概要
ブドウ科ツタ属の植物は、アジアから北アメリカにかけて13種が分布する。すべて落葉性木本である。
日本にはツタのみが自生する。「フユヅタ」の名がある常緑のキヅタ(ウコギ科)に対してナツヅタとも呼ばれた。
巻きつるが吸盤に変化するのが特徴で、建物や擁壁の壁面などに吸盤で密着し、体を固定しながら壁面を登る。冬は葉が落ちるため壁に張り付く枝の姿があらわになる。
日本で壁面緑化用に用いられるのは多くがツタだが、北米原産のアメリカヅタ(バージニアクリーパー、レッドウォールとも)もパーゴラや鉢植えされる観葉植物として導入されている。
アイビーと蔦
英語のアイビー(ivy)は本来、ウコギ科のキヅタを指すが、このツタ属のツタ(Boston Ivy)やアメリカヅタ(five-leaved ivy)もそう呼ばれるようになった。ポイズン・アイビーはウルシ科ウルシ属で、ツタ属とは近縁ではない。
建物と蔦
ツタ属植物(ツタやアメリカヅタなど)は石造やレンガの建物の壁を覆う壁面緑化植物としてよく利用されている。見た目以外に、壁面を日差しから遮り、夏場の冷房費などを節約することができる。アイビーと違い冬は葉を落とすので、この目的にはよく適っている。
しかし、ツタを外壁に這わせるのはデメリットも多い。ツタが繁茂した状態では外壁の塗り替えなどのメンテナンスができないし、剥がしても吸盤の跡が残ってしまうからである。
よってツタを壁に直接這わせるのは、頻繁なメンテナンスの不要な石造や鉄筋コンクリート造やレンガづくりの建物に限られるが、鉄筋コンクリートの外壁にツタを這わせるのも耐久性の面ではあまりおすすめできない。
木造や鉄筋の建物などにツタを組み合わせる場合は、壁面にネットやワイヤーを張ってそこにツタを絡ませるとよい。