概要
「そうかも知れんがね……。それを否定してしまったら、この世は闇だよ。」
声:森功至
OVA版のEP4(TV版の第10話)にて、マーセナス家の屋敷から脱走したオードリー・バーン(ミネバ・ラオ・ザビ)が立ち寄ったダイナー(北米文化圏における大衆食堂)を経営する老人。
祖父や父から宇宙世紀以前の地球の惨状を聞かされて育っており、「自分たちも一緒に宇宙に上がっていれば今頃腰痛に苦しめられることもなかったかも知れない」と冗談めかして話す。その反面、怨嗟や悲劇が繰り返される歴史の直中においても物事は冷静に受け止めており、地球連邦の設立やスペースコロニーへの移民政策も元々は「汚染され行く地球を救いたい」という善意から始まったことをオードリーに語った。
店を一人で切り盛りしており、詳細は不明だが家族は居ないようだ。戸棚に飾ってある写真には子息と思われる地球連邦軍の軍服に身を包んだ青年と一緒に映っているが、その青年がいつなにをしてどうなったのかは一切語られない。
また、先年に隕石落としを行ったシャア・アズナブルを「人類全体のニュータイプへの覚醒を声高に唱えていながら、本心では誰のことも信用していなかった。本当は、人間を好きになったことがない寂しい男だったんじゃないか?」と評し、彼の本心をかなり鋭く考察していた。
その後の出番は少ないものの、最終盤にてTVで流されたミネバの演説を見るその目は優しかった。
余談
声を担当した森功至氏は、かつて「機動戦士ガンダム」でミネバの叔父にあたるガルマを演じている。
原作小説版でもそれなりに尺を割かれており、違う世界に生きる大人と若人の本心からの対話という意味では、バナージとジンネマンとのやりとりとも対比構造になっている。地球一般市民代表のようなスタンスとして持論を述べるも、そこに宇宙移民者や連邦政府への憎しみは薄く、むしろ憐憫の情や慈しみさえ受け取れる。この対話は迷いの中にあったミネバの活動指針を再度定義する貴重な経験ともなるが故に、シャアにもミネバ本人にも縁のあるガルマを演じた森氏の起用へと繋がった…のかもしれない。
また、本作でアンジェロ・ザウパーを演じた柿原徹也氏は後に『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』において彼の役を引き継ぎガルマを演じている。