概要
四国や佐渡島のほか、青森県や岩手県に伝わる狸の霊が人に取り憑く心霊現象の一種。
取り憑かれるのは主に人が狸に悪戯を働いたり、彼らの巣を荒らした事が原因となっており、もし狸に憑かれると、その者はやたらと大食いするような症状が現れるとされる。
ただし栄養自体は狸の方に行くらしく、腹は膨れるものの、その反対に憑かれた本人は段々と衰弱して行き、やがて命を落としてしまうという。
このほか憂鬱状態に陥ったり、破壊衝動に駆られたり、腐敗物を好む悪食、原因不明の不治の病等々の報告例もあり、中には体の一部が隆起して、それが喉の所まで来るとその人物は死んでしまうという非常に恐ろしいものもある。
狸憑きを退治するには、修行を積み重ねた力ある修験者やな聖天行者どに頼むよりほかないとされている。
また狸憑きはオヨツさんやトマコ狸の様な例外はある物の、家筋に憑くといった話は少なく、婚姻を避けるといったことは無いが、香川県の高地にはこれを逆手に取って使い魔として古狸に頼みごとをする為に食べ物を与え、かねてからの仇敵視している家に祟る事を依頼する邪法があるという。
なお、神に昇格した狸は人に憑くことができなくなると当時は考えられていた。
さらに近代に入って、愛知県辺りの若者が、「狸よせ」と呼ばれる降霊術(こっくりさんみたいな)を行っていた。
ある依り代役に目隠しをし、幣束のようなものを持たせ、数名が
天にとろとろ 地にとろとろ
あさやまはやま 羽黒の権現
大明神
おいさめ召されおいさめ召され
と何回も唱えると狸で表される何かが依り代役に来るとされる。