ゴア(血と灰の女王)
ごあ
「座して待つ。」
富士山を噴火させ、ヴァンパイアの戦いを引き起こした怪物。作中では『現王』あるいは『狂王』の異名で呼ばれる。 本作における戦いの全ての元凶とも呼べる存在。
太古の昔からこの世界を死と恐怖によって支配する正体不明の存在であり、これまで幾度となく火山噴火とヴァンパイアの戦争を引き起こし、自身に反抗する者達をことごとく殺し尽くしてきた。
現代の戦争は数百年振りとなる王の座を賭けた戦いであり、永い時を超えて、ゴアは再び歴史の表舞台に現れることとなる。
全てのヴァンパイアの始祖。ヴァンパイアの戦いに勝利し、ゴアの心臓を得た者は、この世界の全てを支配する絶大な力を得るとされている。
人間に自身の力の一部を与え、ヴァンパイアに変える能力を持ち、現代においては日ノ元士郎 、ユーベン・ペンバートン 、エデン・ワイスを真祖として選出し、彼らに自身に挑戦する資格を与えた。
外見は人間の男のようにも見えるが、その正体はヴァンパイアや真祖をも超える正真正銘の化け物であり、現代から2000年前、地球の中心から深海を超えて突如として地上に現れた、現存する全ての生物とは全く異なる起源を持つ超常的な生命体である。
作品世界においては、一握りの権力者にしかその存在を知られておらず、年に一度、イタリアの古代遺跡・ポンペイにおいて、各国の首脳がゴアに自国の情勢を報告する会議が開催される。
ヴァンパイアの戦争は、世界規模の情報統制によって隠蔽されているが、これはゴアの意志ではなく、ゴアの存在が明るみに出ることを恐れた各国の上層部の思惑によるものである。
ここまでであれば、現在は無害な存在にも見えるが、根本的な問題として ゴアは人間には理解できない。己の価値観に準じた理不尽とも思える行動によって、遥か昔から幾度となく大量殺戮を引き起こしてきた。
ドミノは、憎悪を込めてゴアを『最低最悪のクズ』と呼んでおり、全ての人間に対して無差別に死と恐怖を与えるゴアは、この世界における絶対的な悪、全ての人類の敵と言って差し支えない。
しかしその一方で、ゴアは身体構造、思考回路共に人類とは一線を画した知的生物であり、人間の定めた善や悪では推し測ることができない存在であるとも言える。
ゴアは人間の精神を直接的に知覚することが可能であり、人間とは異なる感覚機能を有しており、人の持つ闘争心を『熱』、理想の強さを『輝き』として知覚している。
ゴアは地球上のどこにいても『輝き』を放つ人間を特定することができ、この能力の一部は「互いの気配を察知する』等の形で真祖達にも受け継がれている。
また、こうした感覚は物質を通しても得ることが可能であり、核ミサイルの爆発を身に受けた際は、その攻撃を自身を殺すには至らない「冷たい炎」であると評している。
佐神善の前に初めて姿を現した際は、少年のような姿や口調で彼に語りかけているが、その姿や声は善の深層心理的なイメージを投影したものに過ぎない。
厳密に言えば、ゴアは現代の人間の言語を理解しておらず、世界が曖昧な「灰」に埋もれて以降、人の言葉を不快な音の響きとしてしか知覚していない。
過去の回想では、古代の人間と会話するシーンがあるが、果たしてそれが言語的な会話であったのかどうかも定かではない。
唯一 『輝く人』、すなわち真祖とは何らかの感覚的な繋がりを形成することができるものの、ゴア自身は彼らの思想を理解している訳ではなく、精神の強さを『輝き』として感覚的に認識しているのみである。
ゴアと人間の間での一般的な意味でのコミュニケーションは不可能に近いものの、その一方で、ゴアは遥か昔に死んだ人間達と交わした約束を守り続ける知性を持っている。
2000年前の時代、ゴアはかつて存在した西欧の古代国家の王として君臨していた。
人々は圧倒的な力を持つゴアを「王」と崇め称え、ゴアもまた、生きるために死を恐れず戦う人々を「民」として愛していた。
