来歴
帝から勅命を受け、シシ神の首を狙う組織「唐傘連」のリーダー格。
物語構造上は悪役と呼べる存在だが、そう簡単に割り切れるものでもない。また初登場時のアシタカへの対応を見ればわかる通り、本人の性格は「全くの見ず知らずの他人を特に理由がなくとも助ける」どちらかと言えば明らかな善人である。
初登場は、故郷の集落を離れたアシタカがとある市場でトラブルに巻き込まれたシーン。
アシタカは買った米の代金を砂金で支払おうとしたのだが、店の主は砂金の価値がわからず「銭じゃなければ物は売れない」と言う。封鎖的な集落で育ったこともあって、世間知らずで交渉事を苦手としているアシタカが困っているところ、的確に砂金の価値を見抜き場を納めたのが彼との数奇な関係の始まりである。
その後は流れでアシタカと同行することになり、その晩にはアシタカの買った米に手持ちの味噌を使い粥を作るなど料理上手なところを見せる(このシーンの粥は非常にシンプルな料理なのにやたら美味そうに見えると評判)。
そして、アシタカからタタリ神による呪いとタタリ神に食い込んでいた礫について相談を受け、「シシ神の森近くのタタラ場に向かえば何かわかるかもしれない」とアドバイスを施している。
そして、翌朝、アシタカが夜も明けきらないうちに自分を起こさないよう旅立っていくのを狸寝入りしながら見送り、彼との出会いは終わる。
そのままフェードアウトしたかに思われたが、中盤デイダラボッチの行動パターンを探っていたところで再登場し、しばらく後唐傘連を引き連れエボシ御前と合流、タタラ場で会談する。そしてその場で彼の役割は「森を焼き払いシシ神の首を狩ること」であることが明かされる。つまり、シシ神に呪いを解いてもらうことを期待しているアシタカとは、立場上完全に敵対する存在となる。
その後はエボシ御前によるシシ神狩りに同行し、その首を刈り取り首桶に入れることに成功するも、首を失い暴走したデイダラボッチにより部下である唐傘連や石火矢衆、地走りの大半を失う。
何とか無事だった唐傘連2人と石火矢衆1人とともに首桶を乗せた輿を担ぎ、必死にシシ神の森を抜けタタラ場の開発で荒廃した山中を駆けずり回るも、夜明けを待たずして遂にアシタカとサンに見つかる。それでもなお2人を廃し突破せんと生き残った部下共々抵抗するも、首桶の運搬を任せた唐傘連と石火矢衆が行く手をデイダラボッチの手に囲まれ、錯乱の末肝心の首桶を輿諸共投げ捨て逃げ出してしまう。それでもなお意地を見せ、転げ落ちる首桶を受け止めることには成功したが、そのまま転落し、岩の上で止まり、周囲をデイダラボッチのドロドロに追いつめられてもなお日の出に期待し抵抗するも、最後はとうとう観念してアシタカにシシ神の首を渡し、彼が首を返すところを見届ける。
そしてラストシーンではシシ神の力で芽吹いた森を見て、名台詞「いやあ、まいった、まいった。バカには勝てん」と笑いながら言い放ち、最後の最後まで飄々としたその態度を崩さなかった。
人物
一件チビで剽軽な顔立ちをした小太りの老人だが、作中に登場する人間キャラの中では呪いの力でブーストしているアシタカと対等に渡り合うなどほぼ最強クラスの身体能力を誇る。
特に脚力とバランス感覚はすさまじく、高歯の下駄と言う大変動きにくそうな履物で未整備の岩場を軽々駆け回り、あまつさえ馬のような生き物であるヤックルと並走するほど。前述のように一晩中デイダラボッチの執拗な追跡を回避するなどスタミナと隠密能力にも長けている。
また彼自身は使用しなかったが、唐傘連の面々が抱えている唐傘は実は暗器であり、毒矢を仕込んだ吹矢になっている。
度々腹黒い側面が垣間見え、協力者であるエボシ御前のことも「単なる捨て駒」程度にしか見ていない節がある(もっとも、エボシの方もジコ坊と唐傘連は心底信用していない面があり、この辺りは騙し合いなのだろう)。
目的のためなら手段は選ばず、親しく飯を食った仲であるアシタカ相手に攻撃するのも辞さない。
しかし、彼本人は帝の命令に忠実に従っているだけであり、要は完全な中間管理職である。
作中の諸トラブルの根源となった人物なので、物語上は間違いなく「悪」である。ただ、その根元を探ると結局は都の帝にたどり着くし、ジコ坊本人にそこまでの権力があったわけではない。人によってはアシタカを含蓄ある言葉で導く粥のシーンや、首桶を抱えてゴロゴロしているコミカルなシーンの方が印象に残ることもあるだろう。見る人の着目点によってその印象が大きく変わるキャラの一人かもしれない。