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連結会計の編集履歴

2023-04-15 13:19:25 バージョン

連結会計

れんけつかいけい

連結会計とは、連結財務諸表を作成する、会計の一連の手続き。

概要

ある一社の財務諸表(私たちが普段作成する財務諸表)は個別財務諸表とも呼ぶが、これに対して企業集団の経営状態を評価するための資料を連結財務諸表と呼ぶ。

この連結財務諸表を作成する一連の手続きを連結会計という。


連結財務諸表は簡単に言えば企業集団の個別財務諸表を一つにまとめたもので、企業集団の親会社と、主に親会社が取得した全ての子会社の個別財務諸表をまとめている。

また、親会社が取得した関連会社についても、一部については連結財務諸表で考慮する(本項では扱わない)。


基本的に連結財務諸表は個別財務諸表と似たものを作成するが、金融商品取引法の規定により連結包括利益計算書も作成する必要がある。


連結財務諸表は企業集団の親会社が、子会社と関連会社の財務諸表を集めた後で作成するため、決算日の翌日から親会社も子会社・関連会社も個別財務諸表を作成することを考えると、連結財務諸表の作成は早くとも3か月以上後の話になる(ちなみに連結財務諸表を作成する関係で、親会社が取得した子会社と関連会社の決算日は実務上でも親会社と同じ日に合わせる。このため親会社に合わせた決算日と元来の決算日が存在するため、子会社と関連会社はそれぞれで財務諸表を作成する手間が生じることもある)。

ただし、会社法及び金融商品取引法では、連結財務諸表は主に上場企業の親会社に作成義務があるものの、日本の上場企業は2022年4月時点で3800社ほどで、日本の企業全体では僅か0.4%しかない。

とはいえ上場を見越して作成する場合や、上場しないまでも子会社も含めた経営状態の評価を経営者が見たい場合に作成する機会は考えられる。

倒産や経営破綻が増えている昨今では投資家や銀行などの金融機関では貸借対照表の重要度(これは子会社などの貸借対照表も含む)が高まっている背景がある他、日商簿記検定2級以上から出題される最難関論点として見ても、会計知識としての重要度は高いと言える。


以降は日商簿記検定2級の学習上でよく見かける連結貸借対照表と連結損益計算書を中心に記載する。


作業工程

連結貸借対照表と連結損益計算書以外の連結財務諸表も作成する必要はあるが、本項では扱わない。


  • 連結初年度:連結貸借対照表の作成

資本連結(投資と資本の相殺消去→投資消去差額の処理→非支配株主持分の振替)


連結初年度は資本連結のみを行う。

資本連結とは、連結貸借対照表を作成する手続きであり、親会社と子会社の資産・負債・純資産を一つにまとめた上で、子会社の取得のために行なった取引などを取り消す一連の作業を指す。

先んじて記載するが、特に非支配株主持分の振替については親会社が子会社株式の100%を取得した場合(完全子会社)は、そもそも非支配株主が存在しないため処理を行わない。


  • 連結2年目以降:連結貸借対照表と連結損益計算書の作成

資本連結(上記と同じ)

成果連結(取引高などの相殺消去)


連結2年度以降は、上記の資本連結に加え、成果連結も行う。

成果連結とは、連結損益計算書を作成する手続きであり、親会社と子会社の収益と費用を一つにまとめた上で、連結初年度に発生したのれんの償却、親会社と子会社の間の取引を取り消す作業を指す。

日商簿記検定2級でアップ・ストリームダウン・ストリームで悩む受験生が多い取引でもある。


以上の資本連結と成果連結を行うために、親会社と子会社の取引を修正を行う必要があるが、この修正仕訳のことを連結修正仕訳という。


連結初年度の投資と資本の相殺消去

親会社が子会社を取得(支配獲得)する方法は、「一度に過半数の株式を取得する」または「段階的に株式を取得し、取得株式数を過半数にする」の2つがあるが、ここでは学習上よく見かける前者の例を解説する。


支配獲得日は連結初年度(または連結1年目など)とも呼ぶが、この時は連結貸借対照表を作成する(連結損益計算書は連結初年度は作成しない)。

基本的には親会社と子会社の資産・負債・純資産をそのまま合算する。

ただし、子会社の株主資本(資本金と利益剰余金)については、子会社を取得する際に親会社側の資産(現金や当座預金など)によって増加したものも含まれる。

親会社が子会社を取得した時、親会社と子会社では以下の仕訳を行なったものと考えられる。


親会社:(借方)S社株式※○○○/(貸方)現金など○○○

子会社:(借方)現金など○○○/(貸方)資本金○○○


※連結会計の学習上では子会社株式を「S社株式」と表現するのが一般的。


このため上記の仕訳を無くす意味合いで以下の連結修正仕訳を行うが、この連結修正仕訳を特に投資と資本の相殺消去と呼ぶ。

なお、上記の現金などについては、子会社に払い込んだものの結局は親会社に返ってくる(帰属する)という流れになるため、投資と資本の相殺消去では次の仕訳のみで事足りる。


