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概要

ある一社の財務諸表(私たちが普段作成する財務諸表)は個別財務諸表とも呼ぶが、これに対して企業集団の経営状態を評価するための資料を連結財務諸表と呼ぶ。

そして連結財務諸表を作成する一連の手続きを連結会計という。

連結財務諸表は簡単に言えば企業集団の個別財務諸表を一つにまとめたもので、企業集団の親会社と、主に親会社が取得した全ての子会社の個別財務諸表をまとめている。

また、親会社が取得した関連会社についても、一部については連結財務諸表で考慮する(本項では扱わない)。

基本的に連結財務諸表は個別財務諸表と似たものを作成するが、金融商品取引法の規定により連結包括利益計算書も作成する必要がある。

連結財務諸表は企業集団の親会社が、子会社と関連会社の財務諸表を集めた後で作成するため、決算日の翌日から親会社も子会社・関連会社も個別財務諸表を作成することを考えると、連結財務諸表の作成は早くとも3か月以上後の話になる(ちなみに連結財務諸表を作成する関係で、親会社が取得した子会社と関連会社の決算日は実務上でも親会社と同じ日に合わせる。このため親会社に合わせた決算日と元来の決算日が存在するため、子会社と関連会社はそれぞれで財務諸表を作成する手間が生じることもある)。

ただし、会社法及び金融商品取引法では、連結財務諸表は主に上場企業の親会社に作成義務があるものの、日本の上場企業は2022年4月時点で3800社ほどで、日本の企業全体では僅か0.4%しかない。

とはいえ上場を見越して作成する場合や、上場しないまでも子会社も含めた経営状態の評価を経営者が見たい場合に作成する機会は考えられる。

倒産や経営破綻が増えている昨今では投資家や銀行などの金融機関では貸借対照表の重要度(これは子会社などの貸借対照表も含む)が高まっている背景がある他、日商簿記検定2級以上から出題される最難関論点として見ても、会計知識としての重要度は高いと言える。

以降は日商簿記検定2級の学習上でよく見かける連結貸借対照表と連結損益計算書を中心に記載する。

作業工程

連結貸借対照表と連結損益計算書以外の連結財務諸表も作成する必要はあるが、本項では扱わない。

  • 連結初年度:連結貸借対照表の作成

資本連結(投資と資本の相殺消去→投資消去差額の処理→非支配株主持分の振替)

連結初年度は資本連結のみを行う。

資本連結とは、親会社が子会社取得のために行なった取引などを取り消す一連の作業を指す。

先んじて記載するが、特に非支配株主持分の振替については親会社が子会社株式の100%を取得した場合(完全子会社)は、そもそも非支配株主が存在しないため処理を行わない。

  • 連結2年目以降:連結貸借対照表と連結損益計算書の作成

資本連結(上記とほぼ同じ)

成果連結(取引高などの相殺消去)

連結2年度以降は、上記の資本連結に加え、成果連結も行う。

成果連結とは、親会社と子会社の間に行われた取引(要するに「資本連結以外の取引全般」)を取り消す作業を指す。

日商簿記検定2級でアップ・ストリームやダウン・ストリームで悩む受験生が多い取引でもある。

以上の資本連結と成果連結を行うために、親会社と子会社の取引の修正仕訳を行うが、この修正仕訳のことを連結修正仕訳という。

連結初年度の資本連結(投資と資本の相殺消去)

親会社が子会社を取得(支配獲得)する方法は、「一度に過半数の株式を取得する」または「段階的に株式を取得し、取得株式数を過半数にする」の2つがあるが、ここでは学習上よく見かける前者の例を解説する。

支配獲得日は連結初年度(または連結1年目など)とも呼ぶが、この時は連結貸借対照表を作成する(連結損益計算書は連結初年度は作成しない)。

基本的には親会社と子会社の資産・負債・純資産をそのまま合算する。

ただし、子会社の株主資本(資本金と利益剰余金)については、子会社を取得する際に親会社側の資産(現金や当座預金など)によって増加したものも含まれる。

親会社が子会社を取得した時、親会社と子会社では以下の仕訳を行なったものと考えられる。

親会社:(借方)S社株式※○○○/(貸方)現金など○○○

子会社:(借方)現金など○○○/(貸方)資本金○○○

※連結会計の学習上では子会社株式を「S社株式」と表現するのが一般的。

このため上記の仕訳を無くす意味合いで以下の連結修正仕訳を行うが、この連結修正仕訳を特に投資と資本の相殺消去と呼ぶ。

なお、上記の現金などについては、子会社に払い込んだものの結局は親会社に返ってくる(帰属する)という流れになるため、投資と資本の相殺消去では次の仕訳のみで事足りる。

