はじまりのろくにん
はじまりのろくにん
『おしまいで海になった。
はじまりに海があった』
『ながれぼしがすぎたあと、
大地はみんな河になった』
これいじょうむかしはないほどの、
それはむかしのお話です。
ろくにんの妖精がそとにでると、
せかいは海になっていました。
土もなければ岩もない。
魚もいないし鳥もいない。
もちろん、ろくにんがだいすきだった
山も森も、もうありません。
ろくにんはとほうにくれて、
もうかえろうかとかなしみました。
“かわいそうなことを”
“こんなせかいになってしまって”
そんなとき、海のなかから おおきなかげが
たちあがりました。
ふわふわ、ふさふさの大きなからだ。
その肩には、いなくなったはずの動物ひとり。
肩にすわった動物は、このふさふさを
けるぬんのす、とよんでいました。
けるぬんのす と 動物 は、
ろくにん と ともだちになりました。
なにもない海はつまらなくて、
すみづらくて、たいへんなものでしたが、
けるぬんのす が 波をせきとめてくれるので、
ろくにんはらくちんです。
ただ、けるぬんのす は かみさま なので、
ささげものがひつようだと 動物はいいました。
ろくにんは けるぬんのす に
よろこびをささげました。
ろくにんは けるぬんのす に
おねがいをささげました。
“波のない海もいいけれど”
“ぼくたちやっぱり 大地が恋しい!”
ねがい は かなえられました。
おまつりは おわりました。
かみさまは つかれて ねむりました。
ろくにんは けるぬんのす を
たいせつにまつりました。
のこったものも たいせつに つかいました。
こうしてブリテンはできたのです。
はじまりのろくにん に すくいあれ。
概要
第六異聞帯の舞台となるブリテン島、その名も妖精國。そのはじまりとなった、風・土・牙・翅・鏡・雨の氏族長の先祖でもある原初の6翅の妖精達。
ブリテンが汎人類史とは違うルートを辿り、剪定事象——異聞帯となった原因と言えるキャラクターであり、また、ブリテンがなぜ人間ではなく妖精の世界になっているのかの答えでもある。
真相(重大なネタバレ)
ブリテン異聞帯の分岐点はセファールによる文明の蹂躪が起点なのだが、問題はセファールにどう対処するかではなく、セファールへの対処そのものができなかったことにある。
その原因を作ったのが、彼ら6翅の妖精たち。
この世界線では、飛来したセファールを打ち倒す為の聖剣を作る役目を、彼らが放棄してしまった。
聖剣とは星の外敵を滅する為になくてはならないものなのだが、それを「今回くらい遊んでも大丈夫だろう」と聖剣造りを放り投げてしまい、倒されなかったセファールによって地球の資源全てを押収され、一部の水生生物しか生きていない"無の海"だけが残された。
仕事はちょっとなまけるけども、ぼくらは自由な妖精の裔——とは言うものの、それは一世一代の大仕事であり、放棄した結果取り返しのつかない状況に陥ってしまった。「たった一度のサボタージュがきっかけで生まれた」のが、ブリテン異聞帯だったのである。
ただし、本章で判明した聖剣作成のプロセスを考えたうえで問題の本質をさらに突き詰めると、星の抑止力が「気分(運)次第で使命を放棄し、世界を私物化するような人格」の持ち主を大事の担い手として生み出すシステム自体にも問題はあったと言える。
実際、彼ら自体は汎人類史でも存在しているようだが、そちらでは聖剣作成の責務を全うしているものとみられる。
したがって、問題点の中核にして決定的な分岐点となったのは、"たまたま"生じた僅かなバグによって、彼らが強めの悪性を持ってしまった事である。
セファールに陸地を根こそぎ奪われた後、何かおかしいと思って妖精郷の外に出た彼らは、海だけになった地球で困り果ててしまう。
そこへ現れたのが、唯一妖精郷に逃げ延びていた「楽園の使者」こと獣神ケルヌンノスだった。
それいじょうむかしはないほどの、それはむかしのお話です
ろくにんの妖精がそとにでると、せかいは海になっていました
“かわいそうなことを”
“こんなせかいになってしまって”
海のなかからおおきなかげがたちあがりました
ふわふわ、ふさふさの大きなからだ
その肩には、いなくなったはずの動物ひとり
ケルヌンノスは、妖精たちを改心させるべく、自らの巫女と共に現れた。しかし、ケルヌンノスは元来穏やかな性格であったためか、この段階では、まだ彼らは罰を与えられていなかった。
ろくにんは神さまとともだちになりました
なにもない海はつまらなくて、すみずらくて、たいへんなものでしたが、
神さまがが波をせきとめてくれるので、ろくにんはらくちんです
“波の無い海も良いけど”
“ぼくたちやっぱり大地が恋しい!”
