「さあ、楽屋を後にしましょう。幕が上がり、神話が始まる。この!救世主(メシア)の!」
「グローリア。グローリア。」
概要
数百年ぶりに執り行われた、此度の『王の座を巡る戦い』。その終局にて存在が発覚したいるはずのない第四の真祖。ただ正確には、本来日ノ元士郎 、ユーベン・ペンバートン と肩を並べるはずだった人物であり、ドミノこそがイレギュラーである。
彼女の存在自体は物語中盤である南伊豆における決戦で日ノ元士郎の口から明かされていた。しかし、他の真祖とは異なり、部下を持つことも、戦いに参加することもなかったため、士郎からは「奴は何もせん。」と断言されていた。
しかし、彼女を除いた全ての王候補が脱落し、彼女の予想通り神が世界を滅亡へ導くために動き出したことで、彼女もようやく行動を起こした。
掲げる理想は『救世救民』。望む世界の形は『かつての美しい世界』。
自身を信奉する信者たちを部下として率いており、一般人、ヴァンパイアを問わず自らに従順な者を陣営に引き込んでいるという点が、他のどの組織とも異なっている。
人物
品行方正、温厚篤実を体現化したような人物で、常に慈愛に満ちた笑顔を浮かべ、迷える人々に優しい言葉で道を示す紛れもない聖女。
その人柄から、ゴアによる人類滅亡のカウントダウンが始まった世界では国すら超える支持を獲得しており、絶対的な発言権を有している。
その容姿は少し癖のある金髪に深緑色の月桂冠を装着した美少女であり、宣教師のような純白の衣装を身に付けている。
また、ユダヤ教徒であり、ドミネコによく似たシャペルという名の猫を連れている。
というのが表の顔。上記の聖女としての振る舞いは、あくまで対外的なものであり、信者を効率的に増やすためのペルソナ。
その本性はゴアを神と崇め、自身を救世主(メシア)と自称する狂信者。
現代人の闘志を持たない在り方を腐敗していると捉えており、その考え方、理想はあのゴアと全く同じであり、どこまでも現代人とは相容れないもの。彼女の掲げる『救世救民』という理想も、あくまで救うのは『かつての世界を生きた美しい人間』に近しい者だけであり、自身に従順な者には寛容だが、意にそぐわない行動を見せる者は例え一般人であっても容赦なく殺害するなど非常に独善的。
また、目的のためならば手段を選ばない一面もあり、作中ではドミノが身を削って行った全国での救命活動の成果を全て我が物にするという行動を平然とやってのけており、挙句の果てには一般人を肉壁にするために利用するなど、露悪的な手段すら躊躇いなく行使する。
さらには他の真祖と比べても卓越した煽動力を持っており、どこかで見たマイクパフォーマンスで民衆を死の恐怖で支配し、戦いのための駒にしていた。
他の真祖の例に漏れず特徴的な笑い方をしており、「ホッホッホ」と高笑いする。
ただし、彼女の言動はどこか小物臭く、自身の実力に絶対の自信を持ち、部下の進言も聞き流し、単純な陽動に引っかかるなど、組織のトップにしてはあまりに間抜けな一面が垣間見えており、どこか愛嬌のある姿から、京児からは「エデンちゃん」と呼ばれ、読者からも親しまれている。
彼女が王を巡る戦いに参加しなかった理由は、真祖の理想は人間の身に余るものであり、神に挑む前に死ぬと確信していたためであった。
いずれゴアが世界を滅ぼすことを予期しており、彼に人類の助命を訴え続けていた。そして、彼から滅ぼさずに残す1億人を選ぶ権利を勝ち取っている。
彼女は確かに真祖ではあるのだが、全ての真祖に出会ってきた佐神善によると彼女は他の真祖たちとは異なり、言葉の力強さも理想も決意も感じないらしく、本当に真祖なのかは疑問が残る。また、彼女は他の真祖たちとは大きく異なり、そもそも王になるという理想を持っていない。
それまでの真祖達が、一口に悪人だと言い切れない多面的な人物達であったのに対し、エデンは人としての器が無いシンプルな悪人と言える。
戦闘能力
その変身体は無数の羽を纏った機械仕掛けの人形のような姿で、頭上には漆黒の光輪を携えている。関節部分にはネジ巻き状の構造が発現しており、ここから連射型の砲撃や、禍々しい車輪、三日月状の斬撃、槍のような刺突を放出することが可能。
