概要
映画ドラえもんの37作品目にして、二期の十二作品目。2017年に公開。
興行収入は前作の新・のび太の日本誕生を超える44億円超え。
あらすじ
10万年前の地球・南極大陸。
そこでは、謎の少女カーラと、謎の科学者ヒャッコイ博士の二人が、未知の古代文明の遺跡を調査していた。
そんな中、石像に突き刺さったとあるリングを見つけたカーラだったが、その途端に巨大なタコ型の石像であるオクトゴンに襲われてしまい、そのリングを遺跡の湖の中に落としてしまう。
それから10万年後の地球・東京。
夏休みの或る日、夏の暑さに耐えかねていたドラえもんとのび太の二人。
そんな二人の元に、ドラミから未来電話でドラえもんに「今週の運勢最悪。氷難の相が出ているから気を付けて」という、電話が入る。
しかし、その電話がきっかけでドラえもんとのび太は、南極から北上している巨大氷山の存在を思い出し、避暑を兼ねて遊びに行くことにする。
そうして、巨大な氷の上で遊んでいたドラえもんたちは、遊んでいる最中に巨大氷山の中から不思議な腕輪を見つける。
氷の年代を測定した結果、人類の文明が誕生するはるか前。10万年前に作り出されたというその腕輪から、古代文明のアトランティスの存在を証明する可能性がある。
大冒険の気配を感じたのび太たちは、腕輪の落とし主を探して南極へ行き、そこで地下に存在する巨大な古代文明遺跡を発見する。
しかし、そこには謎の生物パオパオや、ドラえもんの姿をした石像など、謎は深まるばかり。
そこで直接その謎を解くために、ドラえもんたちは10万年前の南極へ向かう。
氷の奥深くに隠された秘密とは…?
登場人物
カーラ
CV:釘宮理恵
環境改造用の巨大人型装置であるブリザーガの暴発によって氷土と化した故郷の星を救うヒントを探すため、10万年前の地球に学術調査に来た少女。ヒャッコイ博士の長期的な探索に同行してきたからか、非常に身のこなしが良く戦闘力も高い。
ヒャッコイ博士
CV:浪川大輔
古代文明研究家。カーラと共に地球を訪れた。ユーモアや知識欲も旺盛で、怪我をしていても探索を続けようとする。
モフスケ
古代遺跡で冬眠していた青いパオパオ。耳が欠けているのが特徴。初対面であるはずののび太やドラえもんにとても懐いているようだが....?
キーワード
スノーボールアース
別名を全球凍結。かつて地球上で起こった大規模な自然現象。
地表が氷で覆われた時代の地球の事を差すが、氷河期とよく混同される。
実際には、氷河期は赤道を中心にある程度暖かい地域は氷は存在せず、南極圏や北極圏などのごく一部の地域が氷で覆われていた時代であり、水が液体として存在している時代である。
対して、スノーボールアースとは、文字通りに地球全体が氷で覆い尽くされた状況の事であり、液体状態での水は存在せず、この状態から地表の氷が溶けだすまでには、数千年単位の時間がかかると言われている。
ヒョーガヒョーガ星
地球から10万光年の位置に存在する惑星。ピリミーとの文化的類似が見られる。ヒョーガヒョーガ星人は地球人と同じ姿をしているが、独自の言語を持つため日本語でのコミュニケーションは不可能。
古代ヒョーガヒョーガ文明期には「石像」と呼ばれる機械や惑星間航行が可能な宇宙船を作れる程の極めて高い科学力を有していたが、何らかの理由で文明は衰退し、ヒョーガヒョーガ星や地球の南極など、宇宙の各所にその文明の名残が残されている。その子孫であるカーラの世代では古代遺跡を解読することでその技術を復旧しているが、待機状態にあったブリザーガの暴走によって、スノーボールアースとなっている。
ヒョーガヒョーガ星や地球に残された遺産を見る限り、古代ヒョーガヒョーガ星人はあまり善良な部類ではなかった可能性が高い。
パオパオ
宇宙空間でも生存可能な絶対生物。極限環境では、冬眠状態になって数百万年の生存が可能。
ヒョーガヒョーガ星、コーヤコーヤ星に加え、地球ではピリミーの文化圏において飼育されている。
石像
古代ヒョーガヒョーガ人が作り出した機械の総称。材質が石で構成されており、それでいて生物同然な非常に柔軟な動きが可能。ドラえもんをして理解できないと言わしめるほどの高い技術力で生み出されている。
ブリザーガ
CV:平原綾香
氷で作られた巨大な石像。剣と盾を持ち、口部から強力な冷凍光線を放ち、更には飛行能力までも有しており、一体だけでも惑星を氷漬けに出来るほどの能力を持つ。
環境改造用の装置であり、「惑星が凍結すると、反動で生命の爆発的進化が起こる現象(カンブリア爆発)」を作り出すことを目的としている。
カーラ達は環境改造用の機械と説明しているが、どう見ても用途や能力的に侵略兵器の類であり、更には他の惑星にもこれが残っている可能性が高い。
評価
本作は原作版にあるエピソード『大氷原の小さな家』を原案としているほか、怪奇小説『狂気の山脈にて』との類似が散見される。
そのため「よいこのためのラブクラフト入門」「ハッピーエンド版狂気山脈」などと評され、南極の地下に眠る古代文明がマヤ・インカ文明をモチーフにしたもの、巨大なタコ型の石像が襲い掛かって来るなど、クトゥルフ神話の影響を感じさせる。
その為か、映画公開中は上映中に泣き出す子供もいたとか。
また、十万年前の出来事と十万年後の出来事をクロスオーバーさせ、それらの出来事が繋がっているなど、かなり伏線に気を使ったタイムトラベルものであり、SF作品としても完成度が高く、この辺りの様子はT・Pぼんや、のび太の魔界大冒険などの、往年の藤子・F・不二雄作品を彷彿とさせる。