作品を通して、現代社会が「灰」色によって表現されるのに対し、回想の中の古代社会、ゴアの目に映る世界は、「白」と「黒」のみで形作られていた。
文明が未成熟の古代社会においては、人は生きるために限られた資源を奪い合わなければならず、かつての人々の熾烈な生存競争の裏には、人がただ生きるためだけに戦うというシンプルで合理的な秩序があったのだと言える。
こうした古代人やゴアの「生きるために戦う」という行動原理は、佐神善の「誰かの命を守るために戦う」という信念と対比的なものとして描かれており、ゴアの思想や価値観は、現代人とは決定的に相容れることができないものであることが表現されている。
これまでゴアが人類を滅ぼしていなかったのは、古代の人間達と交わした約束、種としての人類との契約に基づき、自身を殺すことができる人間が現れるのを待ち続けていたためである。
しかし長い年月の中で、ゴアは人間が闘争の本質を見失っていく様子、人が「腐り果てていく」様を見続け、その結果として、ついには現代文明を滅ぼすことを決断するに至ったのである。
善を吸収してからは善と酷似した姿と豊かな喜怒哀楽を獲得し、これまでとは打って変わってドミノに対して饒舌に話すようになり、その上でドミノや現在の人々の存在を否定しつつ、これまで古の時代に自身に挑んできた真祖達や人間達に対して敬意を払っており、一度として油断も手加減もすることなく命の危機を感じながら戦ったと豪語し、自身に致命傷を与えかけて挑発するドミノにそれらの心情と覚悟を語りながら怒りを向けるなど、かつて多くの人々が崇め、ユーベンが称したように「偉大な王」と呼ばれるだけの王としての器の持ち主でもある。
しかし、決定的な問題は、その死生観や世界観が現代人とは完璧に相容れないことにある。また、後述の自身のヴァンパイアとしての能力の名前に古代の人々が名付けた名前を使用し続けるなど、かつて愛した民達自体への想いは未だに健在である模様。ドミノ曰く「懐古主義者」。
一方で、唯一の同族と言える善から見た彼の本質は「ただの子供」。自分の好きなものを選り分けて嫌いなものは理解せず暴力で排除し、他人の都合も迷惑も考えずやりたいようにやって好き放題に振る舞う割に、孤独を嫌い他人からの理解を求める。規格の違う人間ならばともかく、同族である善から見ればその有様は「やりたい放題の子供」としか映らないのも致し方ないといえる。
その変身体は無数のコウモリで構成されたドラゴンそのものであり、その体躯は優に200mを超える。その耐久力、再生能力は尋常ではなく、気化爆弾や戦車による砲撃では傷一つ付かず、核ミサイルが着弾し、粉々になったとしても破片一つから数秒で完全再生するほど。この再生能力に彼の心臓の秘密が関係しているらしいが、詳細は不明。またその変身体の性質上、飛行も可能であり彼の居城であるポンペイの遺跡から日本まで僅か数時間で到着していた。
ヴェスヴィオ
彼の能力は『火山操作』。もはや真祖を含めた今までのヴァンパイアたちの能力が霞むほど規格外の能力であり、天災そのもの。彼の息吹は噴火そのもので、彼の通った道は溶岩地帯となる。また、世界中の火山も操作可能であり、かつて自身に傅かなかったり、会談に参加しなかった者の国で噴火を起こしていた。(休火山であっても噴火させられる模様。)この理不尽とも言える能力によって、かつての戦いの勝者たちを返り討ちにしてきた。加えて、かつての戦いでゴアに挑んだ真祖たちは皆真祖3体分の力を得てから挑戦しており、つまり作中最強格であるユーベンの心臓を喰らった日ノ元よりも能力値が高かった者をダメージを負うことなく葬っており、どれだけ彼が強大な存在が知ることができる。
その不死の秘密はゴアの心臓は体内には存在せず、別の場所にある事。そしてゴアに見せられた過去の真祖達の戦いの記憶と、ユーベンの心臓を喰らった事で知覚能力が拡張された経験から、日ノ元は真祖3人分の力を得た者ならばその在処がわかると推察しており、即ち真祖3人分の力を得ることで初めてゴアと戦うステージに上がることができるのである。
