歩兵戦闘車
ほへいせんとうしゃ
概要
車内に歩兵を乗せることができる装甲戦闘車両。歩兵を運ぶばかりではなく、積極的な戦闘参加を前提とし強力な火砲を搭載している。
見た目は戦車に似ているが、主砲は機関砲で対戦車ミサイルを搭載するものも多い。
英名はIFV(Infantry Fighting Vehicle)、またはICV(Infantry Combat Vehicle)。
流行のきっかけ
戦後ドイツがクルツやラングといった20mm機関砲を搭載した歩兵戦闘車(ラングが世界で最初に名乗った。クルツは装甲偵察車とされた。)を導入したが、クルツは定員が少ない、ラングは化学防護が弱いなど欠陥があった。
本格的な歩兵戦闘車の鏑矢となったのは、ソビエト連邦が開発したBMP-1だった。この車両は、頑丈なトラックでしかなかった今までの兵員輸送車とは違い、車体に設けられたガンポートによって兵士が乗車したまま戦闘が可能である。前線に殴り込めるだけの防御力と、状況次第では戦車にも対抗可能な攻撃力を有しており、更にNBC防護まで完璧だった。これが実戦に投入されれば、たとえ黒い雨が降り注ぐ中であっても、軽戦車級の主砲と二桁の銃口を生やしたハリネズミが暴れまわることとなる。
BMP-1の誕生は、西側諸国にもそれなりに衝撃を与え、各国は歩兵戦闘車の開発に取り組むこととなる。
性能
武装
主砲は多くの場合20mm~40mm程度の機関砲だが、ロシアのBMPシリーズには100mm砲を有するものもあり、同格未満の軍用車両に対して圧倒的な優位性を確保するほか、戦車に対しても側面、後面、上面など狙える機会があれば有効なダメージを与えることが可能で、実際に撃破した事例も存在する。
対空戦闘を考慮して高い迎角が取れるよう設計されることも。
対戦車ミサイルも搭載されており、こちらも戦車相手に重要な攻撃手段になる。攻撃兵装以外に発煙弾の発射機能も持つ。
他に初期の車両では車内から銃撃可能なガンポートも設けられていたが、効果が限定的であり、また防御上の弱点にもなるということで、後発の車両にはガンポートがないことが多い。搭載していた車両の場合も、改修で装甲板が追加される際に塞がれることが多い。
防御力
側面、上面も重機関銃の射撃に耐久し、一部車両は正面に限れば30mm機関砲や対戦車榴弾も防御が可能。榴弾砲の破片などにも耐え、装甲兵員輸送車の防御力を大きく上回る。
車体下面は対人地雷程度なら防御可能。
機動力
装軌式は踏破性に優れ、戦車に追随するだけの機動性を有する一方、燃費は悪く、長距離の自走も無理で、値段も高い。
一方装輪式は、特にトレーラーなしでも長距離移動が可能で、コストも抑えることができる。現代は装輪車両にもそれなりの防御力を持たせることが可能であるため、装輪式の歩兵戦闘車も多い。
この点については装甲車の「装輪装甲車と装軌装甲車」の項目も参照。