以下、魔神任務第2章第3幕のネタバレ注意
『伝説によると、彼は雨粒さえも斬ることができ、剣を振り回すとその衝撃波は薔薇を両断し、炎をも吹き消すという。(西風剣ストーリーより)』
概要
原神に登場するキャラクター、「幼い狼」ルースタン×ロザリン・クルーズチカ・ローエファルタの公式カップリング。
500年前のモンドに生きていた西風騎士団副団長(※)の「幼い狼」ルースタンは、大切な人たちとモンドを守るため、幼馴染で親友である西風騎士団大団長の「光の獅子」エレンドリン名義で「クロイツリード」という組織を運営していた。
クロイツリードとは『モンドを護るため、西風騎士の代わりに騎士道の精神に背く汚い仕事を請け負っていた(鐘の剣ストーリーより)』組織である。(明言はされていないが、ほぼ確実に)この組織で行う「仕事」のせいでルースタンは疲弊していた。
ここで登場するのがロザリン・クルーズチカ・ローエファルタ。ロザリンは歌が上手い少女で、昼の広場でよく歌っていた。そしてルースタンの疲弊した心を唯一慰めることができ、安らぎを与えられたのが彼女の歌である。
『少女の軽快な歌声だけが、守護者をすっきりさせた。(守護の花ストーリーより)』
『彼が世界のことを忘れるのは、昼の広場で少女を見つめる時だけだった。(守護の置き時計ストーリーより)』
『広場でこの歌を歌う少女だけが、彼の仕事の疲れを癒やしてくれた。(終焉を嘆く詩ストーリーより)』
過程のテキストは無いものの、いつしか二人が惹かれ合うようになり、恋人となった。
聖遺物「守護の花」にある『愛しい人』はルースタンからロザリンに向けられた言葉である。
「西方の風が酒の香りを連れて行く」
「山間の風が凱旋を告げる」
「遠方の風に心が惹かれる」
「サラサラと君への想いを歌う」
(終焉を嘆く詩ストーリーより)
またロザリンも、大好きだったというこの歌をルースタンの前で歌っていたため、二人が相思相愛だったことは言うまでもない。
※ゲーム内テキストには団長エレンドリンの「副官」としか記載がないが、「右腕」との記載もあり副団長で間違いないと思われるため、このように表記している。
その後の二人(ロザリンについて)
ロザリンはスメール教令院に留学し、二人はしばらく離ればなれになってしまう。ルースタンは旅立つロザリンに水時計を贈る。(※1)
『時計が一周回る時間は、彼女が教令院で勉強する時間と同じである。』
『時計が一周回って、彼女が故郷に戻った時、』
『時計をくれた人はすでに災いの糧となっていた。』
(三つ共に魔女の破滅の時ストーリーより)
しかし、ロザリンがスメールから帰国した時、ルースタンは亡くなっていた。
『「蒲公英は朝の風と旅に出る」
「秋の風は収穫をもたらす」
「しかしどんな風も」
「あなたの眼差しをもたらしてはくれない」
涙も歌声も枯れた時、少女は命を燃やし、世界を浄化しようと決めた…』
(終焉を嘆く詩ストーリーより)
『大切な人たち、思い出の時間、輝く未来、何もかも失った。』(魔女の炎の花ストーリーより)
『全ての苦痛を焼き尽くさないと、新たなる希望はないと彼女は思った。』(魔女の炎の羽根ストーリーより)
『少女の時間はこの瞬間に静止した、そして炎の魔女の破滅の時が始まった。』(魔女の破滅の時ストーリーより)
『一本の火が、少女の心にあった全ての美しくて弱い部分を焼き尽くした。』(魔女の心の炎ストーリーより)
これ以上にもロザリンの絶望を表す文は多く見られる。それほどまでに彼女の絶望は深かった。
やがてロザリンは恋人のルースタンだけではない大切な人たちを奪った魔物を憎悪し、復讐を決める。
『世の全ての魔物と、魔物による苦痛を焼き尽くすまで。』(魔女の破滅の時ストーリーより)
『まだ学生だった頃、この帽子のお陰で彼女は一心に炎の力を鍛えることができた。』(焦げた魔女の帽子ストーリーより)(※2)
ロザリンはモンドからスメールに戻り、復讐のために炎の力を鍛えた。(※3)
教令院を卒業したかどうかは定かでないが、魔物への憎悪から復讐を誓ったロザリンは——
『煙と余燼の中から、炎の魔女が誕生した。』
——歌が上手な少女から、「燃え盛る炎の魔女」へと生まれ変わる。
