展望車(てんぼうしゃ)とは、鉄道車両の一種で、軌道上の風景を展望できる座席や大型の窓を特に設けた車両のこと。会社や車種、運行線区によりさまざまなコンセプトの展望車が存在する。
展望車の種類
開放型
(特急「つばめ」「はと」に使用されたマイテ39形)
オープンデッキ形とも呼ばれる。この方式の展望車はアメリカで誕生したもので、長距離を移動する際に一等旅客の憩いの場となるラウンジは、列車の最前部や最後部に設けられたが、この時、列車の最後部に設けられたラウンジに、旅客誘致の目玉設備として設けられたのが展望室である。開放型はその中でも最初期のタイプで、車両の一端をオープンデッキの構造としたのが同形式である。日本でも国鉄のマイテ39やマイテ49、九州鉄道の「或る列車」のうちの一両であるブトク1、東武鉄道が日光線向けに使用したトク500など、採用例が多い。
密閉型
(イラスト下段、密閉型展望室を持つ寝台特急「カシオペア」E26系)
解放構造の展望デッキに代わり、車両の一端に大型のガラス窓を配置した形態のもの。日本ではジョイフルトレイン用客車などに採用されたほか、寝台特急「カシオペア」にも同様の設備がある。カシオペアの場合、編成一端の車両はラウンジであり、同列車の乗客であれば誰でも利用できるが、もう一端の車両は展望室を兼ねた寝台個室となっているためこの部分の寝台特急券が必要となる。アメリカでは流線型展望車などと呼ばれる形態のものが多い。また、同じJR東日本が開発した24系25形「夢空間」用オシ25-901では、この展望室部分が食堂であり、車窓風景を見ながら食事が楽しめた。
密閉型の変り種・南海クハ1900
なお、この方式の変り種として、南海電気鉄道のクハ1900形1900号(1形式1両)が存在した。この電車は、アメリカンスタイルの流線型展望席のラウンジ部分の片隅に運転室があるというものであった。戦前および、戦後の特急「こうや」に使用されたが、20000系の登場によって一般車に改造されてしまった。
ドームカー
車両の屋根にガラス製のドームを設け、そこからの景色を楽しむための車両。アメリカやカナダなどでよく見られたほか、ドイツの特急列車「ラインゴルト」にも連結されていた。近畿日本鉄道が初代ビスタカーを設計する際の参考にもなったといわれ、その点では2階建て車両も一種の展望車といえる。
トロッコ列車
(最下段、JR東日本「びゅうコースター風っこ」。キハ48型を改造したトロッコ気動車である)
車両の上半分の窓に当たる部分を取り払った形態の車体を持つ、解放式の列車のこと。通常は雨天時の運行に備えて、普通の客車(控車と呼ばれる)を連結して運行される場合が多い。各地で観光の目玉として運行されるケースが目立つ。
「セッテベッロ」形
(同方式を採用した小田急電鉄の「ロマンスカー」)
イタリアの特急電車「セッテベッロ」において初めて採用されたといわれる方式。日本ではこの方式を初めて採用した名古屋鉄道の特急電車にちなみ「パノラマカー形」と呼ばれるほか、小田急電鉄でも採用が長らく続いたためロマンスカー形とも呼ばれる。JRでは165系「パノラマエクスプレスアルプス」(現富士急行「フジサン特急」)や485系「シルフィード」(現「NO.DO.KA.」)などで採用された。
ハイデッカー前面展望車
(名古屋鉄道の「パノラマスーパー」)
イラストで挙げた名古屋鉄道の「パノラマスーパー」に代表されるように、1階部分を運転室、2階部分を展望室とした形態のもの。衝突時の乗客に対するリスクがセッテベッロ形に比べ少ないうえ、運転席は最前部にあるため運転しやすく、また客席の視点が高いために、よりダイナミックな眺望を楽しむ事が出来る。名鉄のほかJR各社のジョイフルトレイン(とくに気動車改造)で数多く採用されている。
その他の展望車
叡山電鉄デオ900形「きらら」。車体の半分ほどがガラス張りの「ガラス電車」である。
国鉄151系「こだま」。先頭に連結されている「パーラーカー」も展望車の一種であり、巨大な側窓が目を引く