概要
裸子植物の一種で、ソテツ綱ソテツ目ソテツ科ソテツ属のソテツ、と、最初から最後まで徹底的にソテツである。なおソテツ類は世界中に100種ほどあるが日本に自生しているのは本種のみ。
木全体の見た目はヤシに似ているが、分類上は遥かに遠い。若芽の形などはむしろシダに似ている。
雌雄異株で雄花と雌花が別々に咲く。雌花は葉を縮めたような雌しべが珠状に集まっている。雄花はバットのような形に集まっている。幹が太く、濃緑色の硬い羽根状複葉を持ち先端が肌に刺さると痛い。
種子植物では珍しく精子を作る(他にイチョウも作る)。主に南西諸島や中国南部に分布し、海岸近くに生育することが多い。共生微生物による窒素固定能力があるので荒地でも生育が可能。
枯れた木に鉄釘を打ち込むと、蘇るという伝承から蘇鉄(ソテツ)という名前が付けられるようになったという説がある。実際には幹が痛むだけで、やっても何の効果もない。
利用
植栽
フェニックスやヤシのように南国を連想する植物のためか、沖縄県から南九州には大量に植えられている。これらの地域の校庭などでソテツが植栽されていた記憶を持つ人も多いことだろう。
食用
一応種子は食べられるのであるが、有毒で発癌性のあるサイカシンを含んでおり、体内でホルムアルデヒド(要するにホルマリン)に変化して急性中毒を起こすため、直で食べるのは非常に危険。
皮を剥ぎ、時間をかけて充分に水に晒し、発酵させ、乾燥するなどの処理をする必要がある。
沖縄県などの南西諸島では飢饉の際にソテツを食べて飢えを凌いだ結果、毒により苦しんだという伝承がある。これが俗に言う『ソテツ地獄』というヤツである。
しかし、上手く利用すれば貴重な澱粉源でもあるため、そこは付き合い方次第ということだろう。
薬用
民間療法では種子を煎じて用いるが、発癌性があるので利用はお勧めできない。