概要
黒須一也が高校生の時に転校してきた同級生。心臓が右にある。
ろくでなしの父親が蒸発し、残した借金苦から母親からも捨てられた少年。
ドクターTETSUが寄付している養護施設で子ども達を支配していたが、規律を守れなかった子どもを制裁している場面にTETSUが登場し、結果としてナイフが胸に刺さりながらも命乞いをしなかった反骨心を見込まれ、彼の内弟子となった。
医学を人の支配に使えると考え命を軽視する危険な人物だったが、凄まじい向上心でTETSUの教えを吸収すると同時に、TETSUの思惑でドクターKに興味を抱き、一也と接触。後にとある事件を通じて医師としての倫理意識が芽生え、一也の良きライバルとなる。
しかしある事情で帝都大学の受験に落ちてしまい浪人生となり、そのまま燃え尽きたようになってしまう。そんな自分を変えるため、そしてTETSUが譲介の思いを後押しするかのように大金を残して去ったため、T村にある一人の診療所で修業を積むこととなる。
村での生活が続いたある日、譲介の将来を案じて彼の母親を探し出したTETSUから、母が現在再婚して新たに一児をもうけていること、異父弟・徹が胆道閉鎖症のために肝臓移植が必要なことを伝えられ、複雑な思いを抱きながらも15歳下の幼い弟を救うために生体肝移植のドナーとなる。
徹を献身的に支える母の姿と、そんな母が自分を捨てたという矛盾に苦しむも、手術直前にTETSUから「母は譲介を捨てようとしたが思い直し、置き去った場所に戻ろうとしたもののその矢先に事故に遭ってしまい、退院した時にはもはや探す術もなかった。即ち捨てられたというのは誤解である」という事実を知らされる。
この一件で過去に負った心の傷と向き合い、性格もより落ち着いていった。
数多くの経験を積んだことで医者としても人間としても大きく成長し、村に縛りつけ闇医者になる事を望まない一人の根回しによってアメリカのクエイド財団にスカウトされ、一也の大学卒業と同時期に渡米する。
後見人だったTETSUのことはなんだかんだで慕っており、燃え尽きかけていた時期に独り立ちしようと考えた時にも恩義から決断しきれずにいた程だが、その後押しのために彼が自分の元を去った時には「また捨てられてしまった」と深く悲しみ、その後も髪を伸ばして似たような髪型にするなどしていた。なお、TETSUからはふざけた髪型と評され、「あなたには言われたくない」と返している。また、護身にテコンドーを習得していたTETSUのようにある場面では踵落としを披露している。
偏食(単なる好き嫌いではなく、前述の「捨てられた」事へのトラウマに起因する精神的なもの)で長きに渡ってカレー味の物しか食べられなかったが、渡米の直前にTETSUの根回しで親のしがらみを全て精算した後は「今はソバの気分だ」と零し、これを克服した事を匂わせている。
人物
暗い生い立ちから、性格の変化が著しい。
当初は捨てられたコンプレックスから人間不信を拗らせ、攻撃的で支配欲や顕示欲を潜ませていた危険人物だった。同時に小さく弱いものに対する愛情は持ちあわせており、小動物を殺して怪文書をばら撒いた相手に容赦なく報復したり、虐待の疑いがあるシングルマザーの元にナイフを持って不法侵入しようとしたこともある。結局子どもは笑い症で暴れてケガを負っていただけだったものの、愛情深い母親の存在を信じ切れないなど、歪な人格をしていた。
しかし一也との出会いから人を救う経験も増え、変化が訪れ始める。
受験失敗を経てT村で医学を学び始めてからは村民との付き合いもあって徐々に落ち着いていき、さらに『家族』へのわだかまりもTETSUの計らいで取り払われたことで、ようやく地に足がつき始めた。
その一方で向上心の強さは変わらず、時に一也にKの一族やオリジナルのKAZUYAのことを突きつけ、切磋琢磨しながらも馴れ合わず、しかし患者を前にすれば連帯感を発揮する不思議な関係を築いている。
海外留学の際には過去の自らの振る舞いから、自分は多くの人に支えられ、縁に恵まれていたと述べるほどの謙虚さも見せるようになった。
関連人物
後継者にするべく、施設から譲介を引き取った男。
TETSUの計らいで出会った同年代のライバルで、友人で、相棒の如く互いに実力を認め合った相手。
TETSUが去った後に彼を引き取り、自身の診療所で育て上げる。
- 岸田鈴子(きしだ・すずこ)
旧姓和久井で、譲介の母親。
元夫の借金苦から幼い譲介を捨てようとしたものの、出来ずに戻ろうとしたところで交通事故に遭う。意識を取り戻した頃には譲介の所在を掴めなくなってしまっていた。
- 岸田徹(きしだ・とおる)
鈴子の息子で、譲介の異父弟。
胆道閉塞症で、術後回復せずに肝臓移植が必要な状態に陥っている。
譲介とは入院中のわずかな時間に兄弟と知らされないままに交流する。
余談だが、TETSUの本名は「徹郎」で、読みは違うが何の因果か同じ漢字を使われている。
- 和久井京介(わくい・きょうすけ)
譲介の父で、内臓逆位体症。
ヤミ金から借金を抱えて蒸発し、結果として妻の鈴子にその負担が向かった。譲介の不幸の元凶。
- 島村益男(しまむら・ますお)
受験生時代に進学塾で交流があった年上の浪人生。譲介も珍しく心を開いていた。
共にレジオネラの集団感染で受験に失敗するも、譲介の励ましで再度の挑戦を決意する。
後に浪人生活の苦しみを感じ始めた譲介の元を訪れて環境を変える提案をし、譲介がT村で過ごす切っ掛けを与えた。