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いずも型護衛艦

いずもがたごえいかん

海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦、というか軽空母。見出しイラストは2番艦「かが」 。
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概要編集

日本海上自衛隊が運用しているヘリコプター搭載護衛艦(DDH)。全長約248メートル、基準排水量19,500トン~満載排水量26,000トンで、先行して建造配備されたひゅうが型護衛艦をもとに大型化し、航空運用機能や多用途性を強化したものとなっている。それまで海自最大だったましゅう型補給艦を大きく凌駕し、海自の護衛艦及び自衛艦としては史上最大である。


同型艦は1番艦『いずも』と2番艦『かが』。それぞれ平成22年度予算と平成24年度予算で建造されたため、22DDH、24DDHと呼ばれている。


同型艦編集

  • いずも:1番艦。由来は律令国制の出雲の国(現在の島根県に近似)。先代はイギリス製の装甲巡洋艦出雲。
  • かが:2番艦。由来は律令国制の加賀の国(現在の石川県に近似)。先代は加賀(空母)

スペック編集

船体規模編集

それまで護衛艦の中では海自最大だったひゅうが型護衛艦と比較し、全長で51メートル、全幅で5メートル、基準排水量で5,500トンも上回る。旧日本海軍の艦船と比較しても、全長だけなら2番艦の先代にあたる空母『加賀』とほぼ同じ。排水量も空母『飛龍』『蒼龍』を完全に超えており、とにかくデカい。


現代において同規模の艦にはイタリア海軍の軽空母『カヴール』、スペイン海軍の強襲揚陸艦兼軽空母『フアン・カルロス1世』、その準同型艦であるオーストラリア海軍のキャンベラ級強襲揚陸艦がある。ジェーン海軍年鑑など日本国外のメディアにおいては「ヘリ空母」に分類されている。



航空運用能力編集

前型であるひゅうが型護衛艦よりも更に航空運用能力に重点を置き、最大14機のヘリコプターを運用する。飛行甲板の大型化によってヘリを最大で同時5機まで離発着可能。ひゅうが型が最大3機だったのと比べると破格の能力とも言える。このように航空運用能力は大幅強化されており、対潜哨戒能力の強化や災害時の捜索救難能力の拡大に繋がっている。


さらにデッキサイド方式の艦載機エレベーターを設けたことで大型ヘリの運用にも対応。これは波浪に弱かったり岸壁に接舷する際の邪魔になることが欠点だが、格納庫を広く取れたり、機体の一部を外にはみ出させることでエレベーターのサイズより大きな機体でも運搬ができるという利点があり、CH-47JAチヌークMCH-101V-22オスプレイ、ひいては西側諸国最大クラスのヘリであるMH-53Eシードラゴンの艦載も可能とした(海自のMH-53Eは2017年に退役)。


2020年代には大規模改修で事実上の軽空母となり、F-35B戦闘機の搭載と運用も可能になる。詳細は後述。



多目的艦機能編集

輸送艦給油艦病院船としての能力も複合的に付与されており、多用途艦としての側面を持つ。陸上車両の輸送能力(RORO機能)とヘリコプターでの揚陸能力を備え、造水機能や病院船に準ずる高度な医療設備により、おおすみ型輸送艦ましゅう型補給艦とともに災害派遣時の救援で活躍する。


広大な格納庫は艦載ヘリの搭載だけでなく、治療ユニットを搭載することで傷病者対応能力を上げたり、右舷のランプを通じて陸上車両を搭載するなど、様々な用途に利用することが可能。2018年の豪雨被害では、道路の損壊により孤立した地区への救援として飲料水や風呂などを提供した。


他艦への燃料給油能力により、かつての駆逐艦母艦のように艦隊の随伴艦をサポートする。さらに司令部として運用されることを想定した高度な指揮通信能力・司令部機能が用意されているなど、艦隊旗艦としての機能を持ち合わせる。


諸外国では本艦型が「ヘリコプター揚陸艦のようなもの」と説明されることもあるが、揚陸艦としての能力より、救難能力や対潜能力に重点をおいているためいわゆる「揚陸艦」とも似て非なるものである。



防御機能編集

武装としては、最大射程9.6kmのSeaRAMとファランクスCIWS(高性能20mm機関砲)を各2基ずつ搭載する。ひゅうが型が最大射程30~50kmのESSM個艦防空ミサイルを搭載していたことと比べるとはるかに簡素である。


