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概要編集

よく空母と勘違いされる事があるが、元は空母から派生した艦種であり、アメリカイギリスで余剰となった軽空母を改修し揚陸用のヘリコプター運用に特化させたのが始まりである。

こうして誕生したヘリコプター揚陸艦に、従来のドック型揚陸艦揚陸指揮艦の機能を集約し、小規模なものなら単艦で上陸作戦を行えるようになったのが強襲揚陸艦である。

米軍のワスプ級を例にとると、M1エイブラムス戦車5両を含む海兵隊遠征大隊一個大隊の人員と装備をまるごと収容でき、ウェルドックでは上陸用舟艇4艇を運用可能。航空部隊は6機のAV-8BハリアーⅡと各種ヘリコプター21機を搭載する。


強襲揚陸艦という名称は一時期流行したものの、通常は単に揚陸艦と呼ばれるのが主流である。

広義にはヘリコプター揚陸艦も強襲揚陸艦と呼ばれる事がある(実際米軍ではそう呼ばれていた)。


米軍式の艦種記号では、初期のものはLHA(Landing Helicopter Assault)が使われていた事もあったが、現在一般的なのはLHD(Landing Helicopter Dock)である。


冷戦期こそまともな強襲揚陸艦を保有していたのはアメリカのみだったが、現在ではフランスなど独自の強襲揚陸艦を建造する国が増え、スペインのように純粋な空母から強襲揚陸艦の運用にシフトした国もある。その高い揚陸能力は災害派遣・人道支援にも活用でき、ハリアーを運用する国なら軽空母としての任務も兼任できるという多目的さが理由である。



特徴編集

航空機運用能力編集

強襲揚陸艦はヘリコプターや舟艇を用いて、あるいは直接海岸に乗り上げることで人員、装備を揚陸することを目的とする艦である。それを支援するために攻撃ヘリコプターVTOL機、STOVL機を運用するものもあり、そうした艦は航空機運用に適した全通甲板を備えるためしばしば空母と勘違いされる事がある。

たしかに一部の強襲揚陸艦ではハリアー空母的な運用がされることもあるが、強襲揚陸艦の任務はあくまで地上部隊の揚陸であるため、カタパルトアレスティングワイヤーを装備しておらず、運用できるのはヘリコプターの他はVTOL(垂直離着陸)またはSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)機に限られ、現在は実質ハリアーⅡ一択となっている。ただしハリアーⅡは退役が進んでおり、固定翼機を運用しない揚陸艦も多い。

ハリアーⅡの後継としてはF-35Bが予定されている。F-35Bは空対空戦闘も可能ではあるが、垂直離着陸する場合は重量の関係リフトファンを搭載したことから非常に鈍重となり、A型やC型と比較すれば空戦能力は低くなっている

空母のような発着艦装置を持たないため、比較的大型になる早期警戒機や輸送機を運用することはできないが、ヘリコプターや戦闘機を運用することは可能であるため、運用的には空母に近づいていっている。(同様に空母も揚陸艦に近づいており、その好例がウェルドックを備えるイタリアの空母カヴールである)


揚陸能力編集

上陸作戦こそ強襲揚陸艦の本分である。上陸作戦においては敵の水際防御を突破した後は、敵が反攻の準備を整える前に十分な防御力をもった橋頭堡を構築する必要があり、それまでにできるだけ多くの人員、装備、物資を揚陸することが必要となる。よって揚陸作業のスピードは作戦の成否を決する重要な要素であり、その要たる強襲揚陸艦は空と海の両面で非常に強力な揚陸能力をもつ。ウェルドックと全通甲板を兼ね備える強襲揚陸艦は、ヘリコプターを用いた迅速な人員物資の揚陸と、上陸用舟艇を用いた主力戦車等大重量装備の揚陸を同時にこなす事ができる。また、上陸用の大部隊を収容する必要から、医療設備も空母や補給艦とならんでトップレベルのものを備える。それらの強力な揚陸能力は上陸作戦に留まらず、災害派遣などにおいても力を発揮する。先の東日本大震災では米軍の強襲揚陸艦『エセックス』が孤立した気仙沼市大島へヘリと上陸用舟艇を用いて物資人員の揚陸を行った。


