概要
富士山を噴火させ、ヴァンパイアの戦いを引き起こした怪物。作中では現王ゴア 、または狂王ゴアと呼ばれている。
太古の昔からこの世界を死と恐怖によって支配する正体不明の怪物であり、これまで幾度となく活火山の噴火とヴァンパイアの戦争を引き起こし、そして自身に反抗する者達をことごとく殺し尽くしてきた。
現代の戦争は数百年振りとなる王の座を賭けた戦いであり、長い時を超えて、ゴアは歴史の表舞台に現れることとなる。
人物
全てのヴァンパイアの始祖。
ヴァンパイアの戦いに勝利し、ゴアの心臓を得た者は、この世界の全てを支配する絶大な力を得るとされている。
人間の男のような姿をしているが、その正体は地球の中心から深海を超えて地上に出現した『何か』であり、人類を含めた全ての生物とは起源が全く異なる超越的な存在である。
人間に自身の力の一部を与え、ヴァンパイアに変える能力を持っており、現代においては日ノ元士郎 、ユーベン・ペンバートン 、そして正体不明の「4人目」を真祖として選び、彼らに自身に挑戦する資格を与えた。
かつてゴアは、ヨーロッパの古代国家において「王」として君臨しており、当時のゴアは民である人間達を愛し、儚い命で死を恐れず戦う人々と共に生きてきた。
やがて「世界を自分の望む形に変えたい」と願う理想を持った人間達に、眩いほどの輝きを見出したゴアは、人間に自身の王の座を明け渡すことを決意し、自身を殺す資格を持った人間が現れるのを「座して待つ」という約束を交わした。こうして人類とゴアの戦いの歴史は始まる。
ゴアは自身に挑む人間達と幾度となく戦ったが、永い時を経て、文明の発達と共に輝きを持った人間は次第に少なくなってゆき、ゴアは闘争心の薄れていく人間への関心を失っていくこととなる。
ゴアは人間の精神を直接的に知覚する、人間とは異なる特殊な感覚器官を有しており、人の持つ闘争心を『熱』、強い理想を『輝き』として捉えている。
また、こうした感覚を物質を通しても得ることが可能であり、自身が受けた核ミサイルの爆発を取るに足らない「冷たい炎」であると評している。
善の前に現れた際は、少年のような姿や口調で彼に語りかけているが、その姿や声は善の深層心理的なイメージを投影したものに過ぎない。
厳密に言えば、ゴアには現代の人間の言語を理解することができない。世界が「灰色」に埋もれて以降、ゴアは人の言葉を不快な響きとしてしか知覚することができなくなっており、過去には古代の人間と会話しているシーンもあるが、果たしてそれが言語的な会話であったのかどうかも定かではない。
唯一『輝く人』、すなわち真祖とは何らかの感覚的な繋がりを形成することができるものの、ゴア自身は彼らの思想を理解している訳ではなく、精神の強さを「輝き」として視覚的に認識しているのみである。
ゴアは「白」と「黒」のみで形作られた古代の世界を美しいものとして捉えており、「白」=善、「黒」=悪として捉え、「灰」の世界で生きる人間とは異なる俯瞰的な視点、超然的な価値観を持った存在であることが表現されている。
かつてのゴアは人々を守り、愛する偉大な王であったが、現代の人間にとってはただ死と恐怖を与えるだけの怪物でしかない。ドミノはゴアを『最低最悪のクズ』と評しており、現代においては、ゴアは全ての人類の敵と言っても差し支えない存在になり果てたのだと言える。
ただしゴア自身は、利己的な理由によって人々の命を弄んでいる訳ではなく、ただ「座して待つ」という古代の人類と交わした約束を守り続けているに過ぎない。そういった意味では、変わってしまったのはゴアではなく人類の方であるとも捉えることができる。
能力
その変身体は無数のコウモリで構成されたドラゴンそのものであり、その体躯は優に200mを超える。その耐久力、再生能力は尋常ではなく、気化爆弾や戦車による砲撃では傷一つ付かず、核ミサイルが着弾し、粉々になったとしても破片一つから数秒で完全再生するほど。この再生能力に彼の心臓の秘密が関係しているらしいが、詳細は不明。またその変身体の性質上、飛行も可能であり彼の居城であるポンペイの遺跡から日本まで僅か数時間で到着していた。