周囲に浮かぶ羽は螺旋状に凝縮させ、弾丸のように打ち出すことも可能であり、善の扱うクレタのD・ナイトを突き破るほどの貫通力を持つ。さらには耐久力も真祖に見合うものであり、明のD・ナイトの連射を受けてもほとんどダメージを受けないほどの頑強な肉体を有している。
他の真祖たちが黄金一色だったり、太陽の如く輝いていたり、異常なほど露出度が高かった中、かなりシンプルで質素なデザインである。しかしそのスペックは彼らに比肩するものであり、他の真祖と同じく圧倒的なステータス、威圧感を当たり前のように持っている。
作中での描写では、音もなく人間1人を血溜まりに変え、最強格のヴァンパイアに肩を並べる善を動くこともなく撃破し、かつてあの日ノ元士郎と交戦し引き分けるなどかなりの実力者。
『見えざる口』
その能力は、ドミノの『見えざる手』を殺戮に特化させたもので、上下左右からの挟み込みによって不可視の攻撃を行う。チャージすることで範囲攻撃も繰り出せるが、ドミノと同じく大技の精度は低い。
作中で、善の前に姿を現した際には、彼の手を操り強制的に握手させるなどし、戦闘中では善の肉体を骨だけ残して消し飛ばし、巨大なビルを捻り壊すなど真祖に相応しい圧倒的な破壊力を誇る。また、この能力はガードにも転用できる。
そして、この口から聖歌を歌うことで虎拳のような音系の攻撃の効果を軽減するという芸当も可能。
しかし、これまでの真祖が瀕死の状態であろうと最強格のヴァンパイアを圧倒していた中、エデンは善たちの徹底的な対策があったとはいえ彼らとの戦況は互角であり、これまでの真祖たちと比較するとやはり格落ち感が否めない。
最終国防兵器レギオン
厳密には彼女の能力ではないのだが、彼女の協力の元完成し、現在エデンが保有している人造兵器。その容姿はキューピットのようなものだが、その実態は人造ゴア。
普段は赤ん坊のような姿をしており、自身の能力の強化や、敵対者の殲滅、自身に反意を示した者への粛清など多くの用途で使用しており、事実上彼女の切り札となっている。
レギオン自体も、エデンを母のように慕っており、彼女の命令には忠実に従っている。ただし、完成直後であるためか、知能は低くエデンの命令を無視した行動も見られる。
ただし、上記の使用方法はあくまでのサブであり、その本来の使い道は真祖と一体化することで、彼らの全てのステータスを大幅に引き上げる切り札。特に再生力が押し上げられるようで、理論上はヴァンパイアの致命傷である心臓の傷すら修復可能。本来であればこの兵器を日ノ元に使用し、ゴアを殺す予定だった。
ただし、この兵器の運用には何かしらの代償が必要な様子。
さらには『龍人形態』という人型を保ちながら、レギオンの全性能を引き出す強化形態も有している。
活躍
初登場は108話。日ノ元士郎の口からその存在が仄めかされた。続く126話にて、葛との士郎の会話で天使のような姿と、彼女は何もしないことが明かされた。
そして第159話、ゴアが世界を滅ぼすために動いたことに笑みを浮かべており、彼女も本格的に行動を開始した。
第160話にて、『ゴア対策本部』に姿を現し、組織での立場を失った志月由弦に『最終国防兵器レギオン』を自身に委ねることと引き換えに日本だけはゴアから守ると取引を交わした。その後、各国の首脳をヴァンパイアの力で惨殺した志月を自身の手駒として加えることに成功。自らの神話を始めるべく民衆にビラを撒き、『救世主(メシア)』の存在を刷込んだ。
その間、彼女はゴアに謁見しており、その際5人目の真祖の存在を知り、全ての真祖の心臓を集めることをゴアに伝え去っていった。
その後、レギオンと自身の能力で日本全国の人間に自分は東京スカイタワーの前に降り立つことを宣伝。当日、前述のレギオンを使った火山灰の除去という何も知らない者から見れば奇跡にしか見えない芸当で日本政府すら超える確固たる支持を得ることに成功し、ドミノが身を削って行った善行の成果を奪い去った。。そしてこの際、並のヴァンパイア最強格である火防と京児を配下として従えていることが判明した。
民衆の前に降臨した後、先刻の行為を詰問する善をホテルに招くと、火防と京児を交えて彼と対談。自身の理想がゴアと同じく、『かつての美しい白と黒だけの世界の再誕』であること、そして1週間後にゴアが世界を滅ぼすことを明かした。しかし、この理想は早い話が『文明を捨てて、太古の昔のように闘争の世界に生きること』であり、善は『話にならない』と一蹴していた。
