概要
スパイダーマン・ノワールとは、『スパイダーマン』のキャラクター。
パラレルワールドであるアース-90214の1933年に活躍するスパイダーマン。
来歴
多くのピーター・パーカーと同様にベンおじさんとメイおばさんに育てられたが、メインユニバースのピーターと違い、彼はベンおじさんの死の現場に直接立ち会ってはいない。
第一次世界大戦のエースパイロットであったベンは、一方で戦争が英雄的行為ではないことを思い知り、大恐慌に陥った国を正すためにメイとともに社会活動へと身を投じたが、そのさなかに悲惨な死を遂げてしまう。
それでも挫けず政府や企業への抗議を続けるメイおばさんを手伝っていたピーターは、そこで新聞記者のユーリックから叔父の死の真相を知らされることになる。
それは街の有力者オズボーンが、自身の違法行為を批判したベンを疎んで手下のエンフォーサーズ四人組にベンをリンチさせ、見せしめのため手勢のフリークスであるヴァルチャーに食い殺させたという壮絶なものだった。
ピーターはオズボーンを追い詰める証拠を求めて彼の倉庫に忍び込んだところ、エンフォーザ―の一人がアマゾン奥地から運び込んだ蜘蛛神の像を破壊してしまう場に遭遇する。途端、中から大量の毒蜘蛛が溢れ出してエンフォーサーズの一人を食い殺し、さらにその一匹がピーターにも噛み付いてしまう。
蜘蛛神のトーテムから与えられた能力をどう使うか悩むピーターだったが、オズボーンを追っていたはずのユーリックが薬物中毒に陥っており金目当ての恐喝材料を探していたと知って失望する一方、オズボーンによってユーリックが殺害されたことで、正気だった頃のユーリックの遺志を継いでオズボーンを止めることを決意する。
そうしてピーターは蜘蛛神の能力である壁や天井への吸着能力、手首からの糸の生成、超人的身体能力、そして恐るべき第六感を持ったザ・スパイダーマンとなり、街を支配するギャングどもとの戦いに身を投じるるのだった。
装備と能力
コスチュームは他のスパイダーマンとは異なる独特のものだが、これは第一次世界大戦のエースパイロットであったベンおじさんが身につけていた航空服を改造したものである。
手にしたリボルバーもベンおじさんの愛銃であり、ザ・スパイダーマンとして戦うピーターは躊躇なくこれを発砲し、場合によっては相手を殺害することも厭わない、本来のスパイダーマンに比べるとより冷酷になっている。しかしその一方、感情に任せて人を殺さないヒーローになるよう、努力を重ねている面も有している。
特徴としては第六感(本来の世界におけるスパイダーセンス)が発動する際、ピーターの前には赤い光の蜘蛛のシンボルがヴィジョンとして浮かび上がるというものがある。また彼の蜘蛛糸は黒い粘液状のもので、ウェブシューターなど関係なく手首から発生する。
その他の能力も概ねメインユニバースのピーターと変わらないが、パワーの強さという意味では若干劣っているようであり、『スパイダーバース』に参加した時には苦戦が目立った。
ただし彼は「大いなる力には大いなる責任が伴う」という言葉を背負ってはいない。
ザ・スパイダーマンとして彼が背負うベンおじさんから受け継いだ信念は「強大な力があるのなら、それに立ち向かうのは人々の責任だ」というものである。
関係者
ノワールユニバースの特徴として暗く陰鬱な空気の中で犯罪と戦うこともあって、敵対するヴィランもフリークスであるザ・ゴブリン、人喰い男ザ・ヴァルチャー、顔面奇形のザ・カメレオン、猛獣使いのザ・クレイブン、ナチスの医者で身体障害を持つ人種差別的優生学者のDr.オクトパス、秘境の奥地で催眠術を身につけた奇術師ザ・ミステリオなど、やはりノワールユニバース独特のものばかり。
