概要
しらね型護衛艦とは、かつて日本の海上自衛隊が運用していたヘリコプター搭載護衛艦(DDH)である。先代のはるな型護衛艦の発展型であり、イージス艦であるこんごう型護衛艦が建造されるまでは海自最大の護衛艦で、名実共に海自の顔であった。
同型艦は2隻。
艦名は元々、金剛山と霧島山から取って「こんごう」「きりしま」とする予定だったが、当時の防衛庁長官だった金丸信が、自らの選挙区にある白峰三山北岳の俗称「白根山」から取ることを推したため、このような変則的命名となった。「こんごう」「きりしま」は後にこんごう型護衛艦に採用された。
はるな型と同じく哨戒用ヘリコプター3機を搭載し、格納庫と離着艦用のヘリ甲板が船体後部を大きく占め、それ以外の艦上構造物や兵装が船体前部寄りとなったシルエットが特徴。
設計
全体としては、前級はるな型の設計を踏襲している。はるな型同様に開発当初から旗艦前提で設計された上、VIPの接遇可能な公室を備えた新鋭艦だったことが幸いし、「しらね」就役直後から「くらま」退役直前となる1981年から2015年の間に挙行された全ての観艦式において本型が観閲艦を務めた。
はるな型からの改良点としてヘリ甲板が若干拡張されたほか、指揮管制能力向上を図って艦橋構造物が一層追加されて大型化した。艦外に装備するアンテナや電子機器も大幅に増加したため、マック(マストと一体化した煙突)は2本に増設されている。システム面では護衛艦で初めてデータリンクであるリンク11や海洋戦術情報システムに対応した点も特徴的である。
さらに海自護衛艦としては初めてシースパロー艦対空ミサイルを装備し、「くらま」からはこれも初となる高性能20mm機関砲(CIWS)が搭載され、「しらね」にも後日装備の形で搭載された。さらに新規開発された国産のOPS-12三次元式対空捜索レーダー、OPS-28対水上捜索レーダーなども搭載されている。OPS-12はたちかぜ型護衛艦「さわかぜ」にも搭載が検討されたが、同艦のターターシステムとの連接条件に不明点があるという理由から採用されず、海自では本型のみの搭載となった。一方OPS-28は継続的な改良を行いつつ、後続の護衛艦にも搭載されている。
対潜装備として、艦首には新規開発の国産OQS-101艦首ソナーが搭載されている。これは前級はるな型へも後日搭載が検討されたが、大重量であることから実現せず、これまた本型のみの搭載となっている。さらにアメリカから輸入したパッシブ式の可変深度式ソナーと曳航式ソナーが「しらね」と「くらま」にそれぞれ搭載された。それまでの海自は自ら音を出すアクティブ式で潜水艦を探していたが、これによって相手の音を拾うパッシブ式に切り替わったのも対潜作戦へのターニングポイントとなっている。
一方で、蒸気タービン機関とマックを採用した自衛艦は本型が最後となり、当時の最新と最後の設計が混在する艦ともなった。
データ
基準排水量 | 5,200トン |
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満載排水量 | 6,800トン |
全長 | 159m |
全幅 | 17.5m |
深さ | 11.0m |
喫水 | 5.3m(しらね)、5.5m(くらま) |
主機・推進機 | |
最大速力 |
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航続距離 | 20ノットで6000海里 |
兵装 |
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レーダー |
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ソナー |
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搭載機 |
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後継艦
ヘリコプター搭載護衛艦としては、全通甲板と搭載・整備・運用能力を大幅に強化し、指揮能力を加えたひゅうが型護衛艦といずも型護衛艦が後継艦となっている。
護衛艦「ひゅうが」が就役した同日に前級「はるな」が退役し、同時に第1護衛隊群旗艦であった「しらね」も「ひゅうが」と交代、第3護衛隊群の旗艦に転属となった。
2015年に「いずも」が就役すると「しらね」が退役。2017年には「かが」が就役したことで「くらま」が退役し、両艦ともに海自での任務を終えた。