SeaRAMはアメリカ海軍のインディペンデンス級沿海域戦闘艦に搭載されたものと同型で、ファランクスCIWSのM61バルカンの替わりにRIM-116 RAMの11連装発射機を組み込んだ近接防空ミサイルシステムである。これにより、対艦ミサイルへの近接防御という点に限ればひゅうが型よりも優れたものとなっている。ファランクスCIWSは除籍艦から流用されたブロック1Aを搭載している。


多機能レーダーは、ひゅうが型で採用された国産のFCS-3から、ミサイル装備の省略に合わせてミサイル射撃指揮機能を省略して対空捜索と航空管制に用途特化したOPS-50を装備する。これはFCS-3の持つXバンドの追尾用アンテナ(ICWI)を省略しており、Cバンドの捜索用アンテナのみ四方に向けて4セットを搭載する。このアンテナはアクティブ・フェイズドアレイ(AESA)方式の固定式で、装備要領はひゅうが型と同様、アイランド前部に0度と270度を向いたもの、後部に90度と180度を向いたものを設置している。また、潜望鏡探知等のために回転式のOPS-28対水上捜索レーダー1基も並載される。


対潜能力で評価するならば、SH-60Kを多数運用できるため艦載ヘリを含めれば相当なものであるが、揚陸能力はおおすみ型、ひゅうが型と同じく『帯に短し襷に長し』という印象は変わらない。




空母化計画編集

固定翼機艦載化改修案に関して編集

元々は外観やカタログスペックが諸外国の軽空母に近い事から上がった論点であり、実現可能性を抜きにしての「本型で出来るのかのか出来ないのか」という井戸端会議的な技術論からスタートしている。

出来るという意見もあれば出来ないという意見もあり、それぞれ両派による論拠も種々の物(後述)がある。

何より(現在の)海上自衛隊では空母と艦載機の運用、それらに必要な人員に予算、更に日本固有の政治的事情といった現実的ファクターの観点からそもそもいずも型に固定翼機が載る機会自体訪れる日はないであろうという大前提があった為、あくまでちょっとした雑談の域を出ないネタであった。この件に関するマスコミとしての初報(2013年7月14日付)であるフジテレビの報道も、2日後の防衛大臣会見で小野寺五典大臣(当時)から直ぐに否定され「フジの飛ばし」として片付けられた。それ以降は永遠に結論の出ない無限ループ的な話の種として、ミリオタ界隈での定番ネタとして終わる筈だった。


ところが2017年のクリスマス、共同通信が突如「空母」運用機を本格検討 短距離離陸のF35B導入」という報道をして以降俄に話が動き始める。


この時点ではいつものマスコミによる(軍事音痴から来る)単なるフジテレビ同様の飛ばしでないかという慎重な意見が多勢だったが、年が明けて2018年2月11日、今度は読売新聞が「アメリカ海兵隊が運用中のF-35Bの臨時洋上拠点とする為に、いずも型の甲板部を大幅に補強する案が上がっている」との記事を報道し、共同に続く有力な大手ソースから続報が出た事から、各方面で大きな話題となった。追って産経新聞なども同様の報道を行なっている。その産経新聞の取材では「防衛省はいずもを戦闘機搭載可能な空母として改修する検討に入り、政府関係者の話ではF-35Bが離着艦出来る様にするのと同時に、航空自衛隊も同機を導入する方向で、将来的には空自機をいずもに搭載・運用する構想も浮上している事を明かした」「自衛隊幹部の話によれば、甲板の塗装を変えて耐熱性を上げるなど、ごく小規模な改修で搭載できるようになる見込み」との事であった。


F-35B(以下"B型"と表記)は、防衛省が計42機の調達を予定しているステルス戦闘機F-35A(以下"A型")の別仕様機である。

航空自衛隊では老朽化が深刻なF-4EJ改の後継としてA型の導入が進められており、さらに関係筋からは(日本での独自開発は間に合わず、他の戦闘機では既に生産ラインの再開が困難だったり陳腐化が始まっている為に事実上他に選択肢がないので)F-15JのPre-MSIP(近代化改修に適さない旧型)機の後継として更に追加購入するものとも見られている。

B型はAV-8Bの後継として開発された経緯からSTOL(短距離離着陸)およびVTOL(垂直離着陸)能力の両方が付与されており(この場合は分類上S/VTOL機という表記がなされる)、小規模な基地や艦載での運用に適しているCTOL(通常離着艦型)機を多数運用できるスーパーキャリアーを保有しているアメリカを除いた西側の空母保有国にとってはAV-8Bのノウハウをそのまま活かす事が出来るので(価格以外は)魅力的な選択肢である。