※1:水時計を贈ったのがルースタンであるとの明記は無く、「魔女の炎の花」にて大禍災で喪ったのが『大切な人たち』との記載があるためロザリンの家族や全く別の人から贈られた可能性も否めないが、わざわざ書くならルースタンからのものだろうと判断してこう表記している。
※2:『炎の力』とあるが、神の目の力であるとの記載はどこにもない。この後ロザリンが自身の炎に全身を焼かれることを考えると、代償と言えど神の目の力ではない別の力であると考えることもできる。生まれた時から魔女として炎の力を使えたとか、留学中にリサのように禁書から力を得たとか、神の目の力だなど多くの考察が為されているが、明言されていないためどれも憶測に過ぎない点に注意。
※3:魔女の帽子ストーリーに『大きな帽子は周りの混乱を遮断してくれる』とあるため、前と変わった彼女の様子に対する『周りの混乱』である、と考えられるためこう表記している。
その後の二人(ルースタンについて)
ルースタンは恋人のロザリンが留学に旅立つのを見送った後、魔物討伐(※1)のため遠征に向かう。
『「あなたが戻って来なくても、僕は泣かないぞ」』
『「今のように、あなたのために一杯飲んでやる。」』
(二つ共に勇士の壮行ストーリーより)
出征前にルースタンはエレンドリンと一杯交わし、このように言った。(※2)
しかし、戻って来なかったのはルースタンだった。
ここから先は、ルースタンの死に関する時系列について説明する。
なんと、ルースタンが死ぬタイミングが参照テキストによって全く変わってくるのだ。
時系列Aについて説明する。参照テキストは書籍『森の風』第1巻、聖遺物「勇士の毅然」、「守護の花」。
『森の風』には『漆黒なる大蛇――悪龍「ドゥリン」が海から這い出し、暗雲がモンドへと忍び寄る。その頃の西風騎士団は獅牙騎士の座が空席で、鷹の旗は地に降りていた。』との記載がある。
この獅牙騎士とはエレンドリンのことであり、彼がいなくなっている=ルースタンはこの時点で死んでいることになるのだ。
つまり時系列Aだと、
魔物討伐遠征でルースタン殉職(失血死)
→エレンドリン戦意喪失、辞職
→獅牙騎士不在のモンドに毒龍ドゥリンが襲来
→風神バルバトス覚醒、風龍トワリンと共に応戦
→ドゥリンがドラゴンスパインに落ちる
となる。
一方の時系列B。こちらの参照テキストは武器・弓の「終焉を嘆く詩」。
テキスト全文に渡って時系列が書かれており、
ドゥリンと魔物が一気に襲来
→風神バルバトス覚醒、風龍トワリンや西風騎士団と共に応戦
→ドゥリンがドラゴンスパインに落ちる
→おそらく地上で魔物と戦っていたルースタンが谷戸(ダダウパの谷)で殉職
→エレンドリン戦意喪失、辞職
となる。
このようにゲーム内テキストで矛盾が生じていることは知られるべきである。
しかし時系列の如何に関わらず、「終焉を嘆く詩」テキストのようにルースタンが最期までロザリンのことを想っていたのは確実だろう。
※1:聖遺物「勇士の毅然」にて『剣身は鉄光を光って、黒い血が雨のように流れた。』との記載がある。黒い血とはモンドに関連しないテキストでも深淵の魔物の血のことを指しており、時系列ABに関わらず魔物討伐のため遠征に出たことに変わりはない。
※2:聖遺物「守護の瓶」にてエレンドリンがルースタンに言っている言葉を見ると、エレンドリンの二人称は「お前」であることが分かる。「勇士の壮行」はどちらが言った言葉なのか分かりにくいが、「あなた」がエレンドリンの二人称と違うことからこの言葉を言っているのはルースタンであると見て間違いないだろう。
「燃え盛る炎の魔女」の顛末
ルスロザにおける結末は、残念ながらロザリンが復讐のために魔女になったところでは終わらない。
この記事を読んでいる方には分かるだろう。ロザリンは「燃え盛る炎の魔女」から「淑女」シニョーラになるのである。
炎の力が身体をも蝕み始め、ロザリンの生命は尽きようとしていた。そんな時ロザリンに手を差し伸べたのが一人目の愚者(おそらく執行官第一位)の「道化」ペドロリーノだった。
『一人目の愚者は命の炎が尽き果てようとする少女に「力」を授けた、少女は「妄念」を通して穢れた過去と無垢な未来の境界を見た…』(無垢の花ストーリーより)
彼はロザリンを仲間(ファデュイ)にするため「妄念」を見せる。(※1)彼が見せた「妄念」は『永遠に純白で汚れのない王国』(溶滅の刻テキストより)で、これは魔物や神々、アビスを世の汚れだと思っているロザリンにとって理想の世界を表していた。ロザリンのことが書かれている無垢の花の「無垢」は彼女の理想から来ていると言えるだろう。