そして世界を救う方法はゴアに全ての真祖と善の心臓を差し出すことだと伝えるが、ここまで戦い続けた彼に敬意を表してゴアから善とその周りの人間を保護すると取引を持ち掛けるが善は真っ向からこれを拒否。ドミノに賭ける彼とは完全に袂を別つ結果となった。
交渉決裂した後は、火防と京児に善の確保を命じるが、堂島の心臓を喰らい、最強格の1人となった善は両者の包囲を突破。エデンに斬りかかるが、彼女は変身すらせずに彼を返り討ちに……したと思われたが、D・ナイト『陽はまた昇る』で不意を突かれ、左頬を斬りつけられる。ここで初めて殺意を露わにし、変身しようとするが直後京児が善を戦闘不能にしたことで矛を収めた。
善を確保した後、彼への拷問を京児に一任し、自身は信者たちへの演説を行う。しかし、命の危機に瀕したことで善が暴走。その様子を見て彼がゴアと同種であると確信。民衆の支持を得るという打算もありながらレギオンを用いて善を撃破。地に伏した彼を再び勧誘するも、京児、SATに紛れていた軍司、玄ノ進に強襲され、志月を確保された上で彼らを取り逃す。
その後は逃亡中の善たちにレギオン、火防を差し向けるが、善のD・ナイト3連発というイレギュラーによって再び取り逃すも、次は自身の手で彼らを決着を付けるべく動き出すのだった。
そして後日、彼女に救いを求めてタワーに集った数万の人間を目にし、彼女はため息と共に短く呟いた。
「これっぽっちか。」
聖女を騙る救世主の本性
タワーでの演説中、遂にエデンは自身の理想を民衆の前で打ち明ける。つまりは文明の全てを捨てて生きろと宣告。混乱し、彼女に反意を示した一般人を信徒を利用して殺害すると、民衆に死の恐怖を刻み付け、力強い言葉で民衆を扇動。エデンの敵の殲滅を要請し、未だに所在の掴めない善たちへと差し向けた。その目的は、彼らの捜索及び、戦闘時に肉壁にするため。(演説の際、ヴァンパイア同士の戦闘がどのようなものなのかは説明していない。)この動きは燦然党の作戦にも通ずる部分があるが、あちらで利用された一般人には何やら事情があったらしいが、エデンが差し向けたのは死にたくない、救われたいが一心の民衆であり、その悪質さは燦然党を遥かに上回る。
民衆たちの心を死の恐怖で掌握し、絶対の支持を獲得したエデンは満足げに演説を終える。
…ドミノ…アナタにこの光景を見せたかった。人の心など簡単に一つにできます。
猜疑、道徳、習慣、人の心を覆う灰、そのようなものは、死への恐怖の前では全て塗り潰される。
恐怖を、恐怖を恐怖を恐怖を恐怖を恐怖を恐怖を恐怖を恐怖を恐怖を恐怖を与え、育て、黒く塗り潰した世界と民の中で、唯一の救済の白き光であれば。
私が!女王様よ!
ドミノ、アナタは私より下。
その本性は世界も、ゴアも、民衆も、何もかもが眼中になく、ただドミノだけを追い求め、信奉するある種の限界オタク。しかし、ドミノへの感情は単純なものではなく、憧憬、憎悪、信仰心、野心が複雑に絡み合い、愛憎入り混じったものとなっている。
前述した理想も、望む世界の形さえも、ドミノの前では建前でしかなく、京児曰く、『ドミノ以外は眼中にない』らしい。
来たる善たちとの決戦。エデンは初手から彼女の標的であるドミノの居場所を晒すというあからさまな罠に火防、志月の制止を振り切り引っかかる。その上で玄ノ進の接続能力を用いて作り上げたフィールドで善、京児、軍司、立花、水波、七原、明、小向という現存する最強格のヴァンパイアたちと交戦を開始。
ただし、それでも真祖の力は圧倒的で、桜花一閃のピンボールを受けてなお健在で、レギオンの援護もありながら、彼らに対して優位を維持し続けていた。
そして遂にレギオンと融合することで彼らを一掃。そして王になると宣言した善を嘲笑うのだった。
「闘いの前に宣言されてましたよね。プッ。僕が…なんでしたっけ?」
レギオンによって強化された自身の能力を用いて善を圧倒し、D・ナイトの使用限界まで追い詰めると勝ちの盤面をより強固にするために自身を慕う無辜の信者を虐殺し、捕食。その光景を「グローリア」と絶賛しながら狂喜するのであった。