ヴェスヴィオという名はまだゴア自身の王国が存在していた頃に人々に名付けられた名称であり、本人も気に入っている模様。
その姿が判明したのはかなり早く、第5話の時点でドミノの口からその存在が語られた。その際、あの人物 やこの人物 によく似た各国首脳たちが彼に平伏していた。
次の登場は第81話。ユーベンが真祖となった経緯を語った際にその名が明かされ、彼を真祖としていた。
その後の描写はほとんどないが、第152話にて日ノ元士郎を真祖にした経緯が判明し、そして第157話ドミノの回想シーンで彼女を打ち倒している姿が描かれた。
そして来る158話、遂にゴアという存在について詳細が語られる。
ーーー遥かな昔、ある国に彼は現れた。その時代は人間同士が戦争を繰り返す戦乱の世。彼もまたその姿を竜へと変えて戦いに参加、そしてその圧倒的な力から『王』と崇められた。死を恐れずに儚い命を燃やし、闘争心を燃え上がらせる人間たちを『美しい』と感じた彼は共に生きることを決め、永い年月王として君臨した。
そしてある日、御前に3人の者が彼の前に立ち、『自分たちも貴方のように世界を変えたい』と宣言。人間はここまで強く美しくなったのかと彼は感激。3人に自分に突き立てる牙を与え、自身の王たる力は心臓に宿ることを伝えると、火山を噴火させ兵を作り出した。(これが作中で繰り広げられる真祖同士の殺し合いのルーツである。)
ゴアは何度も何度も同じような戦いを繰り返して、その度に挑んでくる真祖を返り討ちにし続けた。そうして振り返った国には最早輝く人間たちは一人としておらず、民衆が腐って悍ましく見えた。だから彼は、国を滅ぼした。そうして世界を巡り新たな輝く人間を探しに飛び立ったのだ。
そうして2000年の年月が経ち、最後の戦いから数百年が経過し執り行われた今回の戦いも終幕が近付いていた。多くのイレギュラーを含んだこの戦いで最も大きなものはヴァンパイアではない人間たちからの攻撃だった。ヴァンパイア同士の殺し合いを無視し、自身に牙を剥いたことはゴアの定めたルールに反するものであり、ルール違反をした上でゴアからすれば「この程度」としか表現できないレベルの抵抗しか出来なかった事から、遂に彼は人類を見限り動き出す。
手始めに自身を討伐しに動いた軍隊を軽く息を吹き掛けるだけで全滅させ、ローマから日本へ向けて飛び立つ。その道中、通過した道全てを溶岩地帯へと変え何百万という一般人を虐殺。日本近海で撃ち込まれた核ミサイルで粉々に砕け散るが即座に再生、伊豆大島を通過し80億人いる人類のうち1億人を残して全てを壊すこと、そしてかつての美しい世界を再現することを宣言すると、伊豆付近の火山を噴火させる。
そうして、本作の最後の戦いが始まるのだったーー。
佐神善とゴアはよく似ていると度々読者の間で考察されていた。具体的には
- 変身体に類似点が多い。
- 『コピー』という異質すぎる能力。
- 真祖たちすら怯ませる殺気。
- ゴアが出現する際の翼が善のものとかなり似ている。
- ドミネコから見た善の姿がまるでゴアのようである。
…など。
158話にて、善とゴアは等しい存在であること、そして善の前に度々姿を現す白い子供の正体はゴアであることが判明。また、王座に就く前のゴアの姿は善そのものであった。
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「ある重要な一つのテーマ」
・恐らく第197話更新直後、第197話を元に書いたものだが、内容のいくつかは過去の考察から引っ張ってきていると思われる。 ・思想が強すぎ、かっこつけすぎ、動画でやるにはつまらなそう、とかの理由でボツになった…と思う?あまりよく覚えていない。6,440文字pixiv小説作品