連結修正仕訳

(借方)資本金○○○/(貸方)S社株式○○○


親会社が子会社を取得する際、少なくとも子会社の資本金以上の金額で取得することになるだろう。

仮に子会社の資本金が親会社の払込み金額より少ないなら、親会社にとっては収益が見込めず取得のメリットがないからである。

一方で子会社の資本金よりも多い金額での取得は一般的で、子会社の資本金と利益剰余金の合計額が親会社の払込み金額と同額でなければ、のれんが生じる。


  • 親会社の払込み金額が、子会社の資本金と利益剰余金の合計額と同じ場合

連結修正仕訳

(借方)資本金○○○・利益剰余金○○○/(貸方)S社株式○○○


同額ならのれんは生じない。


  • 親会社が子会社取得のために払込んだ金額が、子会社の資本金と利益剰余金の合計額より多い場合

連結修正仕訳

(借方)資本金○○○・利益剰余金○○○・のれん○○○/S社株式○○○


払込んだ金額より多い場合、その「投資の超過分」がのれん(正ののれん)となり、連結貸借対照表の借方の資産に「のれん」を加える。


  • 親会社が子会社取得のために払込んだ金額が、子会社の資本金と利益剰余金の合計額より少ない場合

連結修正仕訳

(借方)資本金○○○・利益剰余金○○○/(貸方)S社株式○○○・負ののれん発生益○○○


払込んだ金額が少ない場合、子会社には親会社が期待したほどの収益が見込めない状況にあると考えられる。

この場合は負ののれんとして扱い、連結貸借対照表の「利益剰余金に加算する」処理を行う。


連結初年度の非支配株主持分の振替

上記の「作業工程」で記載したが、子会社株式を100%未満で取得した場合のみ、この処理を行う。

連結会計では、株式100%のうち過半数を親会社が取得していると考えるが、半分にも満たない残りの株式は未だ子会社の株主が所持している。

この親会社以外の株主のことを非支配株主と呼ぶ。

また、子会社の株式資本は、過半数が親会社に帰属する親会社持分と、半数未満だが親会社以外の株主に帰属する非支配株主持分に区別される。

資本連結では、子会社を得た事実と結果を明らかにするため、親会社持分と非支配株主持分に株式資本を分ける作業も必要となる。


例えば、子会社の株主資本が総額500万円で、親会社はこのうち80%を400万円で取得したとする。

この時20%(500万円のうち20%なので100万円)は親会社以外の株主である非支配株主の持分であるため、これについても仕訳に反映する必要がある。


連結修正仕訳

(借方)資本金30,000・利益剰余金20,000/S社株式40,000・非支配株主持分10,000

(単位:千円)


「連結初年度の投資と資本の相殺消去」でも記載したが、親会社が子会社取得のために払込んだ金額が、非支配株主持分を加味しても上回っていれば正ののれん(借方の資産に「のれん」)、下回っていれば負ののれん(貸方に「負ののれん発生益」→利益剰余金に加算)が生じる。


連結初年度が難解な理由

上記のように資本連結では6つのパターン(試験で問われるのは親会社が100%未満で取得した場合のみだが)があるために理解しづらい。

6つのパターンについては、まず100%の取得か100%未満の取得で大別される。

100%未満の取得なら非支配株主持分が登場し、さらに払込んだ金額が資本金と利益剰余金より上・同額・下かで、のれん・のれんなし・負ののれん発生益が生じると判別できる。

試験では100%の取得のケースは出題されにくいため、ほぼ3パターンに絞れる。

計算については、親会社の取得%の逆が非支配株主持分となる。

例えば親会社が子会社を60%で取得したなら、非支配株主持分は(資本金+利益剰余金)×40%で計算できる。

のれんまたは負ののれん発生益は、借方の資本金・利益剰余金と貸方のS社株式・非支配株主持分の差額で計算すれば良い。


問題は所謂純資産の部の難解さにあるが、日商簿記検定3級や2級でもそこまで踏み入った内容にならないため、暗記するにしても難しく感じる。

解説すると純資産の部とは、貸借対照表における純資産を示す項目であり、一部の例外(その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、新株予約権など)を除き株主資本に属する。

ちなみに純資産の部の項目は会社法の意向が強いものとして、会計学の世界でも理解に苦しむ考え方が多いことで有名である。

このため日商簿記検定2級の時点では資本連結では株主資本を相殺消去すると暗記しても差し支えない。

2級時点でも唯一、その他有価証券評価差額金は株式資本以外に属するが、連結包括利益計算書は出題されないため特に意識する必要もない。


問題は子会社株式を取得するために払込んだ金額が、資本金以外の利益剰余金も関与する点にある。

上記で示したように親会社が子会社を取得する時の親会社と子会社の仕訳は


親会社:(借方)S社株式○○○/(貸方)現金など○○○

子会社:(借方)現金など○○○/(貸方)資本金○○○(・資本準備金○○○)