この光景を見た志月は愕然とし、あの火防ですら「どうやってゴアに選ばれたのか」と呆れ返っていた。志月もどの道民間人を犠牲にするのなら、士郎のように効果的に使うべきという精一杯の進言をするものの、「自分が日ノ元より下みたいだから嫌」という身勝手な理由から彼の進言を一蹴。増援に駆け付けた立花、七原もまとめて始末しようとするものの、この局面で七原がD・ナイトに覚醒。初めこそ攻撃力の低い彼を相手にレギオンの再生力で優位に立つものの、善から貸与えられた万物両断剣によって全身を切り刻まれることになる。
このことに激昂すると、遂にリミッターを全て解除し格下と侮ってきた彼らを相手に最後の切り札を切ることになる。
龍人形態となったことで獲得した日ノ元の熱障壁の強化版、無尽の再生力、超範囲の攻撃などでカス相手に負けるはずがないと確信するものの、七原の何の根拠もない下心100%かつ、それを全て伝える舐め切った表情筋によって激怒、全力で叩き潰そうとするものの、直前に立花の妨害によって七原の始末に失敗。彼女を一蹴するが直後、子鹿ミリのD・ナイト『再演』によって立花が再び『虎拳』を発動。本来あり得ない事態に直面したことによって動揺し、鏡面によって現れた京児、水波、明に対して肩からの連射を発動するが、この攻撃を鏡面によって反射するという芸当によって右手を除いた四肢を全て破壊される。この状態で分裂体による拘束や、『九龍』による拘束を受けた状態で眼前から『天から地へ』が迫る。この最大の危機に腹心であった志月と火防にD・ナイトによる加勢を求めるが片や対峙している軍司への対抗手段として、片や前述の彼女の凶行を目の当たりにした兵たちの同様による電算機器の不足によって事実上両者から見捨てられる。(この際、志月は『お前の所業のツケ』と憤激していた。)
最大出力の『天から地へ』を受けるものの、持ち前の耐久力やレギオンによる超耐久によってこれを耐えるが、直後に迫った万物両断剣を携えた立花、水波、明、善、京児を前に死の恐怖で絶叫。死力を尽くした彼らの全力を前に腹を貫かれ、遂にエデンは他に伏せることとなった。
ドミノとの関係
シャペルとドミネコ、変身後の姿や能力など、エデンとドミノには似通った点が多く見受けられる。エデンはドミノがまだ幼い頃に彼女と出会っており、『彼女のことはこの世界の誰よりもよく知っている』と語っている。実際にドミノがイレギュラーな真祖であることや、家族関係も把握していた。さらに、成長し、大人になったドミノの姿も知っていたようで、深い関わりがあった様子。ただし、どのような出来事があったのかは不明だが、『優しい人だった』と過去形で評していることから、両者の間には何らかの因縁がある模様。善曰く、『ドミノの話をする度に瞳に敵意が宿る』、『ドミノの復活を恐れている』。
また、この二人の在り方は正反対であり
- 悪魔のような姿と天使のような姿
- 人を愛する人間性と人を見下す人間性
- 本当の奇跡で民衆の支持を得たドミノと、人為的な奇跡で民衆の支持を得たエデン
以上のように彼女たちは似ているようで真逆の性質を有しているのである。そしてそれは、171話の内容で浮き彫りになった。
ドミノとの過去
エデンはドミノがまだヴァンパイアの真祖となる前、王国の王女として暮らしていた国で放火を疑われ、民衆から暴行されていた所をドミノによって助けられた少女であった。その疑いは嫌疑ではなく真実のものでありドミノも確信していたが、ドミノは同じ日に2人目の妹を失っていること、1人目の妹は育っていれば当時のエデンと同じ年頃であったこと、当時飼っていたドミサルが気に入った相手にしか行わない行為をしたことから、「自分の隣で学ばせ、教え、与えれば改心する小さな子供」とエデンの善性を信じて恩赦し、周りには自分の下僕と称し口には出さないがエデンのことを妹のように思いながら様々な外交、外遊を共にさせた。
そのような経緯から、エデンはかつてドミノに救われたことで、彼女の真似をしていると考えれば、彼女にドミノと似た要素が多いことにも納得ができる。
「ドミノ、ずっとアナタを見下ろしたかった。」
ドミノの教える、与えるという行為はエデンにとって一番高い所からものを言う、耳障りなものでしかなかった。幼い頃から野獣と暮らしていたエデンは、人間に打ち据えられて命乞いをした幼少期から、自分から全てを奪った人間が憎くてたまらなかった。