連結修正仕訳

(借方)資本金○○○/(貸方)S社株式○○○

親会社が子会社を取得する際、少なくとも子会社の資本金以上の金額で取得することになるだろう。

仮に子会社の資本金が親会社の払込み金額より少ないなら、親会社にとっては収益が見込めず取得のメリットがないからである。

一方で子会社の資本金よりも多い金額での取得は一般的で、子会社の資本金と利益剰余金の合計額が親会社の払込み金額と同額でなければ、のれんが生じる。

  • 親会社の払込み金額が、子会社の資本金と利益剰余金の合計額と同じ場合

連結修正仕訳

(借方)資本金○○○・利益剰余金○○○/(貸方)S社株式○○○

同額ならのれんは生じない。

  • 親会社が子会社取得のために払込んだ金額が、子会社の資本金と利益剰余金の合計額より多い場合

連結修正仕訳

(借方)資本金○○○・利益剰余金○○○・のれん○○○/S社株式○○○

払込んだ金額より多い場合、その「投資の超過分」がのれん(正ののれん)となり、連結貸借対照表の資産に「のれん」を加える。

  • 親会社が子会社取得のために払込んだ金額が、子会社の資本金と利益剰余金の合計額より少ない場合

連結修正仕訳

(借方)資本金○○○・利益剰余金○○○/(貸方)S社株式○○○・負ののれん発生益○○○

払込んだ金額が少ない場合、子会社には親会社が期待したほどの収益が見込めない状況にあると考えられる。

この場合は負ののれんとして扱い、連結貸借対照表の「利益剰余金に加算する」処理を行う。

連結初年度の資本連結(非支配株主持分の振替)

上記の「作業工程」で記載したが、子会社株式を100%未満で取得した場合に行う。

「株式100%のうち過半数を親会社が取得している」とは、逆に考えると「半分にも満たない残りの株式は親会社以外の株主が所持している」と言える。

この親会社以外の株主のことを非支配株主と呼ぶ。

また、子会社の株主資本は、過半数が親会社に帰属する「親会社持分」と、半数未満だが親会社以外の株主に帰属する「非支配株主持分」に区別される。

資本連結では、子会社を得た事実とその結果を明らかにするため、株主資本を親会社持分と非支配株主持分を分ける作業も必要となる。

例えば、子会社の株主資本が総額500万円で、親会社はこのうち80%を400万円で取得したとする。

この時20%(500万円のうち20%なので100万円)は親会社以外の株主である非支配株主の持分であるため、これについても仕訳に反映する必要がある。

連結修正仕訳

(借方)資本金30,000・利益剰余金20,000/S社株式40,000・非支配株主持分10,000

(単位:千円)

「連結初年度の投資と資本の相殺消去」でも記載したが、親会社が子会社取得のために払込んだ金額が、非支配株主持分を加味しても上回っていれば正ののれん(借方の資産に「のれん」)、下回っていれば負ののれん(貸方に「負ののれん発生益」→利益剰余金に加算)が生じる。

連結初年度が難解な理由

上記のように資本連結では6つのパターンがあるため理解しづらい。

6つのパターンについては、まず100%の取得か100%未満の取得で大別される。

100%未満の取得なら非支配株主持分が登場し、さらに払込んだ金額が資本金と利益剰余金より上・同額・下かで、のれん・のれんなし・負ののれん発生益が生じると判別できる。

とはいえ試験では100%の取得のケースは出題されにくいため、ほぼ3パターンに絞れる。

計算については、親会社の取得%の逆が非支配株主持分となる。

例えば親会社が子会社を60%で取得したなら、非支配株主持分は(資本金+利益剰余金)×40%で計算できる。

のれんまたは負ののれん発生益は、借方の資本金・利益剰余金と貸方のS社株式・非支配株主持分の差額で計算すれば良い。

問題は所謂純資産の部にあるが、日商簿記検定3級や2級では解説に乏しく、理解はもとより暗記するにも難しく感じる。

解説すると純資産の部とは、貸借対照表における純資産を示す項目であり、一部の例外(その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、新株予約権など)を除き株主資本に属する。

ちなみに純資産の部の項目は会社法の意向が強いものとして、会計学の世界でも理解に苦しむ考え方が多いことで有名である。

このため日商簿記検定2級の時点では資本連結では株主資本を相殺消去すると暗記しても差し支えないし、出題で見られる「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」ももちろん株主資本である。

