佐神善
しんねんとけついのおとこ
「僕は、誰かの命を守る為だけに闘う。」
「ずっと見てきたからね。君でいいと思う。」
「誰にでもできる…!!!本当に…!!!頭に来ていれば…!!!」
富士山の麓の街で暮らしていたごく普通の高校生。
ヴァンパイアと化した狂人によって親友の狩野京介を殺害された事件を切っ掛けに、ヴァンパイアへと覚醒した。
ドミノによって暗躍するヴァンパイアの存在とその目的を告げられ、一人でも多くの人間の命を救うために、ドミノと共に血で血を洗う戦いに身を投じていく。
真面目で責任感が強く、内向的だが心優しい性格の持ち主。
容姿は中肉中背で黒色の短髪、まだあどけなさの残る顔立ちの青年。骨太でがっしりした体格をしている。
普段から人や物のことをよく見ており、些細な物事にもよく気づく優れた観察眼を持つ。
観察眼の延長で絵を描くのも得意で、一目見ただけの相手をさらさらと描いてしまう程だが、普段描いているのは抽象的で不気味な人間の顔ばかりである。
自宅は教会を経営しているが、父親は出張などで家を空けていることが多く、親子としての関係は希薄。
たまに夜の間に家の前に犬や猫が捨てられており、普段は自宅の庭で飼い主の居ないペット達の世話をしながら暮らしている。
上記通り、心優しく、善良な彼だが、一方で服のセンスは絶望的に悪く、制服以外では「Dog♡Nyan」や「Cat☆Wan」など、犬と猫を掛け合わせたような謎のマスコットがプリントされたシャツを好んで着ている。
ちなみにこのTシャツは、マンガワンSHOPにてグッズ販売されており、実際に購入することができる。
また料理の腕も最悪で、見た目は凡庸だが、料理を口にしたドミノは吹き出し、京児は表情が消え、七原は涙を流し、明は頭を抱えていた。
七原は「血生臭い泥かじったみてーだ… 鼻を刺激臭が抜けて… 苦い後味が口から消えねぇ…」と食レポしている。恐らくは動物用の食事ばかり作ってきたのが原因で、その証拠にドミネコ達の食いつきは異常に良い。(京児曰く、「畜生には好評」。)
一見すると素直で大人しい青年だが、その内面には自分の信念を決して曲げない強い意思を秘めており、やるべきことは人目を憚らず実行に移す行動力もある。
戦いにおいては「他人の命を守るためだけに戦う」ことを決意しており、自分の行動が善や悪で割り切ることのできない「キレイ事」であると自覚しながらも、必要とあらばどんな相手に対しても果敢に立ち向かう強い闘争心を見せる。
幼少期に命に係わる手術をしたことが現在の彼の精神性を形成する大きな要因となっており、「心の底から死にたくない」と感じた経験から、他人の命を何よりも尊重する優しさに芽生えたという。そのため、他者の命を蔑ろにする相手には強い怒りを示し、あるいはたとえ相手が残忍な殺人鬼であってもまずは対話によって相手を理解しようとする。
幼馴染であるシスカは善について、「灰色の世界の中で、真っ白い瞬間を探し続けている。」と語っており、その在り方はドミノの世界観とは対照的である。
基本的には殺し合いの場にそぐわない善良な人間であり、そんな彼の性質を知る周囲の人々から悪印象を持たれることはほとんど無い。しかしながら、その心の底にはどこか得体の知れない異常性を秘めていることが時折指摘されている。
彼は物事に対する洞察力が極めて優れた人間であり、善は時として高校生とは思えないほど客観的な視点から、物事を多面的に捉えることができる。一例として京児が「情報を得るため」と称して敵ヴァンパイアを拷問していた所で敵に止めを刺し、単に自分の欲求を満たすために敵を嬲っていたのを指摘しつつも「本気で情報を得たいなら別々の場所で喋らせて情報をすり合わせる必要がある」と説き、京児にその冷徹とも言える多面的な視点を面白がられた。
善の眼は自身の感情や周囲の状況に一切左右されず、些細な事も見逃さず、自分の思考を動かし続ける。これは「自分の見間違いのせいで人を死なせてしまった」という幼少期の彼のトラウマに起因しており、一見すると人間離れした性質だが、「どんな相手に対しても理解を見出そうとする」という点は、彼の人間らしい優しさの現れであるとも言える。
そして、いかなるときも揺らがないその観察眼の背後からは、自らの全ての敵を破壊し尽くそうとする常人離れした強靭な「闘争心」が顔を覗かせる。人間ならば誰しも持ちうる感情だが、ユーベン曰く、善の闘争心は質量ともに常人とは桁違いであり、「人間のそれとは別種」と言えるほどの激しい熱量を伴った感情であるという。
その「闘争心」は、善良な彼を悍ましい殺し合いへと向かわせる原動力となっており、作中では正気を失った状態でさえもドミノに立ち向かい、実力的には彼に勝るはずの京児や芭籐といった殺人者達が、善の存在に本能的な恐怖を感じ取るなど、その異常性の片鱗を垣間見せている。