指揮通信能力編集

上陸作戦は海軍、海兵隊は勿論、国や場合によっては陸軍空軍も参加する大規模な統合作戦となり、その指揮系統はあらゆる作戦の中で最も複雑なものとなる。司令部は通常の旗艦に収まりきらない大所帯となり、求められる指揮通信能力も非常に強力なものとなる。そのため従来では揚陸指揮艦という専用の艦種が用意されていた。

なお絶滅したわけではなく、米第7艦隊旗艦ブルー・リッジが現役の揚陸指揮艦である。

この艦の任務を受け継いだ強襲揚陸艦は指揮通信能力においても非常に強力なものを備える。その指揮通信能力は上陸作戦に留まらず、ほかの艦隊行動時においても有用であるため、韓国の独島級やフランスのミストラル級のように艦隊旗艦として運用される強襲揚陸艦も多い。


ハイバリューユニット化編集

輸送能力、揚陸能力、揚陸部隊の居住区画、航空機運用能力、指揮統制能力と様々な能力を盛り込んだ結果、現代の強襲揚陸艦は多機能・高価格なものになっている。

それにより軍事行動のみに用途を限定するには勿体ないということになり、MOOTW(Military Operations Other Than War = 戦争以外の軍事作戦)つまり災害派遣や人道支援などに用いる事にも重点が置かれている。それにより高度な医療設備や、通信能力を活かした会議・調整能力、航空機運用能力と輸送能力を活かした物資輸送のための海上プラットフォームとしての能力などが盛り込まれ、さらに多機能・高価格化に拍車がかけられている。

強襲揚陸艦ではないが、極端な例だとインドネシア海軍がLPDタンジュン・ダルベレ(ちなみに例のあの国が建造した艦である)を病院船ドクター・スハルソに改装している。

高価格化を抑えるため、フランスのミストラル級等の様に軍艦構造ではなく商船構造を採用して建造費を抑制しているものもある。


主な強襲揚陸艦編集

アメリカ合衆国編集

米海軍初の純然たる強襲揚陸艦。2015年現在、全て退役した。

現在世界最大の強襲揚陸艦で、米軍の現在の主力揚陸艦。段階的に設計変更が加えられており、同級でもかなりの差異が見られる。

7番艦に『イオー・ジマ』がある。

余談だが、『硫黄島』の読みを旧島民が呼ぶ『いおうとう』に統一した際はこの激戦地に強い思い入れがあるアメリカ海兵隊を中心として反対意見が噴出した。

8番艦『マキン・アイランド』は大きく改良が加えられており、機関が統合電気推進に変更されるなど、ワスプ級とアメリカ級の中間的な艦となっている。

現在計画中の新型強襲揚陸艦。ウェルドックを廃止して航空機運用能力に特化し、状況によっては正規空母並みの航空戦力を提供する。さらに揚陸能力の低下を危惧した海兵隊が「ウェルドックも付けろや」と強く要望したため、建造が始まっていた1番艦アメリカ及び計画変更ができない段階まで進んでいた2番艦トリポリはウェルドックなしのまま建造し、3番艦以降は航空機格納庫などを縮小してウェルドックを復活させることになった。それにより実に5万トンを超える超大型艦となる見込みである。

12隻の建造が予定されている。


フランス編集

フランス海軍での分類は指揮・戦力投入艦であり、揚陸作戦に留まらず、後方支援や人道支援までも行い、格納庫にコンテナ化された医療モジュールを搭載することにより病院船としても機能する多目的艦である。

建造費抑制のため商船構造を採用しており、非常に背の高い船型は印象的。


ロシアエジプト編集

フランスのミストラル級強襲揚陸艦と同級だが、多くのモジュールをロシアで建造した後フランスで結合し、その後ロシアに回航してロシア製の兵装を搭載する。そのため、ミストラル級と同じなのは船体と機関のみである。

1番艦はウラジオストクと命名され、艦名の通りウラジオストクに配備される予定。2番艦はセヴァストポリと命名され、サン・ナゼールで建造が開始されている。ロシアはさらに二隻の購入を打診していた。

しかしながらウクライナ問題の影響で2015年8月に契約が破綻し、宙に浮いた形の二隻はエジプトへ売却されガマール・アブドゥル=ナーセル(ウラジオストク)、アンワル・アッ=サーダート(セヴァストポリ)と改名された。


イタリア編集

全通甲板を持つが、ヘリの大規模運用能力はない。そういう意味では海上自衛隊おおすみ型輸送艦に近い。NATOではドック型揚陸艦に分類されるが、イタリアが強襲揚陸艦だと言うので強襲揚陸艦である