2級時点でも唯一、その他有価証券評価差額金は株式資本以外に属するが、連結包括利益計算書は出題されないため特に意識する必要もない。

余談だが、「資本」剰余金については「資本」金と同じ動きをすると考えて良い。

資本連結で資本金関係の仕訳を行う際に、資本剰余金もまとめて処理を行う(本項では扱わない)。

問題は子会社株式を取得するために払込んだ金額が、資本金(と資本剰余金)以外の利益剰余金も関与する点にある。

上記で示したように親会社が子会社を取得する時の親会社と子会社の仕訳は

親会社:(借方)S社株式○○○/(貸方)現金など○○○

子会社:(借方)現金など○○○/(貸方)資本金○○○(・資本準備金○○○)

となるが、利益剰余金は仕訳に一切出ないにもかかわらず連結の際に考慮する必要があるという矛盾を起こしているのだ。

また、「利益剰余金」とは、元を辿れば当期の決算で確定した当期純利益の振替である「繰越利益剰余金」や、その繰越利益剰余金を元手に「積立金」などに振替えた後に残った余剰金の総称である。

つまり子会社の利益剰余金は子会社の利益そのものであり、上記の仕訳の通り親会社が払込んだ金額とは無関係どころか全くの別物であるにもかかわらず「親会社の株主資本」として一緒くたに処理するというある種のジャイアニズムが生じているのである。

まあこれが会社法だから仕方ないと納得するしかないのだが。

連結2年目以降の資本連結(連結貸借対照表)

連結2年目以降も資本連結を行わなければならない。

そもそもの話として、連結財務諸表全般は、個別損益計算書のように翌期に繰り越されるものではないため、毎年資本連結を行う必要がある。

上記と同様の作業に加え、のれんの償却、子会社の当期純利益の振替(100%未満取得の場合のみ)や子会社から親会社への配当金の修正を行う。

なお、負ののれんについては、連結初年度では親会社の利益剰余金に加算しているが、連結2年目以降は投資と資本の相殺消去の時点で子会社の利益剰余金と相殺して処理する

正ののれんについてはのれんの償却を行う。

償却は20年以内に定額法で行い、連結貸借対照表ののれんの金額を減らすとともに、連結損益計算書にのれん償却(販売費及び一般管理費)を計上する。

当期純利益の振替は詳細は次項目に記載するが、結論を述べると非支配株主持分を加算するだけである。

配当金の修正は、子会社から配当する配当金が問題となる。

連結修正仕訳

(借方)受取配当金○○○・非支配株主持分○○○/(貸方)利益剰余金○○○

配当先は親会社と非支配株主に分かれ、最終的な連結修正仕訳は上記となるが、理屈を以下に解説する。

子会社から親会社への配当は、以下の仕訳が行われたと考える。

親会社:(借方)現金○○○/(貸方)受取配当金○○○

子会社:(借方)利益剰余金○○○/(貸方)現金○○○

しかし、これらはあくまで企業集団の内部取引であるため、資本連結ではこれらを無かったものとして考える。

即ち親会社は配当金を受け取っておらず、子会社も利益剰余金を財源に配当金を出していないと言う意味で、次の仕訳を行う。

(借方)受取配当金○○○/(貸方)利益剰余金○○○

一方、非支配株主に対する配当は行われたものとして扱う。

本来の仕訳は親会社への配当と同様だが、こちらはその仕訳すら考えず、非支配株主持分を減算する処理を行う。

(借方)非支配株主持分○○○/(貸方)利益剰余金○○○

以上の仕訳を合わせたものが上記の連結修正仕訳である。

連結2年目以降の資本連結(連結損益計算書)

先の項目は連結貸借対照表に関わる連結修正仕訳をまとめたが、こちらは連結損益計算書の概要と、連結修正仕訳をまとめる。

連結損益計算書は、まずは当期の親会社と子会社の費用・収益・当期純利益をそのまま合わせる。

その後、子会社の当期純利益については親会社と非支配株主持分に分けるイメージである(詳細は後述)。

資本連結で連結損益計算書に関係するのは、のれんの償却と当期純利益の振替である。

のれんの償却は連結貸借対照表で正ののれんが計上される時に処理を行う。

もっとも連結損益計算書では、のれん償却を計上するだけで良い。

問題は当期純利益の振替である。

なお、親会社が子会社を100%で取得した場合、そもそも非支配株主がないため、仕訳は無い。

このため以下は100%未満の取得についてのみ記載する。

100%未満の取得の場合、当期純利益は、親会社の当期純利益と子会社の当期純利益に分かれる。

さらに、子会社の当期純利益は、「親会社に帰属する当期純利益」と、親会社が所有していない「非支配株主に帰属する当期純利益」に分かれる。

これを連結損益計算書の記載順に説明すると

当期純利益(親会社株主と非支配株主の合算)

