやると4分の3食べてしまいました。
もう一口パクリとやったら、それがジンジャーブレッドマンの最後でした。