概要
スラヴァ級ミサイル巡洋艦(Ракетный Крейсер Типа<<Слава>>)は、ソ連海軍およびロシア海軍の巡洋艦のクラス。ロシアでの正式名は1164計画型ロケット巡洋艦で、計画名『アトラーント』。カーラ級巡洋艦をベースに超音速対艦ミサイルを装備するなど対水上戦闘を重視した艦級である。1番艦の艦名は『栄光』を意味し、ソ連崩壊後1番艦の艦名が変更された現在でも「スラヴァ級」の名称は踏襲されている。
来歴
1960年~70年ごろ、ソ連海軍は対潜作戦を重視した艦を建造していたが、仮想敵であるアメリカ海軍空母機動部隊の脅威が高まったことを背景に、対艦攻撃能力に優れた水上戦闘艦を必要とするようになった。そこで、当時大型対潜艦として建造されていたカーラ級を基礎とし、対潜ミサイルに変わり、重対艦ミサイルを搭載するよう設計されたのがスラヴァ級である。優れた対艦・対空戦闘能力を持っており、空母機動部隊と対抗するための主戦力として認識されていた。ソ連崩壊後もその性能を買われ、旗艦として運用されることが多い。近代化改装が予定されており、しばらくの間は現役であると思われる。
設計
カーラ級を基本として、これを拡大させた上で、最高速度マッハ2.4・射程500kmを誇る大型対艦ミサイル「バザーリト(後に射程延長型の「ヴルガーン」に換装)」や、高性能なフォールト防空システムを搭載している。一方で対潜ミサイルは搭載しておらず、対潜能力はロシア艦としては高くない。機関にはガスタービンエンジンを採用しており、最高速力は32ノット。ただガスタービンに加え補助蒸気ボイラーを搭載した複雑なシステムを構築しており、整備性に問題があるという。
同型艦
1番艦「スラヴァ」(改名後モスクワ)
黒海艦隊旗艦。
2022年2月末より始まったロシアのウクライナ侵攻に従軍するなか、日本時間4月14日、本艦が重大な損傷を蒙ったとロシア政府より公表された(後述)。
2番艦「マーシャル・ウスチーノフ」
北方艦隊に所属していたが、
2014年現在では修理と近代化改修のため再びオーバーホール中。
3番艦「チェルヴォーナ・ウクライナ」(改名後ヴァリャーグ)
未完成に終わったアドミラル・クズネツォフ級2番艦(現中国人民解放海軍空母「遼寧」)の名を襲名。
太平洋艦隊旗艦。
4番艦「ウクライナ」
ソビエト最後のミサイル巡洋艦。
ウクライナの造船所で建造されていたが、進水に漕ぎ着けた所でソ連が崩壊。
2010年5月、ウクライナのヤヌコヴィッチ大統領が「ロシアが完成に協力してくれる」と発表。
5番艦「アドミラル・ゴルシコフ」
計画のみ。
6番艦「オクチャブリスカヤ・レヴォリューツィヤ」
計画のみ。
ウクライナ侵攻による「モスクワ」損失
ロシアによるウクライナ侵攻に置いて、スラヴァ級1番艦「モスクワ」(改名前「スラヴァ」)
は黒海艦隊の旗艦として従軍した。
4月13日、弾薬の爆発により重大な損傷を受け、総員退艦が命じられたことがロシア海軍から公式発表された。原因はロシアは火災によるもの、ウクライナはウクライナ軍の対艦ミサイル「ネプチューン」によって攻撃されたとしている。
翌日14日、ロシア国防省は「モスクワ」が弾薬の爆発による火災に見舞われた後、港への曳航中に船体の損傷が原因でバランスを崩し、荒波にもまれて沈没したと発表した。