クラブを経営する美女のフェリシアとは複雑な関係ながら、恋人として互いに思慕の念を抱いているが、彼女の昔の恋人であるユーリックを守れず死なせてしまったこと、そしてザ・スパイダーマンの活動に協力させたことで彼女の顔に無残な傷跡を刻ませてしまったことから、後悔の念に苛まれている。
またメイとは普段は仲が良いものの、彼女は夫を犯罪で亡くしたことから拳銃で悪に立ち向かい殺害も辞さない自警団員ザ・スパイダーマンに対しては批判的で、自分を襲ったヴァルチャーをスパイダーマンが射殺した際には「スパイダーマンとしての力があれば拳銃がなくとも犯罪を阻止できるはずだ」と彼に人殺しをしないヒーローになるよう訴えている。
さらにMJとは彼女がスペイン内戦へ義勇軍として参加して以降は壁を感じるようになってしまうなど、私生活でも過酷な境遇にある。
活躍
『スパイダーマン・ノワール』で1933年に健常者への嫉妬から犯罪に走ったザ・ゴブリン率いるフリークス集団と戦い、濡れ衣を着せられながらも勝利することで叔父の仇を討ったピーターは、ザ・スパイダーマンとしての活動を継続しながらデイリービューグルで記者として働くようになる。
その続編『アイ・ウィズアウト・ア・フェイス』では尊敬する上司ロビー・ロバートソンがアフリカ系移民の人身売買を調査するうちに誘拐・廃人となる事件が発生、犯罪結社の首領クライムマスターと手を組んで有色人種のエリート層へロボトミー手術を施していたナチスの科学者Dr.オクトパスと激戦を繰り広げる。
アニメ『アルティメット・スパイダーマン ウェブ・ウォーリアーズ』では、「異次元のスパイダーマン」でモノクロ世界のスパイダーマンとして登場。スパイダーマンの血を求めて異次元へ跳んだグリーンゴブリンを止めるため、それを追いかけてきたアルティメット・スパイダーマンと共闘する。その後は第4シーズンでも再び共闘し、シージ・ペルリスの力を開放したことで世界に色を取り戻した。
ゲーム『Spider-Man: Shattered Dimensions』にも登場し、こちらでも平行世界を飛び回って他のスパイダーマンと共に「秩序と混沌のタブレット」の力を得たヴィランたちと対決することになる。性能面では他のスパイダーマンと比較して、ステルス能力と不意打ちによるノックダウン能力が優れている。
この時の声優は94年版カートゥーンのピーター・パーカーを演じたクリストファー・ダニエル・バーンズ。
そして1933年から6年間活動を継続し、アル・カポネを筆頭とするギャングたちを壊滅させ、禁酒法時代が終わり第二次世界大戦が勃発する1939年のニューヨーク万博を舞台にスパイダーマンの血を付け狙うザ・ミステリオと対決。勝利した直後にインヘリターの襲撃を受けたことで『スパイダーバース』の事件に巻き込まれる。
『スパイダーバース』中ではその佇まいから「タートルネック」「(ハンフリー)ボガート」などのニックネームで呼ばれ、さすがに禁酒法時代を生き抜いただけあって他のスパイダーマンやピーターを上回るタフな態度には一目置かれているものの、生来の善性を見抜かれたせいかスーペリア・スパイダーマンの選ぶ暗殺部隊の候補からは外されてしまう。
ザ・スパイダーマンはシックスアーム・スパイダーマンと共に援軍を求めてポータルを開くが、その世界が「蜘蛛に噛まれたピーター・パーカーが昏睡状態のままの世界」だと知って勧誘を断念。逆にシックスアーム・スパイダーマンと協力してマンスパイダー状態となって暴れだしたピーターを落ち着かせることでピーターを治療し、彼をインヘリターの標的から外してパーカー家にハッピーエンドをもたらすことに成功する。
その後は他平行世界に取り残されたスパイダーウーマンを救おうとするシルクに協力、インヘリターズを迎え撃ってシルクを逃すが重傷を負ってしまい、元の世界へと戻されフェリシアのクラブに匿われたことで、激戦より生還した。