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カルダン駆動の編集履歴

2019-02-23 00:49:11 バージョン

カルダン駆動

かるだんくどう

カルダン駆動とは、鉄道車両における駆動装置の形態である。

概要

カルダン駆動方式とは、主電動機を台車枠あるいは車体、つまりバネ上に装荷し、継手を介して台車の歯車装置に接続する方式のこと。

構造は単純だが、バネ下重量が大きくなりがちで車両の高速化に向かない吊り掛け駆動方式の欠点を解消するべく登場した。継手が車軸からの衝撃や変位を吸収するため、電動機にかかる衝撃を考慮しなくても良くなり、結果として動力系の軽量化・さらなる大出力化を図ることができる。

呼称について

「カルダン」とは自在継手、すなわちカルダンジョイントを指す。電動機の装荷の仕方を少し工夫しただけの吊り掛け駆動に対し、高性能で複雑な構造の継手を用いることから対比として「カルダン駆動」の呼称が広まったと思われる。

中空軸平行カルダン駆動・中実軸TD平行カルダン駆動は、バネ上に主電動機を装荷し、継手を介して歯車装置と接続する点では同様だが、継手にはたわみ板が用いられ、カルダンジョイントとは構造・性質共に大きく異なるため、実は純粋なカルダン駆動方式として分類することはできない。しかし、登場した頃は既に高性能な駆動装置の形態=カルダン駆動という認識が広まっていた為か、これらも一貫してカルダン駆動方式の一種として扱われ、現在に至る。

また、歯車継手を用いるWN駆動方式も、バネ上に主電動機を装荷し、高性能な継手を用いることと、吊り掛け駆動に代わる駆動方式として考案されたという点では同一であるため、場合によってはカルダン駆動として扱われることがある。ただ、たわみ板継手の存在もあってか、こちらはより明確な区別をされる傾向にあり、「WNカルダン駆動」といった呼称をされることは非常に少ない。


形態

直角カルダン駆動方式

台車枠に、車軸と直角になるように主電動機が装架され、継手を介して小歯車と接続される方式。小歯車には傘歯車が用いられ、これが車軸に対する直角の元となる。継手はカルダンジョイント+プロペラシャフトが主流だが、WN継手やTD継手を用いることもある。

電動機のスペースを大きく取ることができ、容積に比して大出力化が容易だが、駆動装置全体が大きく、重量も大きいのが欠点。

日本においては、多くの鉄道事業者が初期のカルダン駆動車に採用したが、前述したデメリットの都合から、平行カルダンやWN駆動の採用が進み、近年まで相模鉄道が採用していた他は、床下スペースに制約のある超低床車で主に採用されている。

力行・減速時、全速度域にかけて低い唸り音がみられる。


また、主電動機を台車枠ではなく車体に装架した車体装架カルダン駆動方式も、広義の直角カルダンに含まれる。一例としては、複雑な車体傾斜機構を台車に備える、イタリアのペンドリーノがある。


中空軸平行カルダン駆動方式

車軸と平行に主電動機が装架され、たわみ板とねじり軸を介して小歯車に接続する方式。たわみ板は特殊鋼でできており、板状の部品が変位を許容し、ねじ留めされた部分が動力を伝える。

平行装架は電動機の前後を台車枠に挟まれるので、スペースの制約が厳しく、特に狭軌の鉄道においては車軸方向のスペースを食うWN駆動方式は採用しにくい。

そのため、主電動機の軸を太めの中空軸とし、その軸を後方にある1枚目のたわみ板に接続、1枚目のたわみ板を中空軸内部を通したねじり軸と接続し、さらにねじり軸と小歯車を、前方にある2枚目のたわみ板を介して接続するという、やや複雑な構造となっている。たわみ板を主電動機の前後に配置することで、スペースの増大を抑制している。

動力は中空軸→たわみ板1→ねじり軸→たわみ板2→小歯車の順に伝わる。2枚のたわみ板とねじり軸、中空軸内部の空間が変位を許容する。

前述の通り、日本においては狭軌が多くを占めるので、電動機の直径は大きくなるが狭軌でも大出力化に向く本方式が、国鉄101系を始め多くの鉄道事業者に採用された。しかし、たわみ板の性能向上とVVVFインバータによる主電動機の小型化・大出力化もあってTD継手やWN継手が普及することとなり、現在では新規に採用されることはほぼない。

後述するTD継手と同様、速度が上がるにつれて低い唸り音が鳴るのが特徴。唸り音が顕著な車両の例としては、185系東急8500系が挙げられる。


TD平行カルダン駆動方式

主電動機は中実軸で、たわみ板を2枚重ね合わせた構造の継手(TD継手)を介して小歯車と接続する方式である。TDとはTwin Disc(2枚の円盤)の略とされる。

たわみ板を前後に配置していた中空軸方式とは異なり、2枚のたわみ板をボルトでそのまま結合したシンプルな構造となっている。

WN駆動方式とは継手の違いを除けば完全に同一で、現在の新車採用ではWN駆動とTD駆動に大別される。

定期的に注油が必要なWN継手と異なり、注油が必要ないので保守が容易で、劣化があればそのまま処分されるので管理がしやすく、スケールメリットが得やすい。そのため、JR西日本を除くJR各社の在来線車両にはほぼ全てにこの継手が採用されている。

たわみ板の素材には特殊鋼(しなやかな合金)が用いられていたが、近年はより柔軟性があり、強度の高い炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が用いられる。構造上、WN継手よりも単純な強度は劣るが、近年は連続的かつ高負荷の新幹線に採用できるほどに信頼性が向上した。


WN継手と違って惰性走行時の床振動や騒音(「ガー」「ゴロゴロ」と形容される鈍い音)が発生せず、WN継手より低騒音であるというのが定説である。しかし、WN継手と比較すると、主に中速域から高速域にかけて低い唸り音(「ヴゥーン」「ブォーン」という低音)が発生し、車両によっては力行・減速時に「ギィィィィーン」という金属音を思わせる騒音が発生する。これらの音は比較的聞こえやすく、音質も耳障りなので、一概にWN継手より騒音が少ないとは言えない。

理由としては、構造上歯車の噛み合い振動を拾いやすく、また継手の素材や整備状態によって音響特性が変化することが挙げられる。


関連タグ

鉄道車両 WN駆動方式 歯車比

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