ガネーシャ
がねーしゃ
- 『ヒンドゥー教』、『インド神話』の神。本項で解説。
- 『アリス・ギア・アイギス』の登場人物兼志谷シタラが装着するアリスギア。
- 『女神転生シリーズ』に登場するキャラクター。⇒ガネーシャ(女神転生)
- 『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』に登場するキャラクター。⇒ガネーシャ(ダンまち)
- 『ドラゴンクエスト』シリーズに登場するパオームと同系統のモンスター。
- 『にゃんこ大戦争』のキャラクター。⇒繁栄神ガネーシャ
- 『ブラッディロア』のキャラクター。⇒ゴラン・ドラァン
- Fateシリーズに登場する神霊。⇒ガネーシャ(Fate)
- 『夢をかなえるゾウ』のキャラクター。主人公と対話する存在で、重要な役割を果たす。→ガネーシャ(夢をかなえるゾウ)
シヴァとパールヴァティーとの間に生まれた象の頭の神。学問と商売を司る。兄弟はスカンダ(地方や伝承によってどちらが兄かは異なる)。異母兄弟としてアイヤッパンがいる。
異名はヴィナーヤカ(無上)、ヴィグネーシュヴァラ(除障)、ガナパティ(群衆の主)、ナンディケーシュヴァラ。
腕の数と持物のパターンは複数あるが、代表例として四本の腕を持ち、斧と投げ縄、アンクーシャ(動物番組でも見かける象を御すための引掛け棒)という形式がある。騎獣は鼠。この鼠には「ムシカ」という固有名がある。
配偶神としてブッディ、シッディ、リッディの名が挙がり、このうちシッディともう一人が「二人の妻」として言及される事が多い。また、独身を貫いているという伝承もある。
シヴァの子である関係からシヴァ信仰の一部をなしてもいる。ヒンドゥー教には彼を至高の神と信じるガナパトヤ派という宗派も存在し『ガネーシャ・プラーナ』といった聖典を編纂した。
かつて西インドを中心に隆盛した宗派の人口の殆どはその後シヴァ派に吸収されたと見られているが、南インドには信徒のグループが残っているらしい。
スマールタ派では至高神の五つの相(ガネーシャ、ヴィシュヌ、シヴァ、デーヴィー、スーリヤ)の一つとされている。
神話においてはヴィヤーサの『マハーバーラタ』の執筆にも関わった。
草食動物であるゾウの頭を持つガネーシャはベジタリアン(菜食主義者)とみなされており、オーストラリアで彼が他宗教の神々や聖者と羊肉(牛肉と異なり、ヒンドゥー教徒は食べられる)を食べるCMが作られた際にはインドから抗議の声があがった。
伝統や地域によっては動物の生贄が捧げられる神であるが(Is the Hindu deity Ganesha considered vegetarian by Hindus?)、ネパールでの動物犠牲について言及した書物においても「インドにおいては潔癖な菜食主義の神(scrupulously vegetarian god)」と書かれる例がある。異国でも信徒コミュニティから批判が上がり、インド政府が相手国政府にも抗議する事から、菜食主義説が有力ということができる。
幸福・吉祥を司る神として、ラクシュミー、サラスヴァティーと共に祀られる事もある。
象頭の由来
諸説あるが、有名なのは以下の神話。
シヴァがいつものように修行に出かけてしまい、寂しく思ったパールヴァティーは入浴で自分の垢や汚れをかき集めて人形を作り、それに命を吹き込んでガネーシャを生み出した。
しばらくしてシヴァが帰宅すると、そこには見ず知らずの男(ガネーシャ)が立っており、家に入れることを拒んできた。ガネーシャは母・パールヴァティーの言いつけで入浴中の番を任されていただけなのだが、彼が自らの父親とは知らず、またシヴァも訳の分からない男に妻との再会を拒まれたことから激怒し、ガネーシャの首を刎ねて彼方へと放り投げてしまう。
騒ぎを聞きつけて来たパールヴァティーから事情を聴いたシヴァは、悲しむ妻のために首を放り投げたほうへ旅立ち、探し回ることにした。しかし首は一向に見つからず、仕方なく西に向かった際に最初に出会った象の首を刎ね、それを代用してガネーシャを復活させたという。