非支配株主に帰属する当期純利益(上の当期純利益から控除)

親会社株主に帰属する当期純利益(結果的に親会社の当期純利益)

となる。

例えば親会社が80%で子会社を取得した時、子会社の当期純利益は20%しか認められず、残りの80%は親会社の当期純利益という扱いになる。

この場合の連結修正仕訳は

連結修正仕訳

(借方)非支配株主に帰属する当期純利益○○○/(貸方)非支配株主持分○○○

○○○に入るのは、合算した親会社と子会社の当期純利益を合わせたうちの20%分となる。

成果連結

成果連結とは、資本連結以外の親会社と子会社間の取引である。

消去する取引は商品売買や金銭貸借など、親子間で利益が発生している取引が対象となる。

例えば親会社が子会社に対して商品を販売していたら、親会社と子会社は以下の仕訳を行う。

親会社:(借方)売掛金○○○/(貸方)売上○○○

子会社:(借方)仕入○○○/(貸方)買掛金○○○

連結修正仕訳では商品売買については「売上・仕入」ではなく「売上高・売上原価」を用いて相殺消去を行う(理由は後述)。

連結修正仕訳

(借方)買掛金○○○/(貸方)売掛金○○○

(借方)売上高○○○/(貸方)売上原価○○○

連結貸借対照表では「買掛金/売掛金」の連結修正仕訳を控除した後の金額を記載する。

連結損益計算書では「売上高/売上原価」の連結修正仕訳を控除した後の金額を記載する。

また、親会社が子会社に融資を行なったら、親会社と子会社は以下の仕訳を行う。

親会社:(借方)貸付金○○○/(貸方)現金など○○○

   :(借方)現金など○○○/(貸方)受取利息○○○

子会社:(借方)現金など○○○/(貸方)借入金○○○

   :(借方)支払利息○○○/(貸方)現金など○○○

以上の取引について連結修正仕訳を行うと

連結修正仕訳

(借方)借入金○○○/(貸方)貸付金○○○

(借方)受取利息○○○/支払利息○○○

となる。

連結貸借対照表では「借入金/貸付金」を、連結損益計算書では「受取利息/支払利息」を控除した金額を記載する。

成果連結(売上高/売上原価)

上記に示したように、商品売買の連結修正仕訳は「売上高」と「売上原価」を相殺消去する。

この理由としては本支店会計における本支店間取引の考え方と同じだがらである。

親会社が子会社に対し商品を販売する場合、その前段階として親会社は「企業集団の外部にある企業」から商品を販売されている。

例えば親会社は「企業集団の外部にある企業」から商品を100円を仕入れたら

親会社:(借方)仕入100/(貸方)買掛金100

この仕訳を行なっている。

その後、子会社に商品を150円で販売するなら、親会社と子会社の仕訳は

親会社:(借方)売掛金150/(貸方)売上150

子会社:(借方)仕入150/(貸方)買掛金150

となり、親会社の個別損益計算書では次の表示がなされる(期中に他の取引はなく、期首・期末商品もないものと考える)。

    売上高 150

期首商品棚卸高 0

当期商品仕入高 100

期末商品棚卸高 0

  売上総利益 50

親会社は「外部から商品を100円で仕入れ、子会社に150円で売った」訳だが、思い出してもらいたいのは「企業集団の外部にある企業」にとっては親会社も子会社も関係なく1つの「企業集団」の取引である。

つまり親会社と子会社の取引(商品150円の売買)は無いと考える一方、「企業集団の外部にある企業」との取引(商品100円の売買)はあったと考える。

また、上記の例では期首と期末の商品は無く、期中の仕入は「企業集団の外部にある企業」との売買によって増えた商品を示している。

個別損益計算書では「期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高」によって売上原価を算定するため、「企業集団の外部にある企業」との取引で得た商品こそが「売上原価」であると言える。

以上から連結修正仕訳は

・親会社と子会社の間の取引を消去(個別損益計算書における「売上高」)

・企業集団の外部にある企業との取引価額(個別損益計算書の期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高の計算結果である「売上原価」)

を相殺消去しなければならないという話になり、

(借方)売上高100/(貸方)売上原価100

となる。

さらに言えば、親会社と子会社の売買によって生じた売上高と売上原価の差額50円(未実現利益)についても考慮する必要がある。

成果連結(ダウン・ストリーム)