そしてファデュイの仲間入りを果たしたロザリンは氷の邪眼で炎の力を抑え込み(※2)、ファデュイ執行官第八位「淑女」シニョーラになった。
しかしファデュイは仲間にさえ仮面で素顔と名前を隠す組織である。500年の時を仮面と邪眼と共に過ごしたロザリンは、大切な人たちのことを忘れていたことが週ボスドロップ素材の「獄炎の蝶」にて明かされた。
「私を…魔女と呼ぶなぁっ!」
邪眼の拘束から解放され、記憶を取り戻し、『焚尽の灼炎魔女』形態となったロザリンからはこのような台詞が聞ける。聖遺物「燃え盛る炎の魔女」シリーズを読むと、ロザリンを魔女と呼び忌避したのは人間だったことがよく分かるだろう。「魔女の炎の羽根」にて沈黙していた彼女がその実いかに傷付いていたのかを思うと、裏の仕事で疲弊したルースタンを彷彿とさせる。
「救済は…いらない…いらないの…」
討伐後のこの台詞が、旅人との戦闘後に覚えた感情からのものであるのか、「淑女」になる前のものであるのかは、公式からの情報がない限りもう分からない。
「妄念」を斬る無想の一太刀によって、「妄念」の中にいたロザリンは散ってしまったからである。
※1:週ボスドロップ素材「溶滅の刻」中にある『あんた』と『彼』。『毒と共に大地へと戻った』のは深淵の魔物や毒龍ドゥリンと同時期に死んだルースタンであり、『あんた』に当たる。「妄念」の中にある理想の世界をロザリンに魅せたのは道化であるため、『彼』は道化のことを指している。ルースタンはモンドを守ることだけを目標としており、魔物のいない世界を作ろうとしていたわけではない点に注意。
※2:「公子」タルタリヤや図鑑テキスト「淑女」を読めば分かる通り、本来邪眼は戦闘力の増強に用いられるもので、ロザリンのように力の抑制に用いられるものではない。
余談
・ルースタンの聖遺物である「守護の心」だが、ロザリンに贈ろうとしていた「守護の花」である菖蒲が全ての聖遺物に付いている。彼自身のマークであろう真ん中に三角形の描かれた盾のようなマークとは別に。
・菖蒲の紫はロザリンの瞳の色。
・「焦げた魔女の帽子」は向かって左側だけが焼け焦げているが、「淑女」シニョーラが仮面ではないレースのような何かで隠しているのも向かって左側(右目)である。
・「守護の置き時計」と「溶滅の刻」より、ルースタンとロザリンは後ろ(過去)を振り返ることなく前だけを見る共通点がある。
・ルースタンが編み出した西風剣術は500年経った今も継承されているが、ロザリンが考案した(であろう)液体の炎の作り方は伝承が途絶えている。
・ロザリン以外で500年前のモンドの話に登場する人物のキャラクターデザインは明かされていないが、ルースタンは「守護の帯」を『髪結び』としていたことだけ分かっている。
・「西風大剣」にてエレンドリンが大団長になっても神の目を授からなかったとの記載があるが、役職を引き合いに出しているためルースタンは神の目を授かっていた可能性が高い。
・ダダウパの谷は古戦場であり、剣塚が立てられている。両手剣の原型が取れるのは剣塚の中央であり、エレンドリンが両手剣の使い手だったことを考えると…
・ロザリンの家名であるローエファルタはドイツ語で「炎の蝶(蛾)」。
・ロザリンの命の星座について。名前は不明だが、ver2.1特設サイト 韶光撫月の浮世にある「淑女」の文字の左にあるマークと執行官の星座一覧にある蝶か蛾のようなマークが似ていることから、彼女の命の星座がこのマークであることは間違いない。実装されていないので詳しいことは分からないが。
・ルースタンの死によってエレンドリン(辞職)、ロザリン(炎の魔女→ファデュイ「淑女」)、ローランド(深淵行き)、愛される少女(一生ローランドの帰りを待っていた)の四人の人生が狂っている。
・西風剣ストーリーにて『伝説によると、彼は雨粒さえも斬ることができ、剣を振り回すとその衝撃波は薔薇を両断し、炎をも吹き消すという。』と言われている。ロザリンは彼女の名前そのものに薔薇モチーフが入っており、「淑女」シニョーラの髪も薔薇が結われており、また炎の魔女だったことを踏まえると、最初から匂わされていたことになる。