別の神話では、シヴァ夫妻はヴィシュヌに祈りを捧げてガネーシャを得たが、多くの神々が二人を祝福するなかでシャニ神(九曜神の一柱)だけは「見たものを破壊する」呪いに掛かっていたため、ガネーシャを見ようとせず俯いていた。それを見たパールヴァティーは遠慮せずに見てほしいとシャニにガネーシャの顔を見せ、結果ガネーシャの頭が破壊されてしまう。事態を知ったヴィシュヌはガルーダに乗って飛び去り、近くの川で寝ていた象の首を持ってきて取り付けてやったという経緯である。
またガネーシャは牙が片方だけ折れており、これも「シヴァの怒りを受けとめるためにわざと折らせた」「御輿から転げ落ちて折ってしまった」「夜道でこけたことをバカにした月に折って投げつけてやった」など、諸説存在する。
ヴァーハナ(騎獣)
鼠「ムシカ」に乗っている事がほとんどだが、ガネーシャが他の相をとる際にはライオン、馬、孔雀、シェーシャ(強大なナーガ)に乗る事もある。
後述のジャイナ教では鼠、象、亀、羊、孔雀が騎獣として描写される。
複数の姿
『ムドガラ・プラーナ』等では32の姿が言及される。持物だけでなく、体の色や腕の数も違うことから「相」「化身」と捉えてもいいのかもしれない。詳細はThirty-two forms of Ganeshaを参照。
仏教徒の間でもガネーシャには様々な姿があると考えられており、後述のタイの上座部仏教寺院ワット・サマーン・ラッタナーラーム寺院の巨大なピンク・ガネーシャ像の台座にも、肌色や持物が様々なガネーシャのレリーフが填めこまれている。
インド密教、チベット仏教でも宗派や行法ごとに様々な姿のガネーシャが祀られる(ガネーシャ5)。
家族関係
- 親:シヴァ、パールヴァティー
パールヴァティーが自身の垢からガネーシャを創造した説においてもシヴァは父神として扱われる。
- 兄弟:スカンダ
インド北部では兄、インド南部では弟。
- 異母兄弟:アイヤッパン
維持神ヴィシュヌが変身した美女モーヒニーとシヴァとの子。
- 妻:ブッディ(Buddhi「知性」「覚知」)、シッディ(Siddhi「成就」「達成」)、リッディ(Riddhi「繁栄」)
『ガネーシャ・プラーナ』『ムドガラ・プラーナ』ではシッディとブッディが妻、インド北部ではシッディとリッディが妻。
- 息子:クシェーマ(Kşema「平和」「安穏」)、ラーバ(Lābha、「利益」「獲得」)、スバ(Śubha「幸運」)
『シヴァ・プラーナ』ではクシェーマとラーバが息子。インド北部ではスバとラーバを息子とする伝承がある。
- 娘:サントーシー
1975年公開の映画『ジャイ・サントーシー・マー』ではリッディとシッディを妻とする説を採用し、ガネーシャとシッディとの間にサントーシーという娘が生まれたとする。彼女は神話・聖典・伝承に起源を持たないフィクションの神だが、ドゥルガーの化身とされ、実際に神像が作成され寺院で祀られるようになった。スバとラーバが兄弟とされる。
チベット仏教では観世音菩薩の化身とされる大黒天(ゴンプー)に両親同様降伏され護法神になったとされる。
チベットでは「ツォンダク(Tshogs bdag)」と呼ばれている。
上座部仏教の聖典であるパーリ三蔵には登場しないが、テーラワーダ文化圏でも信仰の対象となっている。タイ王国では「プラ・ピッカネート(พระพิฆเนศ、Phra Pikanet)」と呼ばれる。
ワット・サマーン・ラッタナーラーム寺院の巨大なピンク・ガネーシャ像は通常の3倍のスピードで願いを叶えると言われているが、日本人旅行者の間で生まれた俗説である。
別の伝統では十一面観音の化身である象頭の女神と抱き合う形で「歓喜天」(あるいは「聖天」とも)として信仰されており、日本でも有名である。
日本にもヒンドゥーのガネーシャ像に近い姿の単独の歓喜天像もある(ガネーシャ6)。
古代聖典には記述されないものの、商業神という性格から、商業に従事する人が多いジャイナ教徒のほとんどがガネーシャを信仰している。
15世紀頃にはガネーシャ像の設置にあたってのマニュアルが制作されている。
ガネーシャゾウ:古代ゾウステゴドンの一種。
ガネーシャエビル:『ドラゴンクエスト』シリーズに登場するナウマンボーグと同系統のモンスター。
金属器の精獣カーリ・ガネージャー:『デュエル・マスターズ』のカード。カーリー女神もモチーフ。
地響きサイマ獣ガネムージャ:『救急戦隊ゴーゴーファイブ』に登場する怪人。
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