親会社と子会社の間で行われた売買については、あくまで企業集団の中での取引に過ぎず、仮に親会社が商品を外部から仕入れ、子会社へ利益を割増して販売しても、親会社と子会社のお金の合計は変わらない。

だが、親会社と子会社における各々のお金は当然動いている。

極端な話をすると、個別財務諸表では、親会社が子会社に対し過大に利益を割増して子会社に売りつけ、親会社の資産や利益を強引に増やすことも有り得るし、売れ残った在庫を子会社に売りつけることで、親会社の売上を過大に見せることも考えられる。

そして連結財務諸表において単に親会社と子会社の個別財務諸表の数字を加算するだけで許されるなら、これらの企業集団内の取引も当然含まれ、内部的には利益が出ていないにもかかわらず財務諸表では利益が出ているという矛盾が生じることになる。

連結会計の本来の目的は、企業集団内における取引による見かけだけの資産・負債・純資産・費用・収益の増加を是正することである。

よって資本連結も成果連結も、過大な企業集団内の取引を消去し外部との取引の成果のみを示すのに重要な手続きであるとともに、「企業集団内で取引が止まり外部に販売されていない商品や、企業集団内で計上した割増の売上」(未実現利益)を控除する連結修正仕訳も必要と言える。

  • ダウン・ストリーム

親会社が子会社へ商品を販売することをダウン・ストリームと呼ぶ。

商品や土地の売買については、親会社の株式の取得が100%か100%未満かで処理が変わることもあるが、ダウン・ストリームについては同一である。

  • 期末に、親会社が子会社に売った商品が子会社の手元に残っている場合

子会社の個別貸借対照表の「繰越商品」の中に、親会社から買った商品が含まれているとも言える。

親会社が外部から商品2個を1個100円で仕入れ、それを子会社に1個130円で売った。

その後、外部に1個150円で売ったものの、1個が売れ残った場合を考える。

個別財務諸表では、親会社と子会社では以下の仕訳が反映されている。

親会社:(借方)仕入200/(貸方)買掛金200

   :(借方)売掛金260/(貸方)売上260

子会社:(借方)仕入260/買掛金260

   :(借方)売掛金150/(貸方)売上150←当期に売れた1個

   :(借方)繰越商品130/(貸方)仕入130←子会社の期末商品1個(売上原価)

親会社と子会社の取引である商品仕入の連結修正仕訳は行う。

また、親会社から見た場合、子会社の売れ残った期末商品とは、親会社の外部からの仕入額に、子会社へ売る際に上乗せした利益の合計額である。

しかし利益の上乗せ分は親会社と子会社の間の取引で発生したもののため、こちらの連結修正仕訳も行う。

なお、子会社の個別貸借対照表で「繰越商品」と表示されている科目は、連結財務諸表では「商品」と表示する。

連結修正仕訳

(借方)売上高260/(貸方)売上原価260

(借方)売上原価30/(貸方)商品30

  • 期首商品の連結修正仕訳

子会社の期末商品には、親会社が子会社に売った際に上乗せした利益が本来は含まれている。

期末商品の時にはこれを未実現利益として連結修正仕訳で減らしたが、当期はその商品を売ったものとして考えるため、未実現利益を控除する開始仕訳(期末の「売上原価」から「利益剰余金」に振替える)を行う。

例については上記を引き続き使用する。

前期の未実現利益を控除するための当期の開始仕訳

(借方)利益剰余金30/(貸方)商品30

仮に当期は一切の仕入れを行わなかったものと考え、期中では実際に商品1個が売れたとしたら、個別財務諸表での仕訳は

(借方)売掛金150/(貸方)売上150←前期の売れた時と同じ仕訳

(借方)仕入130/繰越商品130←個別損益計算書の期首商品棚卸高

となる。

このうち「(借方)仕入130/(貸方)繰越商品130」については忘れがちだが、前期に親会社が上乗せした利益(未実現利益)が含まれており、販売によって未実現利益が実現したことを表す連結修正仕訳が必要となる。

連結修正仕訳

(借方)商品30/(貸方)売上原価30

開始仕訳はあくまで「期首の時点で未実現利益だったため控除する」という意味なのに対し、連結修正仕訳は「期中で未実現利益が実現した」という意味である。

これらの仕訳は相反する意味を持つため一括してまとめることができ、下記の連結修正仕訳を暗記しても良い。

期首商品の未実現利益にかかる連結修正仕訳

(借方)利益剰余金30/(貸方)売上原価30

ちなみにこの仕訳の場合は連結貸借対照表の「商品」は一切増減せず「利益剰余金」が減少し、連結損益計算書の「売上原価」も減少する処理となる。

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