概要
ツァトゥグア (Tsathoggua) とは、クトゥルフ神話に登場する架空の神である。
異称としてサドグイ(Sadogui)、サドゴワア(Sadogowah)、ゾタクア(Zhothaqquah)など。
初出はクラーク・アシュトン・スミスの短編『サタムプラ・ゼイロスの物語』(1931年発表)。
また発表の1年前、スミスと交流のあったラヴクラフトが執筆した『闇に囁くもの』にて名前や由来が言及されている。
地球誕生直後に、サイクラノーシュ(土星)から地球に飛来。古代大陸ヒューペルボリアの大陸西部、ヴーアミタドレス山の地下洞窟に住んでいた。
ラヴクラフトの『闇に囁くもの』では地下世界クン・ヤンの底、「暗闇のンカイ」に座を占めている。ヒューペルボリアは後に海に沈んだ為、こちらに引っ越したのかも知れない。
オーガスト・ダーレスによる分類によると、四大元素の中ではナイアルラトホテップと同じく「地」に結びついた旧支配者の一柱に定義されている。
外見
巨大な腹部とヒキガエルに似た頭部を持っている。ずんぐりむっくり体型。
体は暗い色で、表面は短く柔らかい毛でおおわれ、コウモリとナマケモノのあいのこを連想させる風貌。
……まあ、彼(?)の事ではないと思いたい。
『クトゥルフ神話TRPG』では規格外の大きさを誇るクトゥルフなどと異なり、姿はあまり大きくないとされている(大体ホッキョクグマやイタチザメ程度の大きさ)。
……ますます彼(?)のような気もしなくもないが。
ちなみに創造者であるスミスは後年彫刻でツァトゥグァ像を作っている。
検索するとすぐわかるが、なんかシュールで憎めない顔をしておいでである。
性質
旧支配者の中では珍しく(条件つきで)温厚。正確には怠惰。
贄を食べて満腹状態、かつ信者であれば比較的話が通じる。逆に言えば腹ペコ状態の時は、信者であろうと問答無用で食べてしまう。
そうしてうずたかく積まれた骨の山に埋もれるように横たわり、のんべんだらりと寝て過ごしているという。
豊富な魔術の知識を持ち、崇拝者には召喚術など様々な魔術を授け、贄や信仰を捧げた相手には相応の恩恵を与えている。「比較的に話が通じる相手」と認識されているのはこういった理由によるだろう。
「ナコト写本」や「ネクロノミコン」でもその存在が言及されているらしい。
『七つの呪い』では、呪いをかけられて生贄として寄越された主人公を前に
「ちょうど今贄を食べて満足してるし、いらないかな」(意訳)
「でもそれだと送り主の好意を無駄にしてしまう。それは良くない」(意訳)
「だからお友達にあげる事にするね!」(意訳)
として、主人公に新たな呪いをかけてアトラク=ナクアの許に向かわせている。
『魔道士エイボン(または『土星への扉』)』では、主人公のエイボンが信奉する神として登場。
ヘラジカの女神イホウンデーの神官モルギが彼を異端者としてとらえようとした際、ツァトゥグアはエイボンに警告を発し、エイボンは拝領していた金属板の鍵を使って脱出用の扉を開き、サイクラノーシュへと脱出する事に成功した。その後をモルギが追いかけ、かくして二人の珍道中が始まる。
一方ヒューペルボリアではエイボンが追手から逃れた事、モルギが姿を消した事が問題視されていた。結果イホウンデー信仰は衰退し、ツァトゥグア信仰が人気を博したのだった。
能力
対象の血管に硫酸を流すことができる。対象は体中に穴が開き、大やけどを負い大変な苦痛を受ける。
関係性
親族
・アザトース
遠い祖。クグサクスクルスを分裂生殖で産み落とした。
・クグサクスクルス(サクサクルース)