その変身体はボロボロのマントを羽織った怪物のような姿。このマントは2~4枚の層状に分かれており、首元にはスカーフのような意匠があるほか、全身がハニカム構造の鱗のような模様に覆われている。また、変身すると髪が逆立ち、青色に変色する。
作中に登場するヴァンパイアの中では並外れた怪力とタフネスを兼ね備える。再生能力に関してはドミノを驚かせるほどであり、たとえ手足を失うほどの負傷であっても瞬く間に元通りにしてしまう。再生時にはコウモリの翼のような物が傷口を覆う。
再生力自体には上限があるものの、それに加えて鋭い洞察力、そして決して折れない闘争心が最大の武器であり、持ち前の観察眼によって戦闘中に相手を冷静に分析し、並み居る強敵達と渡り合っていく。
そして特筆すべきは、その殺気であり、人智を超えた怪物である真祖たちですら怯み、一瞬ではあるが動けなくなるほど。
『模倣(コピー)』
彼のヴァンパイアとしての固有能力。彼の能力は当初「高速再生」だと思われていたが、再生自体はすべてのヴァンパイアに共通する能力であり、いくら善が優れると言っても個人差に過ぎない。
真の能力は遺灰物を捕食することで、その持ち主の姿や能力を模倣(コピー)するという極めて異質なもの。状況に応じて変身形態を使い分ける臨機応変な戦い方を得意とする。ただし、「模倣はあくまで劣化コピー」「同時に再現できるのは1種類まで」「あくまで身体を真似るだけであり、電撃や加速のような能力そのものは模倣出来ない」「善が直接見た相手しか摸倣できない」という複数の制限がある。
作中で発揮した能力一覧
- 鳥型ヴァンパイアの翼
- 加納クレタの分裂体能力
- カメレオン型ヴァンパイアの棘
- 蜂型ヴァンパイアの毒針(暴走時)
- キノコ型ヴァンパイアの胞子(暴走時)
- 日ノ元家本隊員の索敵器官と盾
- 日ノ元家本隊員の砲台と剣
創血式とユーベン戦での暴走を経て変身体が変化し、能力も大幅に向上した。その変身体は肩回りがメタリックになり、全体がよりスマートになった。また能力も元の能力者の形状から、善のオリジナルに変化させることが可能になり、模倣の複数同時展開も可能になった。
『加納クレタのD・ナイト(コウモリマワール)✳︎』
彼の扱うD・ナイト。彼の能力は『模倣』であり、D・ナイトすら他者の模倣品である。しかし、オリジナルから独自の変化が加えられたものであり、実際、クレタのD・ナイトは広域殲滅に特化したものだったが、彼の場合は『常に対象を中心に旋回し、視界を完全に塞いだ上で攻撃を逸らす』という防御に徹したもの。その性能は初回の発現であったにもかかわらず完成しており、真祖2体分の力を得た日ノ元の攻撃をほぼ完封するほど。
✳︎命名は本人によるもの
そして………
「…行きましょう。先生…!」
南伊豆での決戦の後、堂島の心臓を喰らったことで彼の能力を得た上、身体能力も大幅に向上し遂に各陣営のNo.2に肩を並べる最強格のヴァンパイアの一人となった。その戦闘能力はこれまでとは比べ物にならないほど向上しており、『善を殺せないこと』、『主人を気遣い火力を控えていた』というハンデがあるとはいえ、あの火防を圧倒するほど。さらに堂島のD・ナイトである『日はまた昇る』も発動可能であり、タフネスさにさらに磨きがかかり真祖であるエデンとも短時間ではあるが対等に渡り合えるほどにまで成長した。
更に変化が進行するに連れて本来ならば一夜に一度しか使えないはずのD・ナイトを一晩の内に三連発するという驚異的な進化を見せるが…
〔この先物語の核心に迫るネタバレがあります!〕
その正体は佐神善という人間ではなく、その皮を被ったゴアと同種の超常生物。本物の佐神善は回想の海難事故で死亡しており、現在の彼は偽物である。
ゴアと同種と言っても、彼とゴアのスタンスは真逆であり、片や人間の命を守るために戦い、片や人間を見限り滅ぼそうとする。この違いは、善の中に人間としての心臓が脈打っているからであり、これはかつて堂島が行った治療に依るもの。
しかし、現在ではこのバランスも崩れつつあり、燦然党との決戦の後、死にかけたドミノを救うために発動した力によって自身のルーツを知り、ゴアとの交信が可能になった。そして超常生物としての心臓が活動し始めた影響か、日光に触れると身体が崩れるようになってしまった。このような特異性から、イレギュラーではあるものの、5人目の真祖として認められた。
しかし真祖化が進みD・ナイトを連射する等の進化を遂げるに連れて人間としての視点を失いつつあり、仲間を含む周囲の人間の声や姿が理解はできるものの異質に見えたり聞こえてしまうというまるでゴアのように人間を理解できなくなりつつある描写がある。
