概要
リー・エンフィールドと共にイギリスを代表するリボルバーシリーズである。
MkⅠ~MkⅥまで共通して、3~6インチバレルのバリエーションと.38口径仕様の別系統があり、これは主に警察・民間向けだった。
始まりは1878年にミカエル・カウフマン技師が開発したダブルアクション/シングルアクション両用のトップブレイク式リボルバーウェブリー・カウフマン(Webley-Kaufmann)。
シリンダーとハンマーの間のフレーム上部にある開閉用のスプリングボタンを押すことで照準器を備えたフレームを開放しトップブレイク出来る独特なロックシステムを搭載していたが、しかしこの時の設計では強度確保が難しく、100丁未満しか生産できなかった。
しかしこれに可能性を感じたウェブリー社は開発を続け、1881年にカウフマン技師が退職した際にはその特許の全てを買い取り開発を継続、バレルラッチロックシステムを搭載したウェブリーグリーンを製造し、これが将校の一部と民間にウケ始めると成功を確信したウェブリー社は更に改良を進め、軍に正式採用してもらうべく1887年に売り込んだ。これがMkシリーズの最初であるMk1となる。
当時から高品質の銃を作り名声を得ていたウェブリー社を無碍に出来ず試験導入されたMk1は兵士達から大ウケし1887年11月8日にピストル・ウェブリー・Mk1として正式採用となる。
その後、時代のニーズに合わせてちょくちょく改良が続けられ、ボーア戦争期にはMkⅣが正式採用になり、後継ナンバーの生産が遅れた事から第一次世界大戦に参戦することになる。
そして大戦最中にはMkⅥが開発され、これが一躍有名となる。というのも、この銃はトップブレイク式としては異例の過酷な塹壕戦にすらついていけるほど非常に信頼性が高く頑丈な銃だった。ウェブリー社の努力が実を結んだ事が証明された瞬間である。
さらにスピードローダーのいち速い導入、塹壕戦向けの銃剣、高威力を生かしたカービン化などの塹壕戦に向けたカスタムパーツの充実とそもそもの生産数がかなり多かった事から他の国では見ないほど色んな兵種に配備され、数多の同盟国にも供与された事で他国も認めるイギリスを代表するリボルバーとなったのだった。
しかし、1931年に現代戦において採用弾薬455ウェブリー弾の反動のキツさによる連射しずらさが合わないとの懸念から最適な.38S&W弾に変えるべきと開催された次世代拳銃コンペにて、同社は.38口径系統のMkⅣを提出したが、ウェブリーに外見だけ似たエンフィールドNo.2Mk1に敗北し、正式採用の座から降りることになる。
またエンフィールドNo.2Mk1が似すぎていたことからウェブリー社は訴訟を起こしたが、これも示談となり、完全に後進に道を譲る…かと思いきや1938年に生産数を上げるためにダブルアクションオンリーに簡易化したエンフィールド No.2 Mk1*がダブルアクションで引きが重く現場で不評になり、更に第二次世界大戦で生産数も不足すると現場の兵士達は昔から信頼を置いていたウェブリーリボルバーを選び始めた。
そして戦後、暫くはイギリス恒例の意地でも使い続ける精神を持ってエンフィールドNo.2Mk1と共に軍用に居座り続けたものの、50年にはコンペでブローニング・ハイパワーを採用し、長い時間はかかったもののゆっくりと自動拳銃に置き換わっていった。
主なバリエーション、派生型
ウェブリー=フォスベリー・セルフコッキング・オートマチック・リボルバー
ジョージ・フォスベリー中佐が開発したリボルバーと自動拳銃の利点を併せ持とうとした騎兵用リボルバー。ウェブリー=フォスベリー・オートマチック・リボルバーを参照。
グリーン
1882年から1885年まで販売されたカウフマンの改良型。ウェブリーガバメントとも呼ばれる。
大きな違いはバレルロックシステムで、開放レバーと照準器を兼ね備えたラッチが上部と下部のフレームのつなぎ目を押さえる形で止める独特なシステムに変わっている。このシステムは優秀で後のMkシリーズにも採用され続けた。民間の他、将校も私物で購入するほど人気があった。
MkⅠ
