概要
無医村と言われる、N県の山奥にあるT村で診療所を営む男。
その正体は、先代KことKAZUYAの一族の危機に備えて、村の中だけで医療技術の研鑽に励んできた、裏のKの一族の一つ「神代家」の末裔。KAZUYAの病死によって表のKの一族が途絶えたことを憂慮したKEI、およびKAZUYAと縁のある高品龍一らの計らいで、高難度の手術の完遂を試験代わりとして、時の厚生労働大臣に特例で医師免許を発行してもらい、新たなるKとして医療の表舞台に立って活躍していく。
人物像
序盤は、一族の掟に従っていたために村外の人間に突き放すような態度を取っていたが、医師免許を取得して堂々と村を出られる様になってからは、人当たりは柔かくなった。
基本的にクールで生真面目な性格だが、悪意がないミスならば意外にも声を荒げずに反省を促すに留めるなど、懐は深い。
しかし、堅物で融通が利かない部分があり、治療ではなくスクープのために病院に居座ろうとする記者の入院には厳しい態度を取ったり、フィクションの演出にマジレスしている。
外見
風貌は生前のKAZUYAと似ており、KAZUYAを知る者のほとんどが彼の面影を見出すが、一人の方がやや細身で眉毛の形状がシャープ、もみあげが長いなどパーツ単位では異なる面も多い。カラー時の髪色もKAZUYAは「赤紫の艶がある黒髪」だが、一人は「薄青の艶がある黒髪」である。
連載初期はそこまで意識した書き分けはされていなかったが(というより序盤はKAZUYAに似ている要素がフィーチャーされていたのもある)、KAZUYAのクローンである黒須一也が成長し、KAZUYAの面影を纏うようになってからははっきりと描き分けられている。
来歴
父・神代一郎(かみしろ かずろう)と母・神代静江(かみしろ しずえ)の一人息子として生まれる。その他、一家に昔から仕える執事の村井とも家族同然の付き合いがある。
一人が高校生の頃、静江が医療用品の買い出しに村の外へ出かけた際、交通事故に遭い他界する。このときに一郎も同行していたため、彼の手による臓器移植を受ければ助かる見込みがあったが、一郎は無免許医であることを明かすわけにいかず、当時の臓器移植の法的規制にも阻まれ、結果的に静江を見殺しにせざるを得なかった。このことがきっかけとなり、一郎はクローン臓器の密造組織に接触していたが、組織の実態を知った後に組織を抜け、現在は第三のKの一族「神津家」の跡取り娘を指導している。
一郎の失踪後は村井の厳しい指導を受け、一族の後継者としての実力を身につけ現在に至る。
能力
- 神業のメス
医療技術もKAZUYAに負けず劣らずであり、最新の技術にも精通している。
ただし性格は若干異なり、一人の方がクールだが、他人特に目上の相手やその分野のスペシャリストに対して敬意を見せる事が多い。KAZUYAと比べて良い意味で最低限だけ丸くなっている、というべきか。
- 次代を育てる者
KEIに請われてKAZUYAの後継者として活動する一方、一也やその友人たちなど後継者の教育にも力を入れている。
彼の実戦型の指導は厳しくも気配りが行き届いており、一人一人に合わせて適切。新人故に未経験などから来る見落としがちなケアレスミスや最新機材への興味など逸る気持ちを、安易に短所として捉えずそう感じる心情は理解した上で声を荒げたりせず指導やフォローをし、大きな失敗をした際もそれ以上迷走して取り返しの付かないことをする前に即座に現場から遠ざけ(その際は反省を促しつつも「悪いのは未熟なまま現場に立たせた自分」と言い、相手に責任は押し付けない)、一見向上心が控えめで腕がおぼつかない龍太郎にも、早くはないが慎重でお人好しな性分を見抜いて敢えてペースを落として陰ながらフォローする形で指導している。
しかもこれらの指導は(たとえそれが必要であっても)基本的に本人や親族などの当事者から請われて初めて動く形を取っており、強制的にスタートを切らせることはしていない。図らずしもKAZUYAが(恐らく自身がスパルタ教育で刻まれたトラウマで)持ち得なかった部分をほぼ完璧にカバーしている形になる。
龍太郎を受け持つ頃には医者としてだけでなく指導者としても熱い心を宿すに至っており、「若い医者や未熟な研修医を見ると、彼らを富永や一也と同じレベルまで引き上げたい、と思う自分が顔を出す」と、総合病院を切り盛りする名医となった後の富永に語っている。
- 野獣の肉体
医者でありながら異様にフィジカルも強く、施錠された鉄扉を蹴破る、崖から滑落しそうな車を結び付けたロープにより腕力のみで引き上げるなど、人並外れた芸当を見せる事もしばしば。悪党を相手にした場合パンチやキック一発でのしてしまう事も多い。
余談だが、KAZUYAが鍛えていたのは、一族の性質から敵が多くいざと言う時の護身以上に、父を失った事故の様な時の無力感と、外科手術は体力勝負なので、長時間の手術を行えるよう鍛えていた。そのため、Kの一族が鍛錬に励む歴とした理由があるので、一人もそれに倣って鍛えていてもおかしくない。
余談
作中の時間は現実世界と連動しており、2023年現在でもう四十代くらいになるはずなので、読者からは「もう一つのKの一族としての後継者を残さなくていいのか?」とツッコまれている(序盤にKEIの申し出を断った理由にもつながるため)。だが一応前述の通り、血族としてではなく技術・ミーム的には既に多数の後継者(候補)を輩出しており、そちらの方面では現在進行形で積極的に動いている。
また、神代家と同じように、離島・破留島の中でのみ活動しているKの一族「神津家」の存在も明かされており、そちらの跡取り娘である「神津海(こうづ かい)」の指導が一人の父・一郎の手で始まっていることから、もしも神代家が途絶えた場合であっても、その際には別の一族がバトンを受け継ぐことになると思われる。
ちなみにだが、女性関係は一番近い女性は看護師の麻上夕紀と、診療所手伝いのイシさんだが、仕事関係以上の相手と見ていない。また、記者の竹宮穂波から好意を抱かれていたが、一也が積極的に話に関わる様になってからはマスコミと縁がなく、恋愛関係に発展することはなかった。