蒸気機関とは、水をボイラーで加熱して発生する蒸気を用いて、ピストンやタービンを動かすエンジンのこと。その中でもピストンを用いるもの(レシプロ式)を指す時が多い。
タービン式蒸気機関は蒸気タービンを参照。
レシプロ蒸気機関
レシプロ蒸気機関は18世紀からポンプや織機などの据え置き用に広く使われ、19世紀に入るとトラクター(トラクションエンジン)や蒸気機関車や汽船などの乗り物の駆動用機関として普及した。19世紀末から20世紀初頭には蒸気自動車が電気自動車、ガソリンエンジン車と覇を競た。
蒸気機関の改良に従事した偉人としてはジェームズ・ワットが広く知られているが、初めて実用化したのはトマス・ニューコメンによるもの(1712年)。
熱効率は極めて低く、蒸気タービンが35%前後あるのに対し6~10%にとどまる。鉄道や自動車用ではごく一部の実験を除いて蒸気タービンが使われず、ほとんどすべてレシプロ式になっていたのは、負荷の変動や逆転といった動作がタービンでは難しく、実験車両も尽く失敗したためである。
軍艦など艦船では20世紀中盤に蒸気タービンが普及したが、こちらは容積の余裕から大型のギヤボックスを実装できたから。
それにしても初期には各国とも伝達系で苦戦し、アメリカ海軍に至っては、電気技術の先進国であったこともあって戦間期に建造した一部大型艦では、減速機の難渋を避けようと蒸気タービンで発電して駆動する「ターボ・エレクトリック」方式を用いており、レキシントン級航空母艦などは高い性能を発揮して活躍した。
基本的に始動性は悪く、液体・気体燃料利用でも1時間、固体燃料(石炭)利用だと4時間かかる。このため蒸気機関車は運転中以外もボイラーに火を入れておくことが多い。
しかし、米国の蒸気自動車「スタンレースチーマー」は瞬間湯沸し式のボイラーをそなえ、外観も性能的にも当時のガソリン車と遜色がなかった。レシプロ蒸気機関は低速トルクに優れているので変速機を必要としない(当時のガソリン車の変速は難物であった)、動作が静かであるなどの長所があり、1927年まで生産された。
スチームパンクのスチームはこれのことであり、それっぽい雰囲気の絵につけられていることもある。