概要
輸送艦とは軍用輸送船のうち、国際法上の軍艦に当たるものを指す。一般的に上陸作戦用の設備を持たず、その点で揚陸艦とは区別される。ただし日本海軍においては一般に揚陸艦と呼ばれるものを輸送艦、一般の輸送艦を「運送艦」と呼んで区別しており、海上自衛隊においても揚陸艦に「輸送艦」の呼称を用いている。
解説
主に陸上部隊の海外展開のための輸送手段として用いられる。直接戦闘する機会は殆どないため、軍艦である必要性は小さい。
というのも、輸送艦は上陸作戦用の設備を持たないため、必然的に港から港への輸送となるが、接岸は港が友軍勢力下にあることが必須条件であり、友軍勢力下であるならば商船を以て輸送を行うこともできる。軍艦として保有するよりも必要に応じて商船を徴用する方が低コストであり、そのような場合商船の船員も運航要員として船ごと徴用される。この場合、軍の指揮下で軍人を輸送していても、船自体は軍ではなく船長の指揮下にあり、軍艦とはみなされない。すなわち輸送艦ではなく輸送船となる。
小規模な海外展開であれば揚陸艦での代用でも事足りてしまうため、大規模な海外展開を積極的に行う国でなければ軍艦としての輸送艦を保有するメリットは殆どない。
世界最大の輸送艦保有国はアメリカ合衆国である。アメリカ以外の純然たる輸送艦は中国海軍の保有する瓊沙型兵員輸送艦ぐらいのものであり、瓊沙型すら揚陸艦の補助的な存在でしかない。
