概要
香炉とは、固体状の香料を加熱し、香気成分を発散させる目的で用いる器である。
日本の仏具において灯明(燭台)・花瓶(花立て)とともに三具足(五具足)のひとつとされる。
構造と材質
上面または側面に大きく開口した筒、椀、箱、皿状の容器。床や机との接触を避ける目的で、ほとんどのものが脚を備えている。穴の空いた蓋(火屋)を備えたものも存在するが、香道で用いる聞香炉(もんこうろ)は、蓋を持たない。
火気を使用する関係上、材質には不燃性、耐熱性が求められる。そのため、陶磁器や金属、石材などで作られていることが多い。しかしながら、仏前(または葬儀)での焼香には、漆器(またはその模造品としてプラスチック)の外枠に焼香用の香と香炉を備えた長方形の角香炉(かくこうろ)が用いられることもある。また、持ち運べるように柄(え)のついた柄香炉(えこうろ)もある。
香炉を使用する目的
熱源を隔離する
薫香に用いる火気、特に十分に熾きた炭は高熱を発しており、間違っても人体や衣類・家具などの可燃物に接触させてはならない。容器越しでも危険な場合すらある。逆に、香料自体に点けた火は小さく、固体に接触させただけで熱を奪われて消えてしまう場合がある。このため、炭火を灰の中に埋める、香料の着火した部分を中空に向けて固定する(線香)などの方法を用いて、熱源と外部の固体を隔離している。
一方、香料自体にも熱に弱いものが多い。薫香の多くは樹脂や精油成分を豊富に含み、乾燥しているため、過度に加熱すると煙ばかりが大量に出る、香気が破壊される、煙でなく炎が上がるといった弊害が出るため、ある程度熱源から距離をとる必要がある。 もっとも、どの程度の加熱を許容するかは文化にも依存し、アラブ文化圏ではむき出しの炭火に直接香料を置き、熱で弾けるのに任せるのに対して、日本の香道では発煙すら嫌い、灰や雲母の板(銀葉)を用いて、炭火から厳重に遠ざけている。
散りやすい材料や不要物を収める
炭火を用いる場合、香炉自体に直接触れさせずに収めておくために灰を使用することが多い。炭や香料が燃焼した結果としても灰が、そして燃え残りが生じる。香料が粉末や細片である場合、焚く際に一定の形に留めておくことが必要になる場合もある(香時計など)。香炉とは、これらを収める容器であるとも言える。
香炭(こうたん)=香炉で使用し、おもに抹香で使用される小さな炭。
香炉自体を鑑賞に供する
香炉は、以上に挙げたような用に足りていれば、形態や色彩、寸法などは比較的自由である。ただ、香を焚くという行為自体が趣味性、または宗教性の高いものであり、楽しみに用いる場合は個人の嗜好を反映して、芸事や宗教儀式では一種の舞台装置としての必要から、美術的価値の高い香炉が多数作られている。