概要
1935年にポーランドのラドム造兵廠でピオトール・ヴィルニエブツィック(Piotr Wilniewczyc)と、ヤン・スコルツィピンスキー(Jan Skrzypinski)の2名によって開発されたショート・リコイル式軍用拳銃。左側グリップカバーにラドム造兵廠を表すFB、右側グリップカバーにラテン語で「力」を意味するviと初期に書かれていた設計者二人の頭文字を取ったWiSの文字を合わせたVisという文字が刻まれており、対戦車ライフルの方のWz.35との混同を避ける意味でも屡々そこから取ってFB Visと呼ばれる。また表記ブレとして、日本ではwz1935、海外ではVis wz35やラドム拳銃、マイナーな呼び方だとWiS35とも呼ばれている。
特徴として、9mm口径を使用する大型ゆえの反動の軽さ、6,000発以上発射した後でも信頼性が維持されている堅牢さがある。
これは設計したピオトールが「最も成功した最新の武器モデルを選択し、それに基づいて完璧な武器を作る」というコンセプトを元に完成させた結果であり、参考にはブローニング・ハイパワーとコルトM1911とルビーコルト(コルト1905をベースとし、グリップセーフティを無くし9発マガジンにしたルビーピストルの派生型)が使われているのが確認されている。
見た目からコルトM1911のコピーと思われることも多く、実際ネット上の幾つかの記事ではコピーとして扱われている。
始まりはヴィルニエブツィック技師がワルシャワの民間企業PWU社にいた時にトライアルに持ち込んだWz.1928という拳銃図面から始まり、1930年にラドム造兵廠でカジミエシュ・オルダコフスキ所長の下で、図面をブラッシュしたWz1930という最初のプロトタイプが作られ、1932年にはwz1932というプロトタイプを制作して特許を取得し、134丁が製造され、その後テストを得てブラッシュアップされ1935年に完成、同年の後半には大量生産が始まった。
そして翌年、ポーランド軍に歩兵および騎兵将校の標準銃として正式採用された。その後、他の部隊にも装備され、1942年までに既存の拳銃はすべて退役する予定だった。1938年半ばまでに、機甲部隊と空軍に導入されていたとされる。最終的にポーランド侵攻前には、発注された90,000丁のうち約49,400丁がポーランド軍に納入されていた。
ポーランド敗北後はラドム造兵廠はドイツ側に接収されたため、「9mm Pistole 645(p)」という名前で生産され、側面にはP.35(P)、VIS Mod.35と刻まれる事もあった。ちなみにP.35のPはPolnischの略である。
ドイツ占領下では312,000丁から380,000丁ほどが生産され、ドイツ軍の空挺部隊と憲兵に配備された。しかし、反感を持っていたポーランド人はその一部をちょろまかしポーランド国内軍に流したと言われている。
主なバリエーション、派生型
- 戦前は.22LRモデルと7発マガジンの.45ACPモデルが企画されていたが敗戦により頓挫した。
- ドイツ占領前と占領後ではクオリティが違う他、3つの簡素化モデルバリエーション、bnzという署名以外一切の刻印の無いオーストリアのステアー製の1944年の最終簡素化モデルがある。
- 戦後は長らく生産されていなかったが、1997年8月以降から当時の設計図を元にコレクター向けに局地的な再生産が行われ、その後2017年12月に海外市場向けに継続生産する事が決定した。
- その他、アルゼンチンの競技会のためだけに木製のショルダーストックが制作されたことがある。
フィクションでの使用
灰とダイヤモンド - ドイツ降伏直後のポーランドを背景とするロンドン派の抵抗組織に属した一人の青年を描いたポーランド製の白黒映画。様々な場面で登場する。
ヨルムンガンド - 武器商人ココ・ヘクマティアルの商談を描くTVアニメ。ポラック少佐の部隊の兵士が所持している。
DeadfallAdventures - 1938年を舞台にしたトレジャーハンターの冒険活劇モノのアクションアドベンチャーゲーム。主人公の武器として使用できる。
LandOfWar-TheBeginning - 、第二次世界大戦初期を舞台にした兵士の戦いを描くシングルプレイFPS。ポーランド侵攻のステージで使用できる。
性能
全長 | 205mm |
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銃身長 | 120mm |
重量 | 950g |
使用弾薬 | 9mmパラベラム弾(9×19mm) |
装弾数 | 8 |
口径 | 38口径 |
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