船員とは、船を職場として洋上で働く人々のこと。
職制
現在の場合、船員の職制は以下のように分類できる
職員と部員
船員の職制は職員(officer)と部員(rating)に大別することができる。
職員とは海技士の国家資格をもって船に乗り組む高級船員であり、船長以下航海士、機関士、通信士などがある。また、海技士の資格はないが、各部の管理職として事務長、船医も職員として扱われる。
一方部員とは、前述の海技士の資格を持たず、職員の指揮下で実際に船内の仕事を行う操舵手、甲板員、操機手、機関員などの普通船員を言う。
早い話がキャリア組とノンキャリア組であるともいえる。
また、船長は船内の最高責任者であり、船主の代理人としての性質ももつことから、特に船長のみを区別し、船長以外の船員を指す海員(seaman)という言葉もある。
各部職制
船員は最高責任者である船長のもと、以下のような複数の部門に分かれている。
甲板部
操船や貨物の積み下ろしなどを行う部門
- 船長(キャプテン)
船の最高責任者。船舶の指揮者として乗組員を統率し、船舶を運行する権限と、船主の代理人としての法的権限を有する。
日本船では一般的にキャプテンと呼称するが、英語では軍艦や公船の船長をCaptain、商船の船長をMasterと呼んで区別する傾向がある。
- 航海士(オフィサー、メイト)
船長のもとで甲板部を指揮し、船舶の運航を行う職員。詳しくは当該記事参照。
一等から三等までの等級が存在する。
船長同様、英語では軍艦、公船の航海士をOfficer、商船をmateと呼び分ける傾向があるが、日本ではオフィサー、メイトどちらの呼称も一般的に用いる。
- 甲板長(ボースン)
最先任の甲板部員であり、甲板部員の業務を指揮し、甲板部内の労務管理も行う。かつては甲板部員の人事についても絶大な権限を有していた。
日本では英語のBoatswainがなまってボースンと呼称する。
- 船匠(カーペンター)
船体整備の責任者。今日では一般的な職制ではなく、船内整備作業が特に多い船(帆船など)のみで見られる。ボースン同様、最先任の甲板部員が就任する。
- 甲板次長(ストーキー)
ボースンに次ぐ甲板部員のナンバー2、船内の備品、消耗品の管理を行う。船内呼称も英語のStorekeeperから
- 操舵手(クォーターマスター)
航海士とともに船橋で当直を行い、航海士の指示に従って操舵を行う。操船は当直航海士の(もしくは船長が直接)責任で行っているため、危険と思っても指示のない操舵は許されない。
- 甲板員(セーラー)
上長の指揮下で甲板作業を行う甲板部員。セーラー服は着ない。
機関部
エンジンはじめとする船内機器の運転、保守、整備を担当する部門
- 機関長(チーフエンジャー)
機関部職員の最高職位。機関部作業や燃料、電気、清水の管理について責任をもつ。
- 機関士(エンジャー)
機関長のもとで機関部作業の指揮を行う機関部職員。航海士同様、一等から三等の等級に分かれる。かつては航海士同様、夜も4時間交代で当直を行っていたが、今日では機関室の無人運転が可能なMゼロ船も普及しており、このような船では日中の作業が主な業務となる。
船内呼称はengineerがなまったもの。
- 操機長(ナンバン)
最先任機関部員。ボースン同様、機関部員の業務、労務を管理する。
船内呼称は英語のNo.1 Oilerから。
- 操機次長
- 操機手
- 機関員
無線部
陸上や他船との無線通信を担当する部門。今日では航海士が通信士の資格を持って兼務することが多いが、客船や調査船、練習船などでは専任の通信士が乗船している。
- 通信長(チーフレディオオフィサー、局長)
- 通信士(レディオオフィサー)
事務部
船内事務、調理、医務、船客対応を行う部門。客船では接客サービスを行うのは事務部の仕事であり、ほかの部門に比して膨大な人数となる。
また、調理や医務がそれぞれ司厨部、医務部として独立している船もある。
- 事務長(パーサー)
事務部業務の責任者、客船の場合、接客業務の責任者でもある。前述のとおり海技士の資格は設定されていないが、その職責上、一般的に職員として扱われる。
- 事務員(クラーク)
- 司厨長(司厨長、賄い長)
- 司厨員(ボーイ)
- 司厨手(コック)
- 船医(ドクター)
かつては貨物船でも乗船していることが多かったが、今日では貨物船の乗員数が25名程度となり、無線通信による医療支援が容易に受けられるようになったため、大洋航海を行う客船、練習船などでのみ見られる。パーサー同様、職員として扱われる。
- 看護長(看護長、ナース)
船医の乗船しない船では医師による医療行為を受けることができないため、航行中の船内では船舶衛生管理者の指定をうけた者であれば薬の処方、注射、縫合といった医療行為が限定的に許可されている。多くの商船では航海士が兼任するが、客船や練習船などでは専門の看護長が乗船している。医療行為ができるのは航海中のみであるため、陸の病院を受診することができる着岸中は医療行為を行ってはいけない。
船内呼称はナースとも言うが、中高年男性が圧倒的に多い