1887年から製造開始されたグリーンの軍用の改良型。アメリカから「ザ・ブリティッシュ・ピースメーカー(英国の平和の使者)」の愛称で呼ばれた。
鳥の嘴のようなグリップを含め全体的な印象はグリーンと一緒だが、4インチバレル化や留め具など各部品が変更されている。
MkI*という既に配備していたMkⅡの仕様に改造した派生型がある。
MkⅡ
1895年から製造開始された改良型。
新しい形状のハンマーと硬化鋼のブラストシールドが追加され。グリップも変更された。
MkⅢ
1897年から少量製造された改良型。陸軍は殆ど採用せずほぼ全てが海軍に行った。上部ストラップに「ブロードアロー」の承認スタンプが押されているのが特徴。シリンダーに関係したシステム周りに改良が施されている。
MkⅣ
1899年7月21日に採用された再設計型。「ボーア戦争モデル」とも言われる。
基本構成はMkⅢに沿ってるが、高品質スチール材の使用や部品位置の調整や形状変更が行われている。これによって前と使用感を変えずに高耐久を実現した。
これを元に、無煙火薬の.38/200S&W弾にしたMkⅣ.38/200 サービスリボルバーという派生型もある。
MkⅤ
1913年に採用された改良型。このモデルからバレルの長さを複数から選べるようになった。
無煙火薬の弾薬に対応するため、シリンダーが太くなっている。
MkⅥ
1915年に採用された改良型。このモデル以降、軍用からは身を引くも、警察用としてイギリスと関係した様々な場所で運用された。
グリップ変更の他、フロントサイトが取り外し可能。
MarkⅦ
2016年にアンダーソン・ウィーラー社が開発したリメイク型。
MkⅥを元に出来る限りオリジナルのデザインで、なおかつ現代で通用するように357マグナム仕様にして素材変更もしている。なお値段は約10,000ドル、更に357マグナムはイギリスでは軍用弾薬に指定されてるので民間人は買えない。高級志向マニア向けの一品である。
フィクションでの使用
アラビアのロレンス - 第一次大戦のアラブ反乱を支援したイギリス軍将校トーマス・エドワード・ロレンスを主人公に描いた映画。主人公を含め味方側が全体的に使用する。
インディ・ジョーンズ - インディ・ジョーンズを主人公とする冒険活劇映画の金字塔。3作目の最後の聖戦と4作目のクリスタル・スカルの王国で主人公インディ・ジョーンズがグリーンを使用する。
BF1 - 第一次世界大戦を題材にしたPvPメインのFPS。MkVIがサイドアームとして使用可能。
スナイパーエリート - 第二次世界大戦を舞台に工作員カール・フェアバーンを主人公とし任務をこなす狙撃TPSシリーズ。2作目のV2以降カールの所属がイギリス軍になったため、サイドアームとしてMkⅥがシリーズ通して使用可能。
ドールズフロントライン - 民間軍事会社に雇われた指揮官として、会社の備品である自身が使用する銃と同じ名を与えられたアンドロイド「人形」を指揮して災難を乗り切るシミュレーションゲーム。ウェブリーの名が与えられた人形が使用する。
性能
※軍用は正式採用時モデルを記載する
銃種 | カウフマン | グリーン | MkⅠ | MkⅣ | MkⅥ | MkⅦ |
---|---|---|---|---|---|---|
全長 | 279mm | 286mm | 236mm | 241mm | 241mm | 291mm |
銃身長 | 173mm | 152mm | 102mm | 102mm | 102mm | 152mm |
重量 | 1080g | 1130g | 960g | 995g | 995g | 1205g |
使用弾薬 | .455ウェブリー弾、476エンフィールド弾 | .455ウェブリー弾、476エンフィールド弾 | .455ウェブリー弾 | .455ウェブリー弾 | .455ウェブリー弾 | .357マグナム弾 |
装弾数 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 7 |
口径 | 45口径または47口径 | 45口径または47口径 | 45口径 | 45口径 | 45口径 | 38口径 |