ことばは沈黙に
光は闇に
生は死の中にこそあるものなれ
飛翔せるタカの
虚空にこそ輝ける如くに
ゲド戦記は、アメリカの作家アーシュラ・K・ル=グウィンの書いたファンタジー小説。
日本ではスタジオジブリ制作で映画化がされた。
概要
この世で最初の言葉を話したセゴイによって海中から持ち上げられ創られたと伝えられる、太古の言葉が魔力を発揮する多島世界(アーキペラゴ)アースシーを舞台とした魔法使いゲドの物語。
アースシーでは森羅万象に「真(まこと)の名前」が存在し、それを知る者はそれを従わせることができる。
人は己の真の名をみだりに知られぬように、通り名で呼び合う。
なお、日本語版のシリーズ名は「ゲド戦記」となっているが、ゲドが主人公と呼べるのは実質的に第1巻のみである。
また、戦記とあるが戦いの描写はあまりなく、自己の許容や葛藤、心理的成長といった、内面的なテーマが主題として扱われている。実際に、原題は「Earthsea」(アースシー)であり、戦いのイメージが強調されたものではない。
外見の特徴
肌の黒い人間がマジョリティ、白い人間はカルガド圏出身のマイノリティという特徴がある。
原作者は物語で肌の色が濃いのは邪悪さと結びつけられる因習に批判的なため、この肌の表現にこだわりを持ち、表紙の人物のデザインについて出版社と争うこともあり、ドラマ版製作者と対立したこともある。
あらすじ
Ⅰ 影との戦い A Wizard of Earthsea
ゲド(ハイタカ)の少年期から青年期の物語。
少年ゲドは、自分に不思議な力がそなわっているのを知り、ローク学院で真の魔法を学ぶ事になる。
しかし、血気にはやる高慢なゲドは、学院で禁止されていた死の影を呼びだしてしまう。
常に影から狙われる事になったゲドは、ロークの島を後にする。
Ⅱ こわれた腕輪 THE TOMBS OF ATUAN
ゲドが青年時代の話。暗黒の地下で迷宮を守る巫女テナー(アルハ)の物語。
幼少のときから、名前を奪われ、女だけの閉鎖的な墓所で育てられてきた娘アルハ。
そこへ、平和をもたらす「エレス・アクベの腕輪」を取り戻しにきた、魔法使いゲドが現れる。
初めて触れる、外の世界から来た男性に、アルハの眠っていた自己が動き出す。
Ⅲ さいはての島へ The Farthest Shore
ゲドが壮年期の話。魔法の力が弱まり、異変が各地で頻発する。
世界の均衡が崩れるなか、エンラッドの王子アレンは、ローク島の大賢人ゲドを訪ねる。
災いの源を断つためゲドは、アレンをともなって旅に出ることを決意する。
Ⅳ 帰還 Tehanu
ゲドが壮年期の話。先の旅で力を使い果たしたゲドは、故郷の島に帰ってきた。
そこで、未亡人となり農園で平穏に暮らすテナーと、再会する。
テナーと、親に焼き殺されかけた所を危うく救われた少女テハヌー]](テルー)との3人での暮らし。
魔力を失い、大賢人の地位を降りたゲドは、一人の人間としての生活を歩みだす。
Ⅴ ドラゴンフライ アースシー5つの物語
短編5作と、著者によるアースシーの解説が載った本。
「カワウソ」
ロークの学院開設の功労者にして、初代守りの長メドラ(カワウソ/アジサシ)の一生を通じて、学院の黎明期を描く。
「ダークローズとダイヤモンド」
エシーリ(ダイヤモンド)とローズ(真の名は明かされない)の恋物語。
「地の骨」
アイハル(ダンマリ/オジオン)がヘレス(ダルス)に師事した時と、二人がゴントの大地震を鎮めた時の顛末。
「湿原で」
ロークから逃げ出した魔法使いイリオス(オタク)と、彼を匿った未亡人エマー(メグミ)、そしてイリオスを追ってきた大賢人ゲドの物語。
「ドラゴンフライ」(旧題:トンボ)
『アースシーの風』の重要人物オーム・アイリアン(ドラゴンフライ)の幼年期と青春時代の物語。
アースシー解説
アースシーの世界観について、文化や歴史、伝説などの、作者による解説。
VI アースシーの風 THE OTHER WIND
ゲド壮年期の話。ふたたび竜が暴れだし,緊張が高まるアースシー。
かつてゲドと共に旅をし、アースシーの王となったアレン(レバンネン)や、ゲドの妻となったテナー、その二人の養女となったテハヌー(テルー)を核に、竜と人間、力と魔法、生と死を巡って世界が動き出していく。
主な登場人物
ゲド
通り名は、ハイタカ。ゴント島出身。ローク魔法学院卒。学院開学以来の秀才と評された。
著名な魔法使いで、竜と対等に話せる竜王でもある。
ローク学院を治めた最後の大賢人でもあり、ゲドが退いた後、大賢人は選出されないままだった。
黒髪、黒い肌。頬に4本の平行な鉤爪の傷がある。
アレンと共に最果ての地に赴き世界の均衡を取り戻すが、魔法の力を失う。
テナー
通り名は、アルハ、ゴハ。黒髪に白い肌のカルカド人。
カルガド帝国の聖地・アチュアン墓所の巫女をしていた女性。
ゲドの活躍により、アルハ(カルガド語で「喰らわれし者」)からテナーに戻る。
後にオジオンの庇護を受け、テルーを引き取る。
「腕環のテナー」として、世界へ真の名を明らかにしている数少ない存在。
レバンネン
通り名は、アレン。明るい髪のカルカド人。
エンラッドの王子。ゲドと共に最果ての地に赴き、生きて死後の世界から帰り、アースシーの王座に就く。
テハヌー
通り名は、テルー。
両親から虐待され、火傷で死に掛けていたところを助けられた少女。
顔の左半分がケロイド化し、手が溶けて鉤爪のようになっている。
内気で怖がり。竜の化身でカレシンの娘。
アイハル
通り名は、沈黙のオジオン。ゲドの故郷である島、ゴントの魔法使い。
山羊飼いだったハイタカに魔法使いの才能を見出し、彼を魔法学院があるローク島に送り出す。
映画(アニメ)版について
監督・脚本は宮崎吾朗。
キャラクターイメージは宮崎駿の絵物語『シュナの旅』が元となっている。
物語も『シュナの旅』の影響が強いため、原作とは異なる点が多い。
主な登場人物
アレン(CV:岡田准一)
エンラッドの王子。真面目すぎる性格のために本来は心の“光”だった彼の分身が“影”となって去ってしまう。心の均衡を失い、衝動的に父王を殺害、国を捨てて失踪。逃走中にハイタカに命を救われ、ハイタカと共に世界に異変を起こしている災いの根源を探す旅に同行する。
テルー(CV:手嶌葵)
顔に火傷の痕がある少女。作物や羊を育てて暮らしているが、特に自分の命を大切にしない人間には容易に心を開かず、両親に虐待された末に捨てられた辛い過去を持つ。自暴自棄になるアレンを嫌っていたが、彼もまた自分のように心に傷を負っていると知ると段々歩み寄るようになっていった。
ハイタカ(CV:菅原文太)
アースシーの大賢人。世界の均衡が崩れつつある事を察知し、アレンと共に災いの源を探る旅に出る。