日本昆虫界最強のアサシン
日本において最強の肉食昆虫とはなにか、と聞かれれば?
大きな鎌と俊敏な動きで獲物を狩るカマキリと答える人はいるかもしれない。
強力な毒とアゴをもつ殺戮集団オオスズメバチと答える人がいれば、
スピードでは何者にも負けない電光石火の狩人オニヤンマと答える人もいるかもしれない。
一般的にはそういった分かりやすい特徴を持つ昆虫が最強と謳われるのはなんら不思議ではないが、それら最強と謳われる昆虫達を一撃の下に屠る昆虫がいたら、貴方はどう思うだろうか。
シオヤアブ
一見すると、派手な彩色もない茶色く、しいて言うなら大きな複眼が特徴の普通のアブである。
そんな彼らの武器は強力な毒でも、強靭ななアゴでもない。ただ針のように鋭く硬くなった口吻(こうふん)だけ。
普段彼らは木の枝や葉の裏側でじっとして獲物が通りかかるのを待ち続ける。
そして獲物となる虫が飛んでくると、こっそり背後から近寄り狙いを定め、次の瞬間鋭い口吻の一撃で獲物の神経節を切断し即死させる。
昆虫界の必殺仕事人が繰り出す一撃の前には、同じ飛行昆虫で最強と謳われるスズメバチやオニヤンマでさえもなすすべはないのだ。
ちなみに
- 基本的には昆虫の体液が主食であるため、人間やほかの動物が襲われることはあまりないが、まれに刺されることはある。また見た目が人を刺すことが多いウシアブに似ている(シオヤアブのほうがスマート)ため、誤認には注意が必要。
- 肉食昆虫でありあまり人間に害をなさないことから益虫とする見方もある。
- スズメバチやオニヤンマでさえ一方的に倒しているように思われがちだが、忍び寄ることにして失敗して逆に狩られるということも結構ある。ただし、攻撃が成功した場合の一撃必殺という点では他の追随を許さない。
- 別に塩谷瞬とは関係ない。漢字表記は塩屋虻であり、由来はオスの尻の先が白い毛で覆われていることから塩を連想したもの。
- アニメ化もされたSF小説『新世界より』では、1000年後の日本に住むバケネズミであるスクィーラが所属するコロニーは「塩屋虻」と名付けられている。劇中では大きな勢力を持つ「大雀蜂」コロニーも登場しているが…