演者
・アンソニー・パーキンス:「サイコ」~「サイコ4」
・ヴォンス・ヴォーン:「サイコ(1998年版)」
・フレディ・ハイモア:「ベイツ・モーテル」
人物
アメリカ合衆国アリゾナ州の住民である白人男性。髪の色は黒で、短髪。
整った顔立ちで長身かつ痩身のハンサムな青年。
一方の1998年版では逞しい体格の大男となっている。
旧道沿いにあるベイツ・モーテルの支配人。
重度のマザーコンプレックスだが、支配的で暴言をしばしば吐く母親(ノーマ・ルイーズ・ベイツ)に対して反抗することもある。
趣味は鳥の剥製づくり。
爽やかな雰囲気であり、物腰も基本的に穏やかだが、母親について悪く言われると感情的になる。
親切で誠実な性格だが、惚れた女性客を1号室に泊め、隣の管理人室にある写真で隠したのぞき穴からのぞき行為をするなどの危うさをもつ。
また、女性慣れしていない様子も見てとれ、相手が食事中に剥製の話をするなど配慮に欠ける部分がある。
しかし、そんな不器用なところが魅力的に見えるのか、女性受けはむしろ良く、結構モテる。
客が少ないゆえに他者との交流は少なく、ノーマンを知る町の住人からは「世捨て人」と呼ばれる。
実際に時間をもて余しているらしく、趣味の剥製製作の腕前はプロ並みになっている。
父親サムの遺産があるため生活には困っていない。
モーテルの裏にある古めかしい館「ベイツ邸」で心の病を患っている母親と二人きりで暮らしている。
実態
実は解離性同一性障害を患っている二重人格者。
5歳の時に父サムを亡くし、家庭内で独裁者のように振る舞う暴力的かつヒステリックな母ノーマと二人きりで長年生活したことが原因でマザーコンプレックスとなり、精神に異常をきたしはじめる。
やがてノーマに愛人ができると、嫉妬し、捨てられると思ったノーマンは映画第一作の10年前(1950年)に衝動的に母親とその愛人を毒殺してしまう。
しかし、異常な教育が原因で母親を洗脳や強迫観念に近い形で深く愛していたノーマンは間もなく自らの行いを後悔する。
その後、警察によりノーマとその愛人の死はノーマによる無理心中と処理され、ノーマは埋葬されるが、母親の死を認められないノーマンは墓場から死体を盗み出すと、保存に細心の注意を払い、防腐処理を施し、服を着せ、髪を整えてノーマの寝室に安置した。
しかし、それでも満足できなかったノーマンは自らノーマのように振る舞うことで「母親は生きている」という幻想を抱き現実逃避を図った。
そして、やがてノーマンは二重人格者(解離性同一性障害)となった。
普段の人格はノーマンとノーマの両者になりきる一人二役の状態であり、時には会話し、罵り合うことさえあったが、ノーマンにはその自覚はなく、ノーマが生きているという幻想を完全に信じ込んでいた。
もうひとつの人格は「ノーマのみの状態になる」というものであり、「ノーマが生きている」という幻想が何らかの要因で脅かされた時、もしくはノーマンの部分が誰かに惚れた時に発現する。
ノーマンの部分が誰かに惚れても「ノーマ」化してしまうのは、母親に対する執着や嫉妬がノーマンの中の「ノーマ」にも反映された結果である。
このノーマのみの状態の時の記憶は、普段の人格に戻ると消えてしまう。
一方で本来の人格であるノーマンのみの状態には戻らなくなってしまった。
殺人
殺人に至るまでのプロセスが他のスラッシャーとくらべて複雑。
ジェイソン・ボーヒーズやフレディ・クルーガーのように復讐や快楽のために殺人を行うわけではない。
ノーマンの部分が誰かに惚れると、ノーマの部分が嫉妬し、ノーマのみの状態になる。
そして、完全にもう一人のノーマとなったノーマンは母親が着ていた紺のドレスを纏い、カツラを被る女装をすると、牛刀を手に息子の心を奪った憎き女を襲うようになる。
憎しみを込めて何度も刺すため、遺体は凄惨な姿となる。
また、自分の身の回りを探ったり、母親に無理やり会おうとするなどして「母親は生きているという幻想」を脅かす者が現れた際もノーマのみの人格となり、性別を問わずにその人物を殺そうとする。
やがて普段の人格に戻ると、ノーマンの部分は自分が行った殺人を母親の仕業として認識し、孝行息子として証拠隠滅を図る。
証拠隠滅には近くにある沼を利用することが多い。
ノーマン本来の人格は基本的に親切・誠実・穏やかな上に優しいため、結構モテる。
しかしホラー映画の死亡フラグである「男女の情事」を自ら乱立し、自ら殺すことも少なくないため、たちが悪い。
