概要
USB(ユーエスビー、Universal Serial Bus: ユニバーサル・シリアル・バス)は、USBインプリメンターズ・フォーラム(USB-IF)の商標で、コンピューターに周辺機器を接続するためのシリアルバス規格である。
同団体はUSB規格の策定を行うほか、機器同士の互換性の認定テストに合格した製品に認定マークを付与している。しかし、USB-IFが認定していない多くの派生規格や独自拡張も出回っている。
原則としてパソコンなどの「ホスト」機器と、周辺機器などの「デバイス」と呼ばれる機器間でUSBケーブルを通じてデータをやりとりするが、USB Type-Cでデバイス同士の接続に対応した。
規格名 | 現在の仕様名 | 最大通信速度 | 電力 | ケーブル長 | 端子 | 備考 | 旧通称 |
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USB 1.0 | USB 1.0 | 12Mbps | 5V 0.5A | A、B | 電源仕様の曖昧さにより接触不良などの問題が多発 | 1.5Mbpsの場合は、Low Speed、12Gbpsの場合は、Full Speed | |
USB 1.1 | USB 1.1 | 12Mbps | 5V 0.5A | A、B、miniA、MiniB | 電源仕様を厳密化。普及初期の規格 | 1.5Mbpsの場合は、Low Speed、12Gbpsの場合は、Full Speed | |
USB 2.0 | USB 2.0 | 480Mbps | 5V 0.5A※1 | 5m | A、B、miniA、MiniB、Micro USB、Type-C | ※端子が黒い。電気仕様をより厳格化 | High Speed |
USB 3.0 | USB 3.2 Gen1 | 5Gbps | 5V 0.9A※1 | 3m | A、B、MicroUSB、Type-C | ※端子が青い。仕様名がUSB 3.1 Gen 1に改名された後、USB 3.2 Gen1×1として再改名 | Super Speed |
USB 3.1 | USB 3.2 Gen2 | 10Gbps | 5V 0.9A※1 | 1m | A、B、MicroUSB、Type-C | USB Power Delivery(PD)規格が採用された。USB 3.1 Gen 2に改名された後、USB 3.2 Gen2×1として再改名 | Super Speed+ |
USB 3.2 | USB 3.2 Gen 2×2 | 20Gbps | 5V 3A※2 | 1m | Type-Cのみ | 10Gbps出るものは、USB 3.2 Gen 1×2、20Gbps出るものは、USB 3.2 Gen 2×2と名付けられた | なし |
USB4 Version 1.0 | 40Gbps | 48V 5A※2 | 0.8m | Type-Cのみ | Thunderbolt3準拠。映像出力に対応。PD規格への対応が必須化。シングルレーンで20Gbps出るものはUSB4 Gen3×1、デュアルレーンで40Gbps出るものはUSB4 Gen3×2と名付けられた。USB4 Version 1.0に改名 | なし | |
USB4 Version 2.0 | 80Gbps(最大120Gbps※3) | まだ製品などは出回っていない | なし |
※1 A端子の場合。端子の色はあくまでも推奨なので、Apple製品などデザイン性を重視する製品はこの限りでない。Type-Cでは規格上は最大100Wまでの電力供給が可能とされているが、供給可能な電力は機器によって異なる。
※2 USB PD EPRに対応した場合
※3 非常に高性能なUSB4ベースのディスプレイを駆動するといった特定の用途でのオプションとして、USB Type-C信号インターフェースを非対称に構成すれば、一方向で最大120Gbpsを実現できる。
USBのデータ転送はホスト機器のCPUに依存するので、CPUが大量の処理を抱えている時にはこれより大幅に通信速度が遅くなる。USB3.0(後のUSB 3.1、USB3.2を包含してUSB3.x)ではビットレートの増加に伴いUSB3.x通信専用信号線が追加されているが、できる限りUSB2.0以前と互換性を取るように設計されている。
USBの従来規格(レガシーインターフェース)と比べた利点は次の通り。
- 規格を統一することで規格乱立・規格戦争を終結させると共に低コスト化の実現
- ホットプラグ可能(通電状態での抜き差しが可能)
- ホスト機器からの(比較的大きな)電力供給
- 端子自身にデバイス・クラスが定義されている
デバイス・クラスとは細かい話は省くが、「私はUSBメモリだ」「私はマウスだ」などのように事前に大雑把な機器のカテゴリーを定めておく事で認識を短縮する機能である。コンピューターがハードウェアを制御するにはデバイスドライバが必要であるが、デバイス・クラスが定義された事でOSにデバイス・クラスに対応した汎用デバイスドライバを同梱する事で「繋げばすぐ使える」のが当たり前になったのである。当然このデバイス・クラスには「私は汎用デバイスではない。専用のドライバが必要」と定義することも可能になっている。
電源いれっ放しで抜き差し(活線挿抜)できるという利点があり、また同様の機能を持つIEEE1394と比較しても周辺機器の価格が安価にできるため、USB 3.0以降は電源供給とディスプレイ接続を除くPC周辺機器の接続はほぼこの規格で統一されている。さらにUSB Type-CではUSB Power Delivery (USB PD)を標準で取り込み電力供給機能を大幅に強化した上、DisplayPort、HDMI、ThunderboltなどUSB以外のプロトコルのデータを流すことができるようになり、電源やディスプレイ接続を含む全ての有線接続規格がUSBのもとに束ねられつつある...のだが、これが互換性問題を生じ、混乱を生み出している面もある(後述)。
他の規格との使い分け