『火山操作』(正式名称不明)
彼の能力は『火山を操る』こと。もはや真祖を含めた今までのヴァンパイアたちの能力が霞むほど規格外の能力であり、天災そのもの。彼の息吹は噴火そのもので、彼の通った道は溶岩地帯となる。また、世界中の火山も操作可能であり、かつて自身に傅かなかったり、会談に参加しなかった者の国で噴火を起こしていた。(休火山であっても噴火させられる模様。)この理不尽とも言える能力によって、かつての戦いの勝者たちを返り討ちにしてきた。加えて、かつての戦いでゴアに挑んだ真祖たちは皆真祖3体分の力を得てから挑戦しており、つまり作中最強格であるユーベンの心臓を喰らった日ノ元よりも能力値が高かった者をダメージを負うことなく葬っており、どれだけ彼が強大な存在が知ることができる。
作中での描写
その姿が判明したのはかなり早く、第5話の時点でドミノの口からその存在が語られた。その際、あの人物 やこの人物 によく似た各国首脳たちが彼に平伏していた。
次の登場は第81話。ユーベンが真祖となった経緯を語った際にその名が明かされ、彼を真祖としていた。
その後の描写はほとんどないが、第152話にて日ノ元士郎を真祖にした経緯が判明し、そして第157話ドミノの回想シーンで彼女を打ち倒している姿が描かれた。
そして来る158話、遂にゴアという存在について詳細が語られる。
ーーー遥かな昔、ある国に彼は現れた。その時代は人間同士が戦争を繰り返す戦乱の世。彼もまたその姿を竜へと変えて戦いに参加、そしてその圧倒的な力から『王』と崇められた。死を恐れずに儚い命を燃やし、闘争心を燃え上がらせる人間たちを『美しい』と感じた彼は共に生きることを決め、永い年月王として君臨した。
そしてある日、御前に3人の者が彼の前に立ち、『自分たちも貴方のように世界を変えたい』と宣言。人間はここまで強く美しくなったのかと彼は感激。3人に自分に突き立てる牙を与え、自身の王たる力は心臓に宿ることを伝えると、火山を噴火させ兵を作り出した。(これが作中で繰り広げられる真祖同士の殺し合いのルーツである。)
ゴアは何度も何度も同じような戦いを繰り返して、その度に挑んでくる真祖を返り討ちにし続けた。そうして振り返った国には最早輝く人間たちは一人としておらず、民衆が腐って悍ましく見えた。だから彼は、国を滅ぼした。そうして世界を巡り新たな輝く人間を探しに飛び立ったのだ。
そうして2000年の年月が経ち、最後の戦いから数百年が経過し執り行われた今回の戦いも終幕が近付いていた。多くのイレギュラーを含んだこの戦いで最も大きなものはヴァンパイアではない人間たちからの攻撃だった。ヴァンパイア同士の殺し合いを無視し、自身に牙を剥いたことはゴアの定めたルールに反するものであり、ルール違反をした上でゴアからすれば「この程度」としか表現できないレベルの抵抗しか出来なかった事から、遂に彼は人類を見限り動き出す。
手始めに自身を討伐しに動いた軍隊を軽く息を吹き掛けるだけで全滅させ、ローマから日本へ向けて飛び立つ。その道中、通過した道全てを溶岩地帯へと変え何百万という一般人を虐殺。日本近海で撃ち込まれた核ミサイルで粉々に砕け散るが即座に再生、伊豆大島を通過し80億人いる人類のうち1億人を残して全てを壊すこと、そしてかつての美しい世界を再現することを宣言すると、伊豆付近の火山を噴火させる。
そうして、本作の最後の戦いが始まるのだったーー。
佐神善との関係性
佐神善とゴアはよく似ていると度々読者の間で考察されていた。具体的には
- 変身体に類似点が多い。
- 『コピー』という異質すぎる能力。
- 真祖たちすら怯ませる殺気。
- ゴアが出現する際の翼が善のものとかなり似ている。
- ドミネコから見た善の姿がまるでゴアのようである。
…など。
158話にて、善とゴアは等しい存在であること、そして善の前に度々姿を現す白い子供の正体はゴアであることが判明。また、王座に就く前のゴアの姿は善そのものであった。