ドミノとの生活で人とは『理性と本能の獣』と悟り、ドミノを真祖にしたいゴアの甘言に乗せられるように、身に着けた外交力から国を滅ぼす扇動を行い、招き入れた敵国の兵士にドミノの両親、国王と王妃を殺害させてしまう。
また、その際に現れたゴアによって国民のヴァンパイア化が始まり、ヴァンパイアとなった国民とならなかった国民の諍いが勃発し混乱する国を、新たな女王として奔走していたドミノを拘束、エデンは自身もヴァンパイア化したこと披露し、題目の発言を行った。
国が滅ぶ様を見せつける矢先、ヴァンパイアの能力が発現したドミノに圧倒され、仕留められる直前ドミノに対して、
「私は獣として生きたかった!独裁者!!私はアナタの人形じゃない!!!」
と本音を叫び、手を止めたドミノの死角から攻撃、気絶させ、その場を立ち去った。ドミノがエデンのことを本当の妹のように思う気持ちは、エデンに伝わることはなかった。
真祖の変身体はその人物の本質と反転したものになるという特徴が見受けられ、彼女の場合は「人の形をした獣」或いは「自由を欲する人形」と思われる。
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*ネタバレ注意!!*
聖女を追い求めた獣の末路
第二のゴアとして覚醒した善に完膚なきまでに叩きのめされた彼女は怪物同士の決戦の中、自称していた主役(プリマ)とは程遠い蚊帳の外の存在になってしまう。
そんな中で恐れていたドミノの復活を受けて、レギオンと共にその場から逃亡を図ろうとする。
「………………どこへ?」
だが自尊心も力も、何もかもを失った彼女に残された選択肢は最早自分の死に方だけであった。それでも尚彼女に縋り付くレギオンに何かを言い聞かせると、エデンはドミノの眼前に立ち塞がる。
「さぞや後悔しているのでしょうね!あの時、手を伸ばさなければと!」
エデンは両親を殺す手引きをし、国を滅ぼす引き金を引き、数多の無辜の民を大勢殺した自分を助けたことを後悔しているかをドミノに問うが、それでも尚ドミノはエデンを救ったことを後悔せず、彼女が道を誤ったことは正しく導かなかった自分の責任だと語り、そのケジメとしてエデンを殺すことを宣言する。
「アナタを見るのが怖い。私を見るアナタを見るのが…。なのに目を閉じられない。
そう…私は確かめたかった…もう一度アナタに会って…」
エデンの根底にあったのは、自分と同じようにドミノの全てを奪い、かつての自分と同じ獣に堕とすこと。だが彼女の目論見とは大きく外れ、どんな時でもドミノの優しさは出会った時と変わらなかった。
悠然と階段を登って来るドミノを見ながら、エデンはドミノが自分をどのように見つめるかという恐怖に震えていた。しかし、
「何よ…ずっと優しいのね。アナタは。」
ドミノの双眸からは、涙が溢れていた。
女王としてエデンを罰するドミノと、自分の生きたいように生きたエデンはかつての奴隷と女王という関係ではなく、対等な真祖として向かい合う。互いの能力を発動し、ぶつけ合うその直前にエデンは自身の心臓を穿った。戦って勝ち目がないと理解していたエデンはせめてドミノの思い通りになるまいと、彼女が最後まで否定した自分の真祖としての証明である心臓を見せ付けると、地面に倒れ伏した。
エデンからすれば、勝ち逃げの意味を持っていたこの行為だが、ドミノからすれば結果的に最後に残った肉親とも呼べる存在を直接殺さずに手を下さずに済んだ。この光景を前に、ドミノもかつて言えなかった本心を溢す。
ドミノ「何よ……最後の最後まで……バカな……妹。」
*さらなるネタバレ注意!!*
自ら自害したエデンであったが、今際の際にドミノの妹という言葉を聞いたことで…
「姉さん」
これまでドミノに対しても羨望と嫉妬、愛憎入り混じった感情を向けながらも変わらない優しさと言葉を受けたことで、涙を流しながら初めてドミノを姉と呼び、己の心臓をドミノに譲り灰へと還っていった…。
決して互いの思いが伝わること無く相容れること無くすれ違い続けた姉妹は最後の最後で本当の家族となれたのかもしれない…。
そしてエデンの心臓と能力はドミノに受け継がれ、かつての戦友であるユーベンや宿敵であった日ノ元同様に、その遺志はドミノを支え、全ての元凶たるゴアとの決戦の際にはドミノはエデンより受け継いだ十字の光線によってゴアに手傷を負わせるのだった。