となるが、利益剰余金は仕訳に一切出ないにも関わらず連結の際に考慮する必要があるという矛盾を起こしているのだ。

また、「利益剰余金」とは、元を辿れば当期の決算で確定した当期純利益の振替である「繰越利益剰余金」や、その繰越利益剰余金を元手に「積立金」などに振替えた後に残った余剰金の総称である。

つまり子会社の利益剰余金は子会社の利益そのものであり、上記の仕訳の通り親会社が払込んだ金額とは無関係どころか全くの別物であるにもかかわらず「親会社の株主資本」として一緒くたに処理するというある種のジャイアニズムが生じているのである。

まあこれが会社法だから仕方ないと納得するしかないのだが。


連結2年目以降の資本連結(連結貸借対照表)

連結2年目以降も資本連結を行わなければならない。

そもそもの話として、連結財務諸表全般は、個別損益計算書のように翌期に繰り越されるものではないため、毎年資本連結を行うことになる。


基本的には上記と同様の作業に加え、のれんの償却、子会社の当期純利益の振替(100%未満取得の場合のみ)や子会社から親会社への配当金の修正を行う。

なお、負ののれんについては、連結初年度では親会社の利益剰余金に加算しているが、連結2年目以降は投資と資本の相殺消去の時点で子会社の利益剰余金と相殺して処理する



正ののれんについてはのれんの償却を行う。

償却は20年以内に定額法で行い、連結貸借対照表ののれんの金額を減らすとともに、連結損益計算書にのれん償却(販売費及び一般管理費)を計上する。


当期純利益の振替は詳細は次項目に記載するが、結論を述べると非支配株主持分を加算するだけである。


配当金の修正は、子会社から配当する配当金が問題となる。


連結修正仕訳

(借方)受取配当金○○○・非支配株主持分○○○/(貸方)利益剰余金○○○


配当先は親会社と非支配株主に分かれ、最終的な連結修正仕訳は上記となるが、理屈は難解なので過程を下記に記載する。


子会社から親会社への配当は、以下の仕訳が行われたと考える。


親会社:(借方)現金○○○/(貸方)受取配当金○○○

子会社:(借方)利益剰余金○○○/(貸方)現金○○○


しかし、これらはあくまで企業集団の内部取引であるため、資本連結ではこれらを無かったものとして考える。

即ち親会社は配当金を受け取っておらず、子会社も利益剰余金を財源に配当金を出していないと言う意味で、次の仕訳を行う。


(借方)受取配当金○○○/(貸方)利益剰余金○○○


一方、非支配株主に対する配当は行われたものとして扱う

本来の仕訳は親会社への配当と同様だが、こちらはその仕訳すら考えず、非支配株主持分を減算する処理を行う。


(借方)非支配株主持分○○○/(貸方)利益剰余金○○○


以上の仕訳を合わせたものが、上記に示した配当金の連結修正仕訳である。


連結2年目以降の資本連結(連結損益計算書)

先の項目は連結貸借対照表に関わる連結修正仕訳をまとめたが、こちらは連結損益計算書の概要と、連結修正仕訳をまとめる。


連結損益計算書は、まずは当期の親会社と子会社の費用・収益・当期純利益をそのまま合わせる。

その後、子会社の当期純利益については親会社と非支配株主持分に分けるイメージである(詳細は後述)。


資本連結で連結損益計算書に関係するのは、のれんの償却と当期純利益の振替である。


のれんの償却は連結貸借対照表で正ののれんが計上される時に処理を行う。

もっとも連結損益計算書では、のれん償却を計上するだけで良い。


問題は当期純利益の振替である。

なお、親会社が子会社を100%で取得した場合、そもそも非支配株主がないため、仕訳は無い。

このため以下は100%未満の取得についてのみ記載する。


100%未満の取得の場合、当期純利益は、親会社の当期純利益と子会社の当期純利益に分かれる。

さらに、子会社の当期純利益は、親会社に帰属する当期純利益と、親会社が所有していない非支配株主に帰属する当期純利益に分かれる。

連結損益計算書の記載から説明するなら、


当期純利益(親会社株主と非支配株主の合算)

非支配株主に帰属する当期純利益(上の当期純利益から控除)

親会社株主に帰属する当期純利益(結果的に親会社の当期純利益)


例えば親会社が80%で子会社を取得した時、子会社の当期純利益は20%しか認められず、残りの80%は親会社の当期純利益という扱いになる。

この場合の連結修正仕訳は


連結修正仕訳

(借方)非支配株主に帰属する当期純利益○○○/(貸方)非支配株主持分○○○


○○○に入るのは、合算した親会社と子会社の当期純利益を合わせたうちの20%分となる。







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