人造の樹(クロノオト)
くろのおと
そう。
最初の最初から寄り添っていたはずだ。
ただ目に見えないだけで、それは最強の超能力者の力を常に支えてくれたはずだ。
───────新約22巻460ページより
概要
生命の樹(セフィロト)、邪悪の樹(クリフォト)に続く「第三の樹」。
クリファパズル545が主である一方通行(アクセラレータ)の為だけに、ミサカネットワークを再定義して世界に打ち立てられた新たな概念。
無数に枝分かれしながら、全体で一つの巨大な塊として振る舞うモノ。
目に見えぬ第三の樹。
軍用量産クローンの脳髄と電磁波とが結びついて構築された、大きな大きな情報体。
初出は新約22巻だが第三の樹は新約18巻で言及がある。新約18巻ではインデックスが窓のないビルを見て第三の樹と表現しているが、クロノオトがアレイスター=クロウリーの計画の原型をどこまで残しているかは不明。
クロノオトはアレイスター=クロウリーという魔術師が創った当代のテレマ僧院「学園都市」が生み出した超能力の副産物。今作における現代テレマの扱いと同様、あらゆる神話・宗教にも属さない。人間が全てを御する可能性を持つ、科学の象徴とされている。
人の可能性を秘めた科学の樹
セフィロトはアインからアインソフ、アインソフからアインソフアウルへと、そしてアインソフアウルから各セフィラが誕生する事から成立している。こうした至高の神からの派生を史実では「流出」と呼ぶ。この象徴は作中に於いてもキリスト的カバラを用いる近代西洋魔術師も重用する。
クリフォトはセフィロトの裏返し。近代オカルティズムでは悪魔と結びつくため、魔術師は思考に耽けるべきではないと言われるほど危険な象徴。それは本作でも忌避されていた事からも明らかである。
クロノオトの体系が象徴する原型
クロノオトが網羅する物はその2つと違い「後世の人間の魂」である。
人間は火を得て鉄を打ち蒸気と石油を利用する時代を経て、電気を支配するに至った。
神聖なる正の心を表現するのがセフィロト、邪悪なる負の心を表現するのがクリフォトなのだが、この設計図は本当に現代の人をも完全に包括できているのか。
例えば指先のタップ一つで加算されるSNSの賛同数、ストイックであるほど褒め称えられるフィットネスジム、グルメサイトの星の数、…能力のレベルによって管理される都市。
人は自ら生み出した最先端の科学技術、文明に振り回され続ける。そんな後世の魂の変化をも完全に網羅した図面がクロノオトとされている。
「魔術とは、意志に従って変化する〈科学〉であり〈業〉である」
────アレイスター・クロウリー『魔術 - 理論と実践』より
────鎌池和馬,はいむらきよたか『新約とある魔術の禁書目録』引用文より
クロノオトの深淵
黄金の夜明け団やテレマの体系では、魔術師がケセドとビナーの間に横たわる〈深淵〉を横断することは極めて重用かつ危険な作業である。
深淵の試練で実体を持つ個としての意識を解消し、客観と主観を超越する事により深淵の誓いを立てた暁には〈神殿の首領〉に生まれ変わる。つまり西洋の秘教で伝えられる選ばれし達人「秘密の首領」(第三団)の領域に至るのである。
深淵と同一のエノク領域ZAXに揺蕩う天使がコロンゾンという事は本作でも説明されている。魔術師はこの天使とも悪魔とも形容される存在を乗り越え、「理解」(ビナー)に到達しなければならない。
史実のアレイスター・クロウリーは第三団「銀の星」の領域に至ったのだが、本作での彼はヴィクター=ニューバーグとのコロンゾン召喚実験の際に跳ね返されてしまった。ミナ=メイザースが言うには、それで深淵を渡る作業にも見切りをつけたらしい(まぁ結局新約22巻で超えたのだが)。
だが一方通行(アクセラレータ)はクリファパズル545の協力を得て叡智を獲得し、クロノオトに横たわる深淵を乗り越えて飛び級的に昇格した。ここで一方通行はエイワスと同様の、プラチナに輝く翼を噴出させた。
余談・元ネタ補足
一方通行と同じように飛び級的に深淵を乗り越えたフラター・エイカドは、アレイスター・クロウリーの魔術的息子と呼ばれた後継的存在…だった。
※法の書のリベル・エル・ヴェル・レギスという名称への改題も、元は理解を得たエイカドがクロウリーに自身の発見を報告した事による。
しかしエイカドはまともな位階の修行を怠って深淵の試練を飛び級的に制するのみならず、後でクロウリーを追い抜いた(9=2位階,10=1位階への昇進)と調子に乗ったのだ。
これがエイカドとクロウリーの対立にまで発展し、結局クロウリーもエイカドをO.T.O.からの追放処分にせざるを得なかった。
エイカドは聖守護天使のエイワスを徹底的に蔑み、真理と正義のマイオンという新時代の到来を主張した(二重進行説もあるが、これはエイカドのブレによる)。
エイカドの失敗もあり、アレイスター・クロウリーは位階の修行を積んで段階を経て昇格することを重要視していた。
いきなり深淵を超えて学園都市の統括理事長を任せられた一方通行だが、エイカドより凄いことやってる気がする。大丈夫なのだろうか。