USBはホスト機器とデバイスを接続するための規格であり、基本的にLANを組むことができないので、複数のPCで周辺機器を共有する場合は、無線LANやEthernet経由でLAN接続される(ホストを介さずデバイス同士を直接接続するUSB On-The-Go(オン・ザ・ゴー)なる規格も登場したが普及しなかった)。複合機やスキャナなどのUSB機器をLANネットワークで共有するための機器は「デバイスサーバ」と呼ばれ、オフィス環境などでは一定普及している。
USB.2.0までは、処理の遅延が困る用途(音楽機器、DVカメラ、動画編集用のHDDなど)ではFireWire(IEEE1394)が用いられ、外付けHDDではeSATAが採用されることもあった。現在ではUSBのさらなる高速化(3.0の登場)に伴いFireWireはごく限られた分野を除きUSBに置き換えられ、eSATAは姿を消しており、大量のデータを扱うハイエンド用途ではThunderbolt(Light Peak)という規格に移行している。
映像出力には通常、HDMIやDisplayPortといった専用ポートを用いるが、USB type-CポートにはDisplayPortを兼ねているものもある。USB4以降は、DisplayPort 2.0 Alt Modeを統合し映像出力に標準対応した。USB-IFの認めた仕様ではないが、スマートフォンやタブレットではmicro-USBポートを映像出力と兼用させているケースもある。変換アダプターを接続することで、HDMI出力などを可能にするものである。米Silicon Image社のMHL(Mobile High-Definition Link)や米Analogix SemiconductorのSlimPortなどの規格がある。
スピーカーなどの音響機器の接続にはトスリンク対応の光デジタル音声端子が用いられることもある。
規格の混乱
USB2.0が出てきたあたりまでは従来との互換性を保ちつつ高速化がなされてきたのだが、周辺機器の駆動用のため電力供給能力を強化した製品(USB-IFの定める本来のUSB規格から逸脱している)が登場しだしてから雲行きが怪しくなる。USB給電仕様の独自拡張(PoweredUSB、Quick Charge、Apple独自仕様、ソニー独自仕様など)は安全性や互換性などの問題が相次いだことから、USB-IFもUSB PDおよびUSB Battery Charging Specification (USB BC)を策定し、高速充電機能を公式なオプションとする(オプションなので全てのUSB機器が対応するわけではない)ことでこれらの問題の解決を目指した。なおUSB PDといっても5V・9V・15V・20Vの電圧仕様があり、機器やケーブルによって給電可能な電力は異なる。
USB 3.0(USB 3.1 Gen1)のSuper Speedモードは全く新しい符号化方式で動作しており、事実上USB 2.0以前とは別物の規格となっている。従来とは別の信号線を新設するが、USB2.0以前との互換のためSuperSpeed通信線は端子の差込時に最後に接続されるようになっている。mini A,B端子を廃止し、部分的に互換性を失わせる規格変更もなされた。
さらにUSB 3.1規格とほぼ同時にUSB-IFが策定したUSB Type-CはUSB PDを規格に取り込んだが、その対応状況はまちまちであり、USB Type-C製品がUSB 3.1/3.2にも対応するとは限らない。その結果、「PD非対応、USB2.0規格のType-C端子」「PDではなく(独自電源供給規格の)Quick Charge対応のUSB Type-Cケーブル」「充電専用でデータ転送機能がないケーブル」など様々な仕様の機器やケーブルが出回っており、同一機器の中ですら電源供給の仕様が異なっていたりオルタネートモード対応/非対応のポートが混在する始末で....あーもう面倒くせえ!
ちなみに、Quick Chargeの商標と技術開発はQualcomm社のものであるが、MediaTekのPump ExpressやOPPOのVOOC、モトローラ・モビリティの TurboPowerなどスマートフォンの充電を想定した独自規格が乱立している。
余談
- USB4以降は規格名の数字の間に.が付かなくなり、空白部分を埋めた文字列となった。これで分かりづらかった名称がシンプルになることが期待されたが、2022年10月にUSB4 Version2.0が発表されたことにより既存のUSB4はUSB4 Version1.0へと改名され、結果としてかえってややこしくなった。
- UWB(Ultra wideband)技術をベースとしたWireless USBなる無線接続規格も策定されたが、無線LANとBluetoothに挟まれて独自のメリットを訴求することができず、ほとんど普及しなかった。
- USBのコネクタは接続時の誤作動を防ぐため、電源が先に接続されるように電源端子が信号線より長くなっている。
- USBの信号線を使わず電源を取るだけのデバイス(USB扇風機やUSBライトなど)も存在する。本来のUSBの規格では想定されていない使い方だったが、スマートフォンやデジタルオーディオプレーヤーなどの充電をUSB経由で行うことが常識化したことから、2010年のUSB BCで「アクセサリー充電アダプター」なる仕様を定義し、USBを給電専用に使うことを公式に認めるようになった。
- いわゆるUSBメモリを「USB」と呼び習わすことがあるが、WikipediaをWikiと呼ぶのと同じくらい不適切な通称であることに注意されたし。
- USB2.0まで同期信号の重畳に1で信号そのまま、0で信号反転をするNRZI符号化を用いていたため、順次送信するデータのビットに1が続くと同期信号が無い状態が続いてしまうため、USBの場合では6ビット1が続くと強制的に0を挿入して同期を取る(ビット・スタッフィング)ようにするため、真っ白な画像など一部のデータの転送ではデータレートが落ちることがある。(USB3.0のSuperSpeedモードでは8b/10b変換を、USB3.1 Gen2以降のSuperSpeedPlus USBモードでは128b/132b変換を採用しているため、この現象は起こらない)
- USB3.0は2.0と互換性を取るためにコネクターの根元に端子を追加している。なので、USB3.0コネクターをPC等に根元まで素早く差さないと2.0として認識されてしまうことがある。