身体能力はあまり高くないが、母親を侮辱された際は体格的に勝る相手を力ずくで押さえつける怪力を見せる。
また、ノーマのみの人格となっている時は、裏社会の殺し屋さえ返り討ちにする。
末路
なんと、映画シリーズでは施設で更正→殺人事件を起こして逮捕という展開を繰り返し、最終的に社会復帰し、とある女性と結婚する。
そして、忌まわしきベイツ邸を燃やす。
一方のドラマ「ベイツ・モーテル」では、ノーマンの人格のままで殺人を犯したことを機に幻想が崩壊し、母親が死んでしまった現実を突き付けられて正気を失い、種違いの兄ディランに自殺目的で涙を浮かべて襲いかかり射殺される。
模倣犯
映画第二作では「ノーマンの母親」が概念化しており、複数の「母親」が登場する。
ライラ・リーミス
旧姓クレーン。第一作の犠牲者マリオンの姉(もしくは妹)で、映画後半のヒロイン。しかし第二作では黒幕。
第一作から22年後、ノーマンが社会復帰したことに納得できず、娘メアリーと共謀してベイツ邸及びベイツ・モーテルで連続殺人事件を引き起こしたり、「ノーマンの母親」としてノーマンに電話をかける等してノーマンを精神的にも物理的にも追い詰めていく。
かつてのノーマンと同様にカツラと紺のドレスを纏い、牛刀を手に二人の罪のない人間を殺し、沼に沈めているため、もはやノーマンとは目くそ鼻くそのサイコキラーと成り果てていた。
最後はノーマンの本当の母親に殺される自業自得な末路を迎える。
遺体は地下の石炭に隠された。
メアリー・サミュエルズ
本当の姓はリーミスで、ライラの娘である美女。
ノーマンが社会復帰後に勤め始めたレストランの同僚。
彼氏に捨てられ居場所がないとノーマンを頼るが、影でライラと共謀しており、「ノーマンの母親」の格好をして見せたり、「ノーマンの母親」として電話をかけたり、片付けられていたノーマの部屋を元通りにしたりと数々の裏工作でノーマンを精神的に追い詰めた。
しかし、ノーマンの優しく親切で誠実な人柄を知り、同情する。そして、父親並みに年上の怯えて震えるノーマンを我が子のように抱き締めるなど、母性本能からか彼に入れ込んでゆく。
やがて完全に正気を失ってしまったノーマンを説得して警察から逃がすため、「ノーマンの母親」になりきってノーマンに命令するが、潜んでいた保安官を誤って刺殺してしまう。
その様子を見てしまったノーマンは「母親」を守るため、メアリーを地下に閉じ込めようとする。
変装をやめても自分を母親と認識し迫るノーマンに恐怖し牛刀でノーマンを傷つけ、更に地下でライラの遺体を発見したことで逆上し、ノーマンを殺そうとしたところ、突入してきた警官に射殺された。
エマ・スプール
夫人を名乗っているが実は未婚者。
ノーマンが勤め始めたレストランの同僚。そしてノーマンの実母。
精神に異常があったため妹ノーマにノーマンを預けていた。
ノーマンに対して過剰に執着しており、あちこちにノーマンに宛てたメモを張り、度々ノーマンに電話を掛けていたが、これがノーマンの精神崩壊に拍車をかけた。
リーミス母子の計画を知り、二人を殺そうと目論む。
また、ベイツ邸にしばしば出入りし、メアリーを監視していた。
ライラがベイツ邸に侵入したことを知ると、かつてのノーマンと同様にノーマの格好をして牛刀を手にライラを殺害する。そして遺体を石炭に埋めた後、ノーマンに電話でメアリーを殺すよう命じた(しかし、メアリーに好意を抱いていたノーマンはそれを拒否した)。
メアリー死亡後、ベイツ邸を訪れ真相を得意気に語るが、その時点でもはや完全に正気を失っていたノーマンに茶に毒を盛られた上にスコップで撲殺され、かつてのノーマと同様にノーマの部屋の椅子に座らせられた。これを機にノーマンは二重人格のサイコキラーに逆戻りしてしまった。
架空のスラッシャーとして
母親と息子の二重人格・凶器がナイフ・殺人シーンで特定のBGMが流れる等の特徴は、パメラ・ボーヒーズと共通している。
また、ジェイソン・ボーヒーズ同様にママっ子である。
更に、悪魔のいけにえのレザーフェイスと同様に母親の死体を家に保管し、古めかしい館に住むヒルビリー(田舎者)である。
マイケル・マイヤーズとは牛刀を凶器とし、神出鬼没な点が共通している。
他にも影響を与えたスラッシャーキャラクターは多い。
なお、ノーマン自身は、実在の殺人犯エド・ゲインが原型とされている。
とはいえ、エド・ゲインとの共通点はマザーコンプレックスな点と他者との交流が少ないことぐらいである。