こういった事情から、有事の際に主要基地の長大な滑走路が破壊されても運用不能となる可能性が低く、いずもを洋上拠点とすれば更に運用の幅も広がることから「島嶼防衛を強化するための南西諸島方面への配備が検討されている」と報じられた。


これら報道もこの段階においてはやはり防衛省と小野寺大臣によって直近の実現は否定されている。

いずもに海兵隊のB型を着艦させて給油という程度ならば自衛隊幹部の語った通り甲板の改修で何とかなるであろうが、いずも艦内に収容して整備・運用するレベルまで行くと途端にハードルが高くなるからだとされる。

日本の安保事情にまつわる先述した諸々の事情もさる事ながら、実際問題いずも型は計画段階から対潜ヘリ運用と護衛艦隊の指揮統制に特化した多目的艦としての性格が強く、その航空艤装も弾薬庫から管制機構に至るまで全てヘリコプター運用を前提に建造されている為、固定翼機を運用するには甲板部分以外にもバウソナーの撤去、スキージャンプの設置といった大改装がどうしても避けられないという意見がある。

しかしそうなると今度は元々の運用目的である対潜ヘリコプターの運用能力が大きく低下し(いずも型の最大搭載機数は対潜ヘリ14機であり、艦載型固定翼機の運用を最初から想定した艦船に比べると流石に格納庫が狭い)艦体も細長いV字状の高速船形である為搭載機数はB型だけ搭載する場合でも平均でわずか6機、ヘリの分をB型搭載の方に回してもせいぜい10機程度になると見込まれる(参考)。これでは軽空母としては戦力的に中途半端でわざわざ運用する意味合いが薄いという懸念である。


しかし「殆ど無改造でもB型運用は可能。そもそもいずも型は基本設計の段階から既にそれが考慮されていた」という話もある。更には「(バウソナーを撤去せずスキージャンプも備え付けない)無改造の場合作戦行動半径(コンバットラジアル)は大幅に劣化する事になるが、それでも日本国内の陸上基地からA型やF-2をはるばる寄越す上に空中給油まで必要になる状態よりも遥かに弾力的な運用が可能」という指摘もされており、矢面に立たった小野寺大臣も「防衛力のあり方は不断に様々な検討をしている」として「将来的な可能性」については否定しなかった。

最終的には防衛省が行なっていた委託調査の末に「いずもの改修による空母化は可能」という(技術論に限っての)結論も報告されている。


これとは別に小野寺大臣は諸外国における強襲揚陸艦と言える「多目的輸送艦」(多機能輸送艦、多機能揚陸艦とも)の保有を検討したいと2014年に明かした事がある。こちらはその後あまりの動きの無さから雑誌記事などでは「防衛省が研究はしてみたものの(予算の関係で)結局立ち消えになったのでは」とも推測されているが、これに関連してか2018年3月の自民党安全保障調査会・国防部会の次期防衛大綱及び中期防に向けた合同提言骨子案において「多用途防衛空母」の保有検討を行うべきという事実上の発展案的なものが登場している。4月には調査会会長の中谷元元防衛大臣が「移動できる滑走路、母艦という意味で、非常に多用途で、例えば(機雷)掃海の母艦とか病院船とか、災害時の拠点とか、飛行機が離発着できる場を作ったらどうかということです」と考えを明かしており、その上で「おいおい導入したい。転用も含みます」と延べ、やはりいずも型を空母に改修する案を念頭に置いていることを表明している


その後政治的な都合を考慮して「多用途防衛母艦」に名称が変更された上で政府に最終的な提言案として提出された。

この段階ではかなりフワッとした内容であり費用対効果や実現可能性も微妙な所である上、海自側も「一切ノータッチ」と冷淡な反応であるが、兎にも角にも「空母の保有」を目指すべきという方向性が改めて示されたという点に関しては大きなトピックスとなった。


民間レベルでは、三井造船が社内研究で作成した揚陸艦の様々なコンセプトモデルを防衛装備展「MAST Asia 2017」で発表しており、今後求められている艦のニーズを想定した場合の企業側によるプランがある程度提示された事もある(参考)。

