概要
日本商工会議所が主催・実施している、簿記に関する能力・スキルを測る資格・検定試験。
国家試験(国家資格)ではなく民間資格に分類されるが、主催団体が法律(商工会議所法)で規定された公益団体であることから、民間検定としては文部科学省後援の実用英語技能検定(英検)と並び認知度および社会的評価は高い。
また、商工会議所の認定資格であるため、公的資格というカテゴリに分類されることもある。
受験者もとても多く、商業高校生や専門学校生だけでなく、大学生や社会人も受験する。
自動車の運転免許やITの情報処理技術者試験、英語のTOEICと並ぶ人気の資格試験である。
1級、2級、3級、初級の4つの級に分かれている。
特に2級を持っていると就職活動が格段に有利になると言われているため、受験生の多くは2級の合格を目標にしている。
また、他の多くの検定試験(英検など)と異なり、3級でも履歴書に書ける。
1級はかなりの難関であり、1級に合格すると税理士国家試験の受験資格を得ることができる(一応存在する学歴要件が外れる)。
なお日商簿記の他にも、
- 簿記能力検定(全国経理教育協会が主催している。主にビジネス系の専門学校の学生が受験する。)
- 簿記実務検定(全国商業高等学校協会が主催している。主に商業高校の生徒が受験する。)
など有名な簿記検定はいくつか存在するが、日商簿記のブランド力が一番高い。
試験の実施スケジュール
紙媒体の試験(ペーパー)とネット方式の試験がある。
ペーパー試験は初級以外で実施される。全国統一日程で年に3回(6月、11月、2月)実施される。ただし、1級は6月と11月の年2回のみの実施である。申込みは各地の商工会議所で受け付ける。
ネット試験は1級以外で実施される。
ペーパー試験の直前などを除いていつでも受験でき、パソコン教室などで受験することが可能。
各級の説明
1級
商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算の4科目が出題される。試験時間は180分(3時間)。
総合得点が100点満点中70点以上で合格となるが、足切り制度があり、各科目(25点満点)の得点が最低でも4割(10点)以上でなければいけない。そのため、総合得点が84点であっても足切りで不合格になってしまう可能性がある。
受験者の大部分が既に2級合格レベルの実力を持っており、将来的に税理士や公認会計士と言った超難関国家資格を目指す人も多い。その中での合格率が例年たったの10%程度しかないため、難易度は非常に高い。
商業高校では日商簿記1級に合格できればスーパースター間違いなし。また地元の新聞に名前が載るほどの大偉業でもある。
また、国公立大学や有名私立大学の推薦(AO)入試で有利になることもあり、文系の最難関国立大学である一橋大学商学部の推薦入試の出願条件にも、日商簿記1級合格が含まれている。
なお他の簿記検定と比較した場合、全経の上級が日商簿記1級とほぼ互角の難易度(もしくは日商簿記1級の方がやや難しい)と言われている。
2級
日商簿記で最もメジャーな級。一般的に就職や転職で有利になるのはこの級以上と言われる。
試験時間は90分(1時間30分)で、商業簿記と工業簿記の2科目が課される。100点満点中70点以上で合格となる。
商業簿記は60点満点、工業簿記は40点満点である。1級と違って科目ごとの足切り制度はないが、仮に商業簿記が満点だったとしても工業簿記で最低でも10点以上獲得する必要があり、逆に工業簿記が満点だった場合でも商業簿記で半分に当たる30点以上の得点が必要。
比較的簡単な回と難しい回の差がとても大きいのが特徴で、やさしい回の合格率は30%を超えるが、逆に鬼のような回だと合格率が15%未満になってしまうことも。
これは日商簿記2級のボーダーラインが問題の難易度に関係なく一定であること(絶対評価)が原因。だから問題が簡単であれば必然的に合格率は上がるし、逆に難問揃いであれば合格率は下がる。
最近はかつて1級で出題されていたような内容(連結会計など)が追加されて、商業簿記に関しては昔と比べて難易度がかなり上がっているらしい。そのため準1級と揶揄されることも。
正直、簿記初心者がいきなり2級に挑戦するのはオススメできない。
ただし、工業簿記に関しては出題内容は昔とあまり変わっていない。
これに合格すると就職や転職で有利に働く他、公務員採用試験で加点対象となることもあるなどメリットが大きい。
大手の経理や総合職、工場の事務所の正社員を(特に中途で)狙うならほぼ必須の資格である。
ちなみに、1級は税理士試験への登竜門という立ち位置であるため、単に企業の経理がやりたいだけであれば2級で十分。
商業高校では在学中に日商簿記2級に合格できればそこそこ優秀な部類であり、学校内では「割と勉強できるキャラ」とされる。
他の資格試験(国家試験)だと、不動産の宅地建物取引士(宅建)や、ITエンジニア向けの基本情報技術者試験などと同じくらいの難易度と言われることが多い。
他の簿記検定と比較すると全経の1級や全商の1級と同じくらいの難易度(もしくはそれらより日商簿記2級の方がやや難しい)らしい。
3級
試験時間は60分(1時間)。商業簿記のみが出題される。100点満点中70点以上で合格。
合格率は例年40〜50%程度であり、難易度はそれほど高くない。簿記初心者にオススメの級である。数ヶ月真面目に勉強すれば合格できるはず。
情報処理の資格で例えるならITパスポート試験と同じくらいの難易度だろう。職業訓練校のパソコン関係の学科でも日商簿記3級の合格を目標とする場合がある。
一応この級でも履歴書には書けるが、あくまで「業務に必要最低限の簿記知識がある事の証明」という評価であるため、メリットがとても大きい資格というわけではない。
大きなメリットを得たいのであればやはり2級以上がほしいところ。
ただしパートの事務職であれば3級でも十分評価対象になりうる。
商業高校出身者なら最低限日商簿記3級には合格してもらいたいところ。
初級
昔は4級と呼ばれていた。紙媒体の筆記試験ではなく、CBT方式(試験会場などに設置されたパソコン上で受験するタイプ)の試験である。
経理担当者などを対象としたプロ向けの試験である3級以上と異なり、初級は職種を問わずすべての社会人を対象としたアマチュア向けの試験である。
正直言うとレベルはお世辞にも高いとは言えず、一般常識に毛が生えた程度である。社会的評価は英検3級と同じくらい。
そのため、これに受かったからといって履歴書に書いてしまうと、プラス評価にならないどころかマイナスイメージさえ付いてしまう可能性すらある。