空母(軽空母)であるが、排水量と航空機搭載機数はイギリスのクイーン・エリザベス級空母の半分にも満たない。その代わり揚陸部隊や車輛の輸送も考慮した汎用的な設計となっており、ウェルドックを備えている。そのため、空母と揚陸艦の中間的な性格の艦である。


スペイン編集

スペイン初の強襲揚陸艦。スキージャンプ甲板を持ち軽空母運用や人道支援、揚陸能力を完全に排した輸送任務も考慮されており、格納庫は航空機、車両、海上コンテナと、あらゆる貨物に対応できるように設計されている。


オーストラリア編集

フアン・カルロス1世の準同型艦であり、スペインで建造された後、現在オーストラリアに運ばれて艤装され、竣工、就役した。

原型のフアン・カルロス1世同様スキージャンプを備えているが、オーストラリア軍は運用可能な戦闘機を持っていない。F-35Bの購入計画が持ち上がった事もあったが、海軍がこれを拒否したため、現在スキージャンプは訓練で米軍のF-35Bが利用しているのみである。

また固定翼UAVの搭載が決定しており、スキージャンプはそれなりに活用されている。


韓国編集

一番艦「独島」と、実質的な改型である二番艦「馬羅島」(2020年就役予定)がある。

一応は現在アジア唯一の強襲揚陸艦である(配備当初は強襲揚陸艦としていたが、近年は輸送艦とする韓国メディアの報道が目立つ)。

ウェルドックと全通甲板を兼ね備えるが、揚陸艦というよりは旗艦にウェルドックとヘリ運用能力を付加した多目的艦といえる(実際海外ではヘリコプター揚陸艦やドック型輸送揚陸艦に分類されている)。

可搬式スキージャンプを搭載すればF-35Bの運用が可能であるという情報もあるが、その場合の甲板長は140m程度しかないため本当に可能であるかは眉唾物である。

2030年ごろの戦列化を見込んで、本型の拡大発展型である空母兼務の30000トン級揚陸艦LPH IIの建造計画が推進されている。


日本にはないの?編集

ありません。


海上自衛隊が3隻保有するおおすみ型輸送艦は全通甲板を備えているが、航空機の運用能力はヘリコプターの発着艦と給油ができる程度で、本格的な整備は不可能。また不整地での揚陸能力としてはLCAC二隻またはAAV7水陸両用車しかない。

艦単体で行える揚陸方法としては舷側のカーゴドアを用いるが、それはつまり整備された港でしか使えないということである。

艦種記号の「LST」は戦車揚陸艦を意味するのだが、他の自衛艦の例に漏れず実態からは些かずれており、海外の軍事専門誌の分類ではドック型輸送揚陸艦となっている。


ただし、米国で行われた演習に於いてはおおすみ型輸送艦とひゅうが型護衛艦を一緒に運用することで強襲揚陸艦的な運用をしたことがある。

ヘリコプターの本格的な整備ができるものの揚陸手段を備えていないひゅうが型護衛艦と、LCACによる揚陸能力を備えたおおすみ型輸送艦で、『航空機運用能力』と『揚陸能力』という揚陸艦の能力の二本柱を分担したのである。

当然ながら、一隻の強襲揚陸艦の機能を二隻で分担したので効率は悪く、「このような作戦も可能である」という検証が目的であったと見られている。


なお、ひゅうが型に続いて建造されたいずも型護衛艦はひゅうが型護衛艦にはないRORO式の輸送能力、他艦への給油能力を持っており、強襲揚陸艦的な運用にさらに適している(ただし元々対潜ヘリ運用に特化したいわゆるヘリ空母であるため、LCAC等による海からの揚陸能力はない)。

いずも型は事実上、強襲揚陸艦からウェルドックを削ったものといえ、一般的な軍艦のカテゴライズに従うとヘリコプター揚陸艦に近い。


また日本政府は島嶼防衛や災害派遣といった多目的用途に供するため、本格的な揚陸艦を「多目的艦」の名称で導入を計画しており、2018年までの中期防衛力整備計画において機能や装備を検討し、その後導入計画を具体化するとしている(この報道が中国メディアにかかれば『2018年までにアメリカから購入する』と話が膨らんでしまったのはお約束である)。