しかしそれでも現状、善は仮死状態のドミノを除けば唯一ゴアに対抗しうる存在であり、京児は「ボスの復活をエデンが断ったら、お前が全ての真祖の心臓を食ってゴアに挑め」と焚きつけられ、ドミノが残した言葉もあって最悪の場合、自身がゴアを倒し王になる決意を固める。
そして来たるエデン・ワイスとの決戦。ドミノ復活を要求する善たちと、それを拒むエデン。両者の思惑や信念、執着が交錯した戦いは七原の覚醒や、善の能力の更なる進化、京児の綿密なプランに軍配が上がり、見事エデンに勝利する。
絶体絶命の状況でもドミノへのレギオン使用を拒否するエデンを見て善は、彼女を殺し、自らが王になることを決断。しかしエデンの心臓を切り裂こうとした瞬間、頭上から志月の声が戦場に響く。
志月「剣を抜き!!戦闘を中止しろ!!断れば!!人質の命はない!!」
そして善の目に映ったのは、拳銃を突き付けられている繱シスカの姿。志月は戦闘を中止すればシスカと善たち全員の身の安全を保証すると約束するが、そもそもエデンは今まで彼の指示を全て無視して虐殺を行ったクズであり、彼自身も想定外の敗北に冷静さを欠いていた。志月の言葉に従えば、自分たちはシスカ諸共エデンに皆殺しにされることは目に見えていた。
要求を呑まない善に対して、志月はシスカの脚に発砲し、再度停戦を要求する。だがそれを見ても善の決意は揺らがなかった。自分がゴアを倒して王になり、かつての平和だった世界を実現すると叫ぶ。
……だが。
善にとっての平和な世界には、シスカの存在がなくてはならなかった。彼は、どこまで行ってもただの人間だったのだ。
結果、変身を解いた善はレギオンに全身を喰い千切られ、あれだけ苦労して追い詰めたエデンは全回復してしまう。しかしその瞬間、ゴアに干渉された善の身体から無数のコウモリの羽が吹き出し、戦場の全てを覆い尽くす。
「何故剣を下ろした?」
灰が降り積もる精神世界で、少年の姿のゴアは善に問い掛ける。善はイレギュラーではあるがゴアとの交信が可能は真祖であり、今までの真祖たちは決して理想を捨てることなく戦い続けた。再び現実世界に戻るための条件としてゴアは善に残る人の心臓、つまり人間としての心と視点を捨てることを迫る。大事なものだと躊躇する善だったが、仲間たちの心や、シスカの助けを求める声にゴアの条件を呑むことを決意。
だがその瞬間、灰ばかりの世界に光が灯る。その正体は、仮死状態ながらこの世界に取り込まれたドミノ。世界や仲間たちの現状を訴え、彼女に声は届いていない。そして善は彼女の視線の先にあったドミノの過去を目撃する。彼女が生きた戦乱の世界や、ドミノとエデンの因縁、ゴアとの因縁、そして迎えた悲惨な結末。その全てを理解し、涙を流す善にようやくドミノは気が付く。秘密にしていたかった過去を見られたことに対して、少し気恥ずかしそうにしながらも、ドミノは善に改めて後のことを託す。彼女はゴアに最も近いヴァンパイアである特性を利用し、この精神世界を破壊し人の心臓を捨てることなく善を現実に送り届けようとする。
しかし、
「今、君を救う方法が分かったよ。」
ゴアが真祖の力を譲渡しようとする場面を見たことで、同様の力を持つ善はそれを真似てドミノに自身の心臓を託す。彼女なら、かつての平和だった世界を実現してくれると信じて。
「僕の好きだった世界を、守ってくれ。」
さよなら
ドミノによってゴアの作った精神世界が崩壊したことで、戦場を包んでいたコウモリの花は消滅し、全員の拘束が解ける。そんな中、真っ直ぐドミノに牙を向くエデンだったが、彼女の前に善が立ち塞がる。迷うことなくエデンは彼の心臓を穿つが、
エデン「心臓が………ない…!?」
人間としての心臓を捨てた今の善は肉体構造すらゴアと同じになっており体内に心臓は存在していなかった。軽くエデンをあしらうと、善はシスカの元に移動する。善の姿を見て涙を流しながら叫ぶ彼女だったが、既に善は彼女の言葉すら分からず、瞳に映る彼女の姿すら曖昧なものになってしまっていた。善は涙を流しながら、短く彼女に別れを告げた。
「さよなら。」
そうして、第二の王が降臨した。
その姿は完全なドラゴンそのものだったゴアとは異なり、人に近い姿形をしているが、他のヴァンパイアよりはるかに巨大かつ強大。
その力は凄まじく、エデンの手で大量の灰遺物を食べさられた志月を片手間に潰す、レギオンと融合し、全力を出したエデンを無傷かつ能力なしで一蹴する、さらには地殻を操り、今まで捕食したヴァンパイアを再生させて兵士とするなど、文字通り規格外の力を持つ
これを目の当たりにしたゴアは両者の決着を待つことなく火口から姿を現す。こうして、最後の決戦が幕を開けるのだった。
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