概要
名はパールヴァタ(Parvata、山に属するもの)の女性形であり、そこからシヴァの神妃ウマー(雪山の娘)と同一視される。
五世紀の詩人カーリダーサは“王子の誕生”の一章においてパールヴァティの美しさを描写しており、世界の全ての美を一つの個体に集中させる為に彼女が生まれたと語られる。
パールヴァティはシヴァの妃の中でも母性愛、やさしさを象徴する存在で、カーリーやドゥルガーが血を求め殺戮をもたらし時にはシヴァを凌駕する恐ろしき存在なのに対して、彼女は常にシヴァに従順な妻という地位を保ち続けている。
パールヴァティはシヴァの最初の妻サティの生まれ変わりといわれ、ヒマラヤ山の神ヒマヴァットの娘として生まれた。
シヴァはサティの死によって苦行に打ち込むようになったが、この間に魔神ターラカが暴れまわり三界を混乱に陥らせた。インドラたち神々はブラフマーに魔神を討つことを依頼するが、彼は「毒の木(ターラカ)でも育ててから切るのは忍びない」と難色をしめして代わりに『シヴァとパールヴァティの子がターラカを滅ぼす』という予言を告げる。
それを聞いてインドラは瞑想に耽るシヴァの心をパールヴァティに向けさせる為、愛欲の神カーマにシヴァの胸に愛の矢を射るように依頼する。カーマはパールヴァティがシヴァに接近したところを狙って矢を放ち、一時は心を動揺させることに成功したが、すぐに看破されてシヴァの第三の目から放たれた炎によって灰にされてしまう。
そこでパールヴァティは自身もシヴァ同様に苦行を始めた(これにより彼女の浅黒い肌が黄金に輝くようになったといわれる)。
これに興味を持ったシヴァはバラモンの姿にやつしてパールヴァティの下に行き、彼女を試した。パールヴァティはバラモンに優しく接し、バラモンが川で溺れた際に彼女は“シヴァ以外の男性に触れてはならない”という誓いを棄てて助け上げた。
シヴァは本来の姿に戻ってパールヴァティに感謝し、彼女も誓いを破らずに済んだことを彼に感謝してついに両者は結ばれた。
シヴァとパールヴァティの仲の良さを表す話は多く、シヴァの第三の眼が開いたのはパールヴァティがふざけて修行中の彼の両目を覆ったことが発端とされる話。聖仙が突然訪問してパールヴァティを驚かせたことがあり、シヴァが彼女を慰める為に「予告なしに侵入した者は女の姿になる」と宣言した話がある。また、パールヴァティの彫像は多くの場合シヴァの隣に立つか膝の上に乗っている姿で形作られる。
第三の眼は、上記のとおり瞑想にふけってかまってくれない夫へのいたずらだったのだが、眼をふさいだ途端に世界が真っ暗闇になり、さらにその後にシヴァの額に第三の眼が出現してヒマヴァット山を眼から放った熱光線で焼いて再び世界を照らしたのだという。
また両者が合体した両性具有神アルダーナリシュヴァラが存在する。その成立の物語としてシヴァのみを崇拝する誓いを立てた聖仙に対して、パールヴァティが苦行に励んでシヴァとの完全な結合をし、聖仙から崇拝を得ることに成功するというものがある。
パールヴァティの子供にはガネーシャとスカンダ(カールッティケーヤ)がおり、特にガネーシャは彼女にまつわる話が多くある。
有名なものは、パールヴァティが己の垢からガネーシャを生み出し、入浴中の門番の役を告げたことからシヴァと一悶着を起こしたという話である。
ガネーシャが象の頭を得た理由の一つにパールヴァティに命じられて不幸と土星の神シャニが彼の顔を見た為だという逸話もある。シャニはガネーシャに不幸が訪れるのを防ごうとして顔を背けていたが、パールヴァティが無理矢理シャニをガネーシャの方に振り向かせ、その際にガネーシャの頭が灰になったという。
また先述されたシヴァとの一悶着からの延長線として、怒ったシヴァに頭を切り落とされたガネーシャを見て嘆くパールヴァティを慰め、彼を復活させるためにシヴァがたまたま付近を通りかかった(投げ飛ばした頭部を探しに旅をした際最初に会ったとも)象の頭を切り落とし代わりとしたとする話もある。
長々話したが、要は旦那さん大好きな天然ドジっ子奥さんである。
女神転生シリーズのパールヴァティ
初出作品はSFC「真・女神転生Ⅱ」。種族は“女神”。ヒマラヤ山の娘という設定に基づいてか、以降の作品では“地母神”種族の常連悪魔として登場する。
真・女神転生Ⅱのアルダーの特殊合体条件、真・女神転生Ⅲ・葛葉ライドウ対アバドン王の特殊会話、デジタルデビルサーガ2のピナーカ入手条件、ペルソナ3のミックスレイドなどシヴァとパールヴァティを関連付ける要素は複数見られる。
デザインはシリーズを通して「真・女神転生Ⅱ」に準じたものとなっているが、「魔神転生Ⅱ」では大胆にアレンジされた姿で登場する。