概要
「いずも」は、海上自衛隊が運用しているヘリコプター搭載護衛艦。いずも型護衛艦の1番艦である。艦番号はDDH-183。
平成22年度装備調達計画に基づく平成22年度計画19,500t型ヘリコプター搭載護衛艦として、ジャパンマリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で2012年1月27日に起工し、2013年8月6日に進水、2014年9月22日に公試開始された。2015年3月25日に就役し、現在横須賀の第1護衛隊群第1護衛隊に所属している。
艦名由来は令制国時代に島根県東部付近に存在した「出雲国」。また艦名としては2代目であり、先代は日露戦争から太平洋戦争までの長きにわたり活躍した大日本帝国海軍の装甲巡洋艦「出雲」である。
公募によって決まったロゴマークは艦名の由来に縁のある「ヤマタノオロチと天叢雲剣」となっている。
就役後初の公式任務は平成28年熊本地震に際しての災害派遣任務であった。
能力
前型であるひゅうが型護衛艦がヘリを同時3機まで離発着可能だったのに対し、いずも型は艦体の大型化によって同時5機まで離発着可能と言う破格の能力を持つ。このように航空運用能力は大幅強化されており、対潜哨戒能力の強化や災害時の捜索救難能力の拡大に繋がっている。
また、その肝心のヘリコプターを格納庫から飛行甲板に出し入れするためのエレベーターであるが、ひゅうが型と違い後部エレベーターはデッキサイド方式を取り入れている。これは波浪に弱かったり岸壁に接舷する際の邪魔になることが欠点だが、インボード式(甲板の真ん中に組み込んである方式)に比べ、同じ長さと幅でも格納庫を広く取れたり、機体の一部をエレベーターからはみ出させることでエレベーターのサイズより大きな機体でも運搬ができるという利点がある。
ひゅうが型ではCH-47、MH-53、MCH-101といった大型ヘリはエレベーターに収まり切らない為、搬送時には飛行甲板で露天繋止せざるを得なかったが、いずも型では問題なく格納庫へ収めることができる。
また広大な格納庫は艦載ヘリの搭載だけでなく、治療ユニットを搭載することで傷病者対応能力を上げたり、右舷のランプを通じて車両を搭載するなど、様々な用途に利用することが可能。
さらに輸送艦能力、給油艦能力、病院船能力を複合的に付与されており、多用途艦としての側面を持つ(乱暴に言うとひゅうが型から攻撃兵装を削減し、おおすみ型輸送艦のウェルドック以外の能力とましゅう型補給艦の能力の一部を継ぎ足したと考えればいい)。
諸外国では「ヘリコプター揚陸艦のようなもの」と説明されることもあるが、揚陸艦としての能力より、救難能力や対潜能力に重点をおいているためいわゆる「揚陸艦」とも似て非なるものである。
対潜能力で評価するならばSH-60Kを多数運用できるため艦載ヘリを含めれば相当なものであるが、揚陸能力はおおすみ型、ひゅうが型と同じく『帯に短し襷に長し』という印象は変わらない。
空母化
「いずも」は今後、改修によってF-35B戦闘機などの艦載型固定翼機の運用能力が付加される予定。言ってしまえば「空母化」である。
2021年10月5日には、海上自衛隊がアメリカ海兵隊と共に本艦でF-35Bの発着艦検証作業を行ったことを発表した。日本の艦船が固定翼機を発着艦させたのは戦後初の事だった。
現状はあくまでも「発着艦が可能」という程度の改修しかされていないため、今後はさらに「運用が可能」とするまでの改修を予定している。
空母化の詳細は「いずも型護衛艦」の記事を参照。