概要
マクラーレンMP4/7Aは、1992年のF1に投入されたF1マシン。
そして、この年限りで第2次活動を終了させ、F1から撤退したホンダがマクラーレンにエンジンを供給した最後のマシン。
マシンメカニズム
シャシーの名称がMP4/7ではなくMP4/7Aとなったのは、当初からBスペックを投入する予定があったからである。
マクラーレンはTAGエレクトロニクス製のアクティブサスペンションを搭載したMP4/7Bを準備しており、シーズン中のテストでも走らせていたが、マクラーレン製アクティブサスペンションの実戦投入は翌年のMP4/8に持ち越しとなる。
これまでのMP4シリーズでは、オス型成型のカーボンモノコックにアッパーカウルを被せる手法を継続してきたが、MP4/7Aではトレンドに従いメス型成型に変更された。曲線の付いた細いノーズは(控え目ながら)ハイノーズ化されている。
その一方で、(当時のF1では)空力性能とシャシー性能のマッチングの良さと軽量でコンパクトでありながらもパワフルなエンジン(大きくて重いV12エンジンでは不利)が求められており、もはや時代遅れになりつつあったマクラーレンらしいコンサバティブなマシンデザインのコンセプトでは到底太刀打ち出来ないことは明白だった。
ハイテク装備関連では、前年のMP4/6からテストしていたセミオートマチックトランスミッションが正式に採用された。また、エンジンのスロットル制御は機械式に代わり、電気式のドライブ・バイ・ワイヤも導入されている。
(ホンダとしては最後の)V12エンジンであるRA122E/Bエンジンは、シャシー搭載時の空力性能を阻害しないフォルムを追求するため、オイルポンプなどの補機類を全てエンジンの前半部に配置し、エキゾーストマニホールドの拡幅を防ぎ、またテールパイプをエンジン付近に配置することで排気系レイアウトをコンパクトにした。
実戦投入までの経緯
ドライバーは前年と同様、アイルトン・セナとゲルハルト・ベルガーのコンビ。
当初、チームは開幕3戦を前年に使用したMP4/6を改良したMP4/6Bで戦う予定であった。
これは信頼性が不安視される序盤を、信頼性が確立されている前年型のマシンで確実に乗り切る戦略を取ったことによるものであった。また前年の激しいタイトル争いにより新車のテスト及び開発が遅れていた事も一因であった。
しかし、(蓋を開けてみれば)アクティブサスペンションなど最先端の電子制御システムを開幕から投入したウィリアムズ・FW14Bが抜群の信頼性と圧倒的な速さを見せ、ナイジェル・マンセルが開幕2連勝を飾った。
開幕ダッシュに失敗したマクラーレンは、第1戦南アフリカGPで惨敗した翌日、イギリスのシルバーストン・サーキットでテストドライバーのマーク・ブランデルにより、新車・MP4/7Aの実走テストを開始した。出来立てほやほやのマシンでは前年型との比較もままならなかったが、旧型車ではFW14Bに太刀打ちできないことが明らかであった。
そして、予定より大幅に前倒しして、第3戦ブラジルGPから新車・MP4/7Aが実戦投入された。
デビュー後
このブラジルGPで、マクラーレンはなりふり構わぬ物量戦術・人海戦術に打って出た。
シャシーの使用制限が無かった当時、レースカー2台に加えてTカー(スペアカー)1台とスペアモノコック1台を持ち込むのが常であったが、ブラジルGPでは新車MP4/7Aの3台に加え、万が一のために旧車であるMP4/6Bも3台、さらにはMP4/7A用として投入した新型エンジン・RA122E/Bと旧型のRA122Eをそれぞれ6機ずつ持ち込み、マクラーレン、ホンダ双方ともに通常の倍の人員で臨んだ。
しかし、予選ではポールを獲得したマンセルに3位のセナは2秒も離された上、レースでは両者とも序盤でリタイアに終わった(セナはエンジンのミスファイア、ベルガーはギヤボックストラブル)。
その後のサンマリノやスペインでもリタイアが続いた。
シーズン初勝利は第6戦モナコGP、マンセルのタイヤトラブルによりセナが優勝。第7戦カナダGPでもベルガーが勝利しチームとしては連勝を果たしたが、ウィリアムズとの差は容易に詰まらず、逆に当時は気鋭の若手であったミハエル・シューマッハをエースとするベネトンとコンストラクターズ2位争いを演じることとなった。そんな中、この年のイタリアGPでホンダは同年限りのF1活動休止を発表した。
ホンダは第2期最後の地元レースとなった日本GPで特別スペック(鈴鹿スペシャル)を投入したが、セナはエンジントラブルにより早々にリタイアした。
最終戦オーストラリアGPの予選では、ウィリアムズとの差をコンマ5秒差まで詰めた。最終的に5勝を挙げコンストラクターズ2位は死守したものの、1988年から続けたコンストラクターズ連覇は4でストップした。
セナとベルガーはドライバーズポイントでシューマッハに敗れた。(セナ4位、ベルガー5位)
(ライバルチームと比べると)リタイアが多く、(コンストラクターズ2位争いのライバルだったベネトンに比べると)エンジン、ギアボックスの信頼性が劣った事が敗因と言える。故に完走率は50%を下回る結果になった。
また、アクティブサスペンションなどのハイテク装備を装着したBスペックについては投入されなかったが、プログラミングシフト、トラクションコントロールは投入された。
関連タグ
アイルトン・セナ ゲルハルト・ベルガー McLaren 本田技研工業 F1
先代型MP4/6
後継型 MP4/8