概要
『ギルガメシュ叙事詩』は古代オリエント最大の文学作品であり、これを英雄譚と称する場合、古代ギリシアの『オデュッセイア』や中世ヨーロッパの『ローランの歌』、『アーサー王と円卓の騎士』などに肩を並べる世界的な物語と言える。
一方、古代オリエント文学とりわけ古代メソポタミア文学界の多くが持つ「宗教性」と「政治性」という点は出張っておらず、むしろ世俗的でヒューマニズムな芸術的感覚が見られるのが特徴で、日本文学との相性も良く理解しやすい。
なお、映画『もののけ姫』制作に当たって宮崎駿監督が意識した物語だという。
あらすじ
ウルクの王ギルガメッシュは、ウルク第1王朝のルガルバンダと女神リマト・ニンスン(英語版)の間に生まれ、3分の2が神で3分の1が人間と言う人物であった。
ギルガメッシュは暴君であったため、神はその競争相手として粘土から野人のエンキドゥを造った(写本そのものが粘土板から作られていることにも注意)。
ギルガメッシュがエンキドゥに娼婦(シャムハト w:Shamhat、女神イシュタルに仕える女神官兼神聖娼婦という版もあり、彼女の役割に付随するニュアンスが少々異なる)を遣わせると、エンキドゥはこの女と6夜7日を一緒に過ごし、力が弱くなったかわりに思慮を身につける。
その後、ギルガメッシュとエンキドゥは力比べをするが決着がつかず、やがて2人は友人となり、さまざまな冒険を繰り広げることとなる。
2人はメソポタミアにはない杉を求めて旅に出る。杉はフンババ(フワワ)という怪物により守られていたが、2人は神に背いてこれを殺し杉をウルクに持ち帰った。
このギルガメッシュの姿を見た美の女神イシュタルは求婚したが、ギルガメッシュはイシュタルの気まぐれと移り気を指摘し、それを断った。怒った女神は「天の雄牛」をウルクに送り、この牛は大暴れし、人を殺した。ギルガメッシュとエンキドゥは協力して天の雄牛を倒すが、フンババや天の牡牛を殺したことで神々は会議においてエンキドゥの死を定め、それにより病の床に伏したエンキドゥはギルガメッシュに看取られながら死んでいった。
ギルガメッシュは大いに悲しむが、自分と同等の力を持つエンキドゥすら死んだことから自分もまた死すべき存在であることを悟り、死の恐怖に怯えるようになる。そこでギルガメッシュは永遠の命を求める旅に出て、さまざまな冒険を繰り広げる。多くの冒険の最後に、神が起こした大洪水から箱舟を作って逃げることで永遠の命を手に入れたウトナピシュティム(命を見たものの意)に会う。大洪水に関する長い説話ののちに、ウトナピシュティムから若返りの草のありかを聞きだし、これを手に入れるが、蛇に食べられてしまう(これにより蛇は脱皮を繰り返すことによる永遠の命を得た)。ギルガメッシュは失意のままウルクに戻った。
友情の大切さや、野人であったエンキドゥが教育により人間として成長する様、自然と人間の対立など、寓話としての色合いも強い。