概要
特に旅客輸送のみに特化した船は旅客船と呼ばれ、同時に貨物運送を行う船を貨客船と呼ぶ。
この船舶は20世紀半ばに長大な橋やトンネルの建設が可能となったことや航空機による長距離移動が一般的になるまでは、特に日本のような島国や太平洋・大西洋の両岸間等においては重要な交通手段であった。
大西洋横断航路
特に大西洋横断航路のこの種の船舶は巨大化・高速化の一途をたどり、20世紀初頭、具体的な名称を出すとタイタニック、には既に全長200m超、第二次世界大戦までには全長300m、速度30ノットを超す巨大高速船も建造された。
ところが同大戦を機に飛躍的に発展した航空機技術は戦後の1950年代にはジェット旅客機の実現にまで漕ぎ着けるなどし、特に遠距離客を大いに奪った。
スピードを求める上層客はもちろん、大事な収入源である三等旅客( 少ないスペースで大量に輸送可能かつ扱いが悪くてもあまり文句を言わない三等は、採算の面では一等よりも大変重要なのである )も逸走が続き、大西洋航路はドイツ、イタリア、フランス、そしてアメリカも70年代までに撤退してしまい、イギリスでもとても複数隻の巨大船を維持出来る環境ではなくなってしまい、とうとう大西洋定期航路はイギリスのキュナード・ラインが運行していたクイーン・エリザベス2を除き全滅、長距離旅客船は観光や船舶の乗船そのものを楽しむことを目的とし、低価格の部屋でも基本的に個室を備えたクルーズ客船が主流となった。
しかし、現在でもクイーン・メリー2、クイーン・エリザベスを始めとする客船を擁しており、特にクイーン・メリー2はクイーン・エリザベス2の代替として21世紀に建造された唯一の長距離洋上横断航路対応のオーシャンライナーである。ただしこの船舶も他のクルーズ専用の客船も含め、基本的にはクルーズ客船として使用されることが多く、時代の流れを感じさせる。加えればクイーン・メリー2では利用するメインレストラン( 基本料金に含まれるレストラン )が等級に合わせて分かれているが、一番下の部屋でもシャワーやトイレの付いた個室であり、往時の「狭い・うるさい・貧しい」三等のイメージは皆無である。
日本における状況
日本における状況も同様である。かつては太平洋航路、植民地間航路などを運航していたものの、航空機の発達や国際状況の変化とともに減少し、移民のための南米航路も高度経済成長期の到来及び移民受け入れ国の需要減少により1972年に撤退するなど、減少し海外路線の定期便は現在韓国の釜山、中国の上海、ロシアのウラジオストク( 韓国経由 )のみである。
しかし国内、離島と本土を結ぶ連絡船や比較的遠距離を結ぶ路線は高速船なども利用され現在でも旺盛である。
また、フェリーでは往時のオーシャンライナーのように、スイートルームから雑魚寝部屋( 少なくとも現代の日本国内では等級を特等・1等・2等などと分かれさせ3等の記号は用いていない )までの利用料金に合わせた部屋を有している。ただし、これらの船舶も遠距離の航海を行うものは少なく、定期便は名古屋―仙台―苫小牧や神戸-大阪-奄美大島-沖縄などの長距離航路であっても2泊3日程度である。
関連イラスト
関連タグ
著名な旅客船
クイーン・エリザベス2 飛鳥Ⅱ にっぽん丸 ダイヤモンド・プリンセス