そして2021年10月5日、海上自衛隊はアメリカ海兵隊と共にF-35Bの発着艦検証作業を行ったと発表した。


大綱明記に向けての動き編集

結論から言えば、上記の流れは現在の状況からすると概ね事実だった様である。


2019年度より新たに示される予定の防衛計画の大綱(以下"防衛大綱")において政府は「いずもの改修による固定翼機運用能力の付与」「艦載機としてのB型導入」を盛り込む方針を決めたと国内外で報じられ、固定翼機の洋上運用を自前で行う腹積もりを本気で披露する事となった。

無論防衛大綱の形そのものがまだ完全には固まっていない為、最終的にどうなるかは不明であり、そもそもこの件に関しては当の防衛省自身が「防衛大綱への明記を見送る方針」という真逆のスタンスを見せていたのが当初第一報となっていた事もあり、先述の通り多用途防衛母艦の将来導入を提言していた自民党の国防族は見送りに反対という反発の声を上げていた。


与党からのそうした反応を受けてなのか、岩屋毅防衛大臣も真逆へ転換となった新たな方針に対して「せっかくある装備なので、できるだけ多用途に使っていけることが望ましい」と前向きな態度を示し、いずもの甲板を改修して艦載機が発着艦できるようにする「多用途運用母艦の導入」を策定中の防衛大綱に盛り込む方針を固め、今後、与党と具体的な文言の調整を行うことにしていると語った


艦載機として運用されうるB型の扱いもやはり現時点では本決まり以前の段階だが、これについても岩屋防衛大臣がマスコミの質問に対してその存在自体には言及しており、同じく案として上がっている「F-35を80~100機追加調達」というや、いずもで可能かつ想定されうるのは事実上S/VTOL機に限られる事から察するに、やはりこの調達数の内B型を必要数導入するのが既定路線だろうと予測も既になされている


ちなみに軍事評論家の岡部いさく氏は「「ヘリコプター搭載護衛艦」をF-35B搭載に改修して、それを今度は「F-35B搭載護衛艦」と呼ぶなんてなったら、もう何がなんだか。」と評している(その為の多用途防衛母艦というネーミングとも言えるが)。


運用方針については、平時では哨戒ヘリを搭載し周辺海域の警戒監視にあたる本来のヘリコプター搭載護衛艦としての機能・任務を維持し、米国の保有する空母を中心とした護衛艦を伴う艦隊を構成し他国の周辺海域に展開する空母打撃群運用や、かつての日本海軍の様な空母機動部隊運用は想定しないとの事。いずもでの固定翼機運用計画というインパクトだけが先行気味だが、要するに空母そのものではなく対潜護衛艦としての役割を備えたまま、水陸機動団がハードウェアファクター的に現在最も不足しているとされる強襲揚陸艦としての導入・運用も行える様に艦をアップデートすると言った方が実態に即していると言える。


大綱明記編集

政府は2018年12月18日、防衛計画の大綱と、平成31年度から5年間の中期防衛力整備計画(中期防)を閣議決定した。


大綱では


「柔軟な運用が可能な短距離離陸・垂直着陸(STOVL)機を含む戦闘機体系の構築等により、特に、広大な空域を有する一方で飛行場が少ない我が国太平洋側を始め、空における対処能力を

強化する。その際、戦闘機の離発着が可能な飛行場が限られる中、自衛隊員の安全を確保しつつ、戦闘機の運用の柔軟性を更に向上させるため、必要な場合には現有の艦艇からのSTOVL機の運用を可能とするよう、必要な措置を講ずる。


と固定翼機の海上自衛隊艦艇による運用を明記。


中期防ではF-35Bを18機取得し、いずも型護衛艦への搭載と空母改装を明記。さらに今後F-35Bを42機取得することを明記し、いずもが空母となることが現段階では確定した。

また、F-15pre-MSIP機100機の更新も同時に行う事で、A型B型合計147機を取得し国内最終組立を取り止め完成品の購入をすることで取得単価を低下させつつ、なおかつ既存のPre-MSIP機を他国に売却することで購入費用の一部を賄うこととしている。

また自衛隊全体の問題である人員不足解消の為、無人化、省力化の推進、福利厚生の充実、任期終了後の再就職の斡旋の強化、防大外からの幹部登用、栄典等の改善、給与の増額をもって対処することとした。



関連タグ編集

強襲揚陸艦 空母 海上自衛隊 護衛艦


はるな型護衛艦 しらね型護衛艦 ひゅうが型護衛艦

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