ツァトゥグァの祖父、あるいは祖母。両性具有。単独で子供を産める。ギズグスを一人で産んだ。人肉喰い(おそらく同族食いのこと)の習慣がある。
・ギズグス
クグサクスクルスの息子。ツァトゥグァの父親。詳細は不明だが「宇宙ホームレス」などの別名があり、この神性も相当に怠惰な性格である。クグサクスクルスの同族食いの習慣を嫌って別れた。
・フジウルクォイグムンズハー
ツァトゥグァの父方の叔父。ギズグスの兄弟。親であるクグサクスクルスの同族食いの習慣を好まず、幼少時にヤークシュ(海王星)に渡り、その後サイクラノーシュに移った。
『魔道士エイボン』にも登場しており、サイクラノーシュに逃れてきたエイボンに託宣(とエイボンが勝手に勘違いした言葉)を賜った。
・イクナグンニスススズ
ツァトゥグァの母方の祖父。暗黒星ゾスからやってきて、分裂生殖によりズスティルゼムグニを産んだ。
・ズスティルゼムグニ
ツァトゥグァの母。ギズグスの妻。
・シャタク
妻。
・オサダゴワ(ズヴィルポグア)
息子。資料によっては不分明。下記参照。
・スファトリクルルプ
孫娘。オサダゴワの娘。旧支配者。亜人間ヴーアミ族の一個体との間に子をなす。ヴーアミ族から「偉大なる母」「復讐者」と呼ばれる。
・クニガティン=ザウム
玄孫。スファトリクルルプの子。亜人間ヴーアミ族の無法者。三度の斬首刑を受けながら三度とも復活する。『アタマウスの遺言』に登場。
眷属
・無形の落とし子
黒いタールのようなスライム状の種族。『サタムプラ・ゼイロスの物語』に登場。ツァトゥグアに奉仕するが、単なる奉仕種族なのかツァトゥグァの落とし子なのかは不明。名前がないため「無形の落とし子」と呼ばれる。
・ツァトゥグァの末裔
像のような怪物達。末裔と呼ばれるが、本当に子供なのかはわからない。親であるツァトゥグアが崇拝されている洞窟や神殿に棲み、代わりに生け贄と崇拝を受ける。また、守護者としての役割もつとめる。このことからこの存在をツァトゥグアと勘違いしたまま書き記した資料もあるようだ。
無形の落とし子とは協力関係にありツァトゥグアに仕えるが両者は全く異なる種族である。
羽の生えた巨大なヒキガエルのような姿で一匹一匹が非常に年老いている。中には太古の人間に神として崇められていた者もいる。
グレートオールドワンであるオサダゴワと何らかの関係があるとされる。
・オサダゴワ
ズヴィルポグアとしても知られる。「ツァトゥグアの息子」「ツァトゥグアの初子」と書物で言及される。犠牲者を空中に連れ去り、血液を吸い尽くす。
ツァトゥグアの末裔の中で、成長し力をつけた個体という推測もされている。
信仰者
・エイボン
ヒューペルボリア最高と謳われた大賢者。『魔道士エイボン』の主人公であり、魔法書『エイボンの書』を記したとされる。
当時大陸を席巻していたイホウンデーの神官モルギからは邪悪な魔道士として狙われていたが、130歳のときにツァトゥグァから賜った金属板を使い、サイクラノーシュへと逃亡。その後は二度と戻らず、同地でそれなりの地位を確立して余生を過ごしたと言われている。
呪文
ツァトゥグァの儀式聖歌。知られているものはこの一つだけ。
ウガア=クトゥン=ユフ! クトゥアトゥル グプ ルフブ=グフグ ルフ トク!
グル=ヤ、ツァトゥグァ! イクン、ツァトゥグァ!
来たれり! 敬愛する主ツァトゥグァよ、夜の父よ! 栄光あれ、太古のものよ、外なるものの最初に生まれしものよ!
ハイル、汝、星が大いなるクトゥルフを生み出す前の記憶の果ての太古からありしものよ! 菌にまみれしムーの偉大な旧き這うものよ!
イア イア グノス=ユタッガ=ハ! イア イア ツァトゥグァ!