概要
『中間管理録トネガワ』、『1日外出録ハンチョウ』に続く「カイジ」シリーズのスピンオフ第3作目。講談社の月刊誌『モーニング』にて、2021年1月21日から2023年1月12日まで、実に2年に亘って連載された。コミックスは全6巻。
『賭博破戒録』に登場した一条聖也が帝愛の裏カジノに就職するまでの下積み時代が描かれている。
……のだが劇中を見る限り、描かれるのは本人の意思と裏腹にスマホのアプリゲームやスプラトゥーンに時間を浪費したり、バイト先であるファミレスやコンビニで働くフリーターとしての彼の姿ばかり。良くも悪くも何処にでもいる駄目な(?)若者としての一条の様子がクローズアップされるのだが、難攻不落のパチンコ「沼」が生まれるまでの工程や、豆苗で飢えを凌ぐ等の金欠生活ならではの節約の知恵が描かれる様子は読者に色んな意味で共感を集める事だろう。
登場人物
ご存知、後に帝愛の裏カジノの店長となって沼を開発する若者。岡山県出身の高卒で、年齢は18歳だが4話目で19歳になる。板橋区大山のボロアパート「さくらハウス」に在住。
冷静且つ理論的な思考をするが何かにつけて物事を斜に構えて捉え、つまらないプライドに固執する難儀な性格の持ち主で、それでいて一度落ち込むととことん己を卑下する等、気持ちの切り替えが苦手な人物として描かれている。
とは言え、バイト先であるファミリーレストラン『JoyCrew』における職場の人間関係自体は概ね良好で、やって来る客からのウケも良い為、社会人としてキチンとやって行けるだけの力はある(寧ろこのシリーズの主要人物は基本、帝愛の人間を除く大多数が多額の借金をこさえる様な、社会不適合のどうしようもないクズ揃いの為、相対的にマシに見えるのも無理からぬ話である)。
帝愛に入る事も、バッティングセンターで知り合った芦田と言う黒服から度々勧められるも最初は反対してたが、後に彼が経営する裏カジノ建設のプロジェクトの説明会にて黒崎と出会い、その素養を見出された事から遂に帝愛への入社を決意。3年近く暮らしたさくらハウスに別れを告げ、物語は終わる。
一条の側近の男で、下積み時代の彼のアパートの同居人。こちらも出身は岡山で、一条とは高校の先輩後輩という間柄である事が明かされた。因みに高卒の一条に対してこちらは高校中退の中卒。
細かい事を余り気にせず、何事にも積極的にチャレンジする人物として描かれており、気難しい一条に振り回されながらも、何だかんだ言って良き相棒として上手くやっている。
そして物語の終盤、帝愛への入社が決まった一条から一緒に付いて来てくれる様に頼まれたのを機に、後に裏カジノのオーナーとなる彼の側近の座に就く。
モモ太
ジャンガリアンハムスター。一条と村上の新たな同居人として7話から飼い始める。
モモ太のために3段クルーンの滑り台を作ったり、必死に歯車を回す様子を見て何かを感じ取ったりと一条に少なからず影響を与えている。
美沢
一条のバイト先のファミレスの同僚。滋賀生まれ大阪育ちで一条はその大阪ノリを苦手としていたが、意を決して腹を割って話し合ったことで友人となった。
一条よりは年上で料理人となって店を持つことを夢見ており、最終回で見事にその夢を叶えた。
山田
一条のバイト先のファミレスの同僚。福井県出身。
一条や美沢と共に食事や遊びに行くこともある。
上京して大学の医学部に入学するが、本当に自分が医者になりたいのかと思い悩み、今後の事を模索するために休学中。
それから進路がどうなったかは定かではないが、最終回では甥っ子が出来ていた。
三好 智広
カイジ本編にも登場する青年。
気弱だが調子に乗りやすく、いい加減な性格。人を値踏みして自分より上か下かをランク付けする癖がある。
その他
やはりというか、『1日外出録ハンチョウ』と同じくカイジ本編(賭博破戒録)とは時代が全く異なる。既に概要でお気づきかと思うが、一条の前史なのに掲載時つまり現在の時代設定である。
また、ハンチョウとコラボした読み切りまでも存在する(1日外出録ハンチョウ12巻に収録)。
関連タグ
中間管理録トネガワ、1日外出録ハンチョウ:過去のスピンオフ2作品。
この先、最終回のネタバレ
二人が帝愛に入り、さくらハウスに別れを告げてから数年後、一条がカイジとの戦いに敗れて地下へと堕とされた後の事が描かれた。
一条の失脚後、帝愛を辞めて無職となった村上は、数年ぶりに大山を訪れていた。
変わらない町並みに懐かしさを感じつつ、久し振りに立ち寄ったのは、一条が働いてた店『JoyCrew』。知り合いが皆いなくなった事を寂しがりつつ、ラインで彼らがその後の人生をキチンと歩んでいる事を知る。
やがて店を出た後、次に訪れたのは嘗て自分達が青春時代を過ごしたさくらハウス。
季節は春で、既に桜が満開の時を迎えていた。
自分達が住んでいた部屋を訪ねた時、そこに住人がいたが、村上は事もあろうにその住人に部屋を譲ってくれと懇願。全ては失脚した一条が這い上がって来た時の居場所を確保する為だった。当然ながら住人は最初、これを拒むが後でモデルの仕事が忙しくなって都心へ行く事になり、これから部屋を引き払う予定だったとして、晴れて部屋の譲渡は成立。
それから誰もいなくなった部屋で一人、静かに過ごす村上。やがて、その部屋のドアを開ける来訪者の登場で、物語は幕を降ろすのだった。
「一条さん・・・・?」