当然ながら機能も規模も未定であるが、アメリカ級やワスプ級のような巨大揚陸艦になることは用途・運用・価格の面から考えにくい。


軍艦の輸出が原則として不可能であった日本の造船業では珍しく、2016年ごろから民間造船所である三井E&S造船(旧三井造船)とジャパンマリンユナイテッドが自社研究として将来揚陸艦(多用途護衛艦)のコンセプトデザインを進めて安全保障関係の展示会に出展している。

いずれも上記いずも型護衛艦を太らせて搭載能力を増やして最高速力を落とし(とはいえ揚陸艦では優速の22~24kt)、ウェルドックを追加したようなデザインとなっている。

ただし、いずれも全長ではワスプ級強襲揚陸艦より一回り程度小さく、排水量では半分以下という、本格的な揚陸艦というよりもあくまで通信・ヘリ・LCACのハブとしての多用途艦の性格が強い。


他だと海上保安庁が「多目的巡視船」という名称で、いずも型やおおすみ型を凌駕する総トン数約3万1千トンの強襲揚陸艦的な船の建造を予定している。公開された資料(参考(PDF))や過去の報道によると、大規模災害や有事において物資輸送や住民移送に利用するため、RORO方式の車両甲板やヘリコプター3機の搭載能力、民間人1,000人の収容能力(おおすみ型と同等)、警備任務のためのゴムボートなどの警備艇を多数搭載する。さらに現場での司令塔となるべく、高度な指揮機能、情報通信機能を持たされるなど、もはや小規模な強襲揚陸艦と言えよう。


ただし当たり前だが軍艦ですらなく、揚陸に使う船じゃない。なのでウェルドッグは持たず、搭載艇による海からの揚陸能力もほぼ有していない。一応、RORO方式で車両を搭載できるので、艦単体でも舷側のカーゴドアを用いた揚陸が行えるが、それはおおすみ型と同じで整備された港でしか使わない(何度も言うが揚陸に使う船じゃない)。

フィクション作品編集

ホワイトベース機動戦士ガンダム編集

どちらかと言えば、ヤマトと並んで宇宙戦艦のようにイメージされるが、地球連邦軍内の書類分類上では「ペガサス級強襲揚陸艦」とされている。詳細は当該項目で

ソードフィッシュ(サイバーナイト)編集

傭兵のユーリ・ドニエプロフが所有する強襲揚陸艦。スペースシャトルに似た外見を持ち、モジュールの運用と支援を行う揚陸能力を持つ事に加え、高度な分析能力を持つラボを有している。

名称不明(スプリガンMark.2)編集

火星軍が運用する強襲揚陸艦。月面ベースの制圧に使用されるが最新鋭機であるスプリガンMark.2の敵ではなかった。どう見ても戦闘艦で揚陸させるような外見とは思えないのが特徴。

グレートフォックススターフォックス編集

フォックスチームの移動拠点となっている宇宙艦。肩書きが超弩級強襲巡洋母艦となっているあたり、「強襲揚陸艦」としての側面も持たせていると思われる(実際、戦車ランドマスター潜水艦ブルーマリンを作戦区域に直接送り込むことが可能である)。

ちなみに64版ではランドマスターに関しては船体下部の艦載機発進口から直!接!投げ落とすというあまりに脳筋な方法を使っていたが、アサルトでは転送装置を使って送り込んでいる(ただしフォックス曰く「転送場所の精度はあまりよろしくない」らしい)。

トゥアハー・デ・ダナンフルメタル・パニック!編集

作中に登場する傭兵組織「ミスリル」の、主人公が属する、西太平洋を担当するトゥアハー・デ・ダナン戦隊の母艦である強襲揚陸潜水艦。作中のソ連において開発途上で放棄されていた大型潜水艦を素体に、テッサがウィスパードのブラック・テクノロジーとミスリルの資金力を用いて魔改造しており、VTOL戦闘機や輸送ヘリ・戦闘ヘリの発艦能力のみならず陸戦用のロボットであるASも多数搭載し、さらにADCAP魚雷や対艦ミサイル、巡航ミサイルの発射も可能。特殊な動力源や推進機関を使っているため本気を出せば60~70ノットの速度を出せ、かつ航行の際の騒音も通常の潜水艦よりずっと静かで、燃料だけに限れば8ヶ月は無補給で航行可能という化け物潜水艦である。

昨今のスパロボにも登場しており、第三次Zでは宇宙にも進出してしまった。


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