ろくにんは神さまによろこびをささげました
ろくにんは神さまにおねがいをささげました
ケルヌンノスが波がせき止めてくれたので、妖精たちは大喜び。
当初は彼らもケルヌンノスと巫女に感謝しており、後にケルヌンノスのためにお祭りを開くことを決めた。
ねがいはかなえられました
おまつりはおわりました
だまされてどくのお酒をのんだので神さまはしにました
ろくにんは神さまのしたいをてにいれました
あたらしいだいちにするのです
そう。祭りを開いた本当の目的は、口うるさいケルヌンノスを殺害し、その巨大な遺体を大地の代わりにすることだったのだ。
感謝していたはずのケルヌンノスを手にかけたのは、いつまでたっても大地が戻らないのが、ケルヌンノスのせいだと考えたためである。
さらに、ケルヌンノスと共に現れた巫女に対しても死なない魔法をかけ、生きながらに身体をバラバラにしてしまった。
のこされてなきさけぶ動物もたいせつにつかいました
たったひとりのにんげんなので。たったひとつではたりないので
ばらばらに。ばらばらに。しなないようにばらばらに
なにをしてもぜったいにしなないように。まほうをかけてたいせつにりようします
ケルヌンノスの死後、巫女を妖精が人間を作るための素にした。
これ以降、妖精國ブリテンに存在する人間は、彼女の細胞から造られた劣化コピーという事になる。
こうしてブリテンはできたのです。
こうしてあやまちははじまったのです。
はじまりのろくにんにすくいあれ
はじまりのろくにんにのろいあれ
亜鈴であった彼らは、様々な『仔』を生み出すことで自分の氏族を増やしていき、ブリテンは妖精で満たされた妖精郷となり、そしてケルヌンノスの遺体を大地として拡げていった。
しかし、100年目にして何かが狂い始めた。生み出した『仔』たちが何故か死んでいくのである。
死んでも"次代"の妖精が発生するため、妖精の全体数は減らず、妖精たちの死骸は"星の素材"となるため、それが積み上がって大地はさらに拡大していき、巫女のコピーである人間たちのおかげで文明も発達した。
だが、妖精たちだけは理由もわからないまま死んでいく。これが、妖精郷の大地が妖精の死体でできているというカラクリである。
妖精たちは、ケルヌンノスの怒りが原因であることにようやっと気付くと、妖精たちの屍によって広がった大地に逃げる形でケルヌンノスから離れ、自分たちの罪を隠すように急速に海を埋め立てた。
しかし、彼の怒りと呪いは消えること無く、遺体=後のブリテン島の大地に取り憑き、妖精によって生み出された倒木や水すらも寄せ付けない大穴として、女王歴が2017年目を迎えてなお燻り続けている。つまり大穴は本来は掘られた谷底ではなく、干上がった海の残滓なのである。
これらが原罪となり、『星の内海』の楽園に帰れなくなったブリテンの妖精たちは、自分たちで得た仮初の大地——罪の島ブリテンで厄災に脅かされながら苦しみ続ける事が唯一の贖罪となった。
塗りつぶされていたキャメロット正門の文言「罪なき者のみ通るがいい」とは、本来なら楽園(アヴァロン)への道のりを指しており、こちらは正門のそれと違い、罪あるすべての妖精にとって本当に通ることができない。
その後、1000年に一度起こる『大厄災』によって、妖精たちの国は必ず滅び、その時に“魂”に傷を負い、次代が現れることなく死んでいく妖精が出てくる。
さらに、妖精歴11000年の一度目の『大厄災』では、ついに、彼ら6翅のうち2翅が死んでしまう事態になった。
亜鈴であった彼らは、仔たちとは違い唯一無二の存在であったため、例え死んだとしても次代が生まれることはない。とはいえ、亜鈴級の力を持った先祖返りである「亜鈴返り」はその時から発生するようになった。
作中に出てくるウッドワスやムリアン、ノクナレアなどが、この亜鈴返りに分類される。
その真実を手前勝手に作り替えて埋め隠してなお、その傲慢さを本能として引き継いだ子孫であるブリテン異聞世界の妖精たちは、これらの歪みを糺す楽園の妖精を無意識に恐れるようになっていた。
そのため、「楽園の妖精」は妖精たちの本能で迫害され続け、やがては完全に愛想を尽かしてしまった。そんな妖精たちの目も当てられないほどの悪性は、善意や理性を理解せず、過去も未来も省みない、その場限りの衝動で人間も同族も平然と手にかける、と言った形で随所に現れ、多くのプレイヤーの不快感をこれでもかと煽り立てることとなった。
担当クリプターであったベリル・ガットは、そんな妖精國を「人助けを思うままに続ければ最終的に絶望するように出来ている」と評している。
むしろやってねーんだわ。