概要
言わずと知れた秋の名物。漢字表記は「秋刀魚」が一般的だが秋光魚とも書く。
太平洋北部(日本海を含む日本近海から、アメリカ大陸沿岸のアラスカおよびメキシコまでの海域)に生息し、広い範囲を回遊して暮らす魚である。
日本では秋の味覚を代表する大衆魚として人気が高く、かつての大衆魚が漁獲高の減少で年々稀少になっていく中でも豊富に掛かったのでまさに庶民の味方であった。
しかし昨今では歴史的な不漁で、獲れても小ぶりなものばかりが記録されており、しかも海外でも広く賞味されるようになったことで中国・台湾などの漁船が日本近海まで遠征してサンマを盛んに漁獲するようになった。消費者人工が増えても天然モノの資源であるサンマ自体が都合よくウジャウジャと増えるわけないので、このままいけば本当に枯渇(絶滅)するのではないかという懸念が上がっている。
また地球温暖化で水温が上がり回遊ルートが変わったことなども指摘されていて、同様の例はスルメイカなどにもみられる。
旬は秋で、この頃になると脂がのって特に味が良くなる。塩焼きにするのが定番の食べ方で、大根おろしや柚子、酢橘などを添えて食べると美味。蒲焼や酢〆、近年では保存技術の向上により刺身で食べる例もある。
良いサンマは「持ちあげたとき体が曲がらずまっすぐになる」「目が濁っていない」「下唇が黄色い」ものとされる。
分類は【ダツ目-ダツ上科-サンマ科-サンマ属】。メダカやサヨリ、トビウオもダツ目に属しているためサンマとは親戚。
かつては寿命が1年程度とか言われていたが、最近の研究で2年程度らしいと判明。短いのに変わりはないが…。
頭には耳石がある。これが大きくなっていくとカルシウムが沈着し大きくなっていく。
バランスを保つための装備。
漁獲法は沖合での流し網漁や光に集まる習性を利用する棒受け網漁で行われる。
たまにサンマを港や沿岸で釣ろうとする人がいるが、基本的には沖合まで出ないと釣ることは出来ない。サンマは回遊性の魚なので、稀に大群からはぐれた小さな群れが沿岸まで迷い込むことがある程度で、そう易々と釣れるものではない。
サビキ釣りの外道(お目当て以外の魚)として稀に釣れることがあるが、多くは旬を過ぎているため不味い。
初秋に北海道の太平洋側、1月末から2月初頭までの「大寒」の頃には長崎県五島列島限定で沿岸釣りが可能になる。
なおサンマには胃が無いので排泄スピードが極めて速く、便が残らない、だから他の魚ではほとんど取り除く内臓も同時に食べる事が可能なのだ。
養殖サンマを見ないわけ
天然モノが減ったなら養殖すればよくね?なんで養殖モノはないの?と思ったあなた。
この動画にもあるように、サンマの養殖は「不可能じゃない」だけでとてつもなく難易度が高いのである。
というのもサンマは恐ろしくデリケートな魚で、皮膚が弱いため網で捕るとすぐダメージを受けて死んでしまう。なので生きた個体を持ち帰るのが極めて難しく、飼育しようにも神経質過ぎて光や音に敏感なためマトモに生かしておくには黒いカーテンで遮光し、自動的に水流を作り、専用の装置で自動給餌する……と至れり尽くせり。当然設備もタダじゃないので出費がヤバい事に……(サンマ関係なく、水族館の入場料が高い理由の一つである)。
加えて水温が15°くらいのやや冷たい海を好むため、温暖化で水温が上がりっぱなしの日本近海では海洋養殖もできない。というか無理矢理実現したところで売値が安く採算が採れないので、原価回収できる価格にしようものなら庶民どころか金持ちでもそうそう食えないような高級品になるだろう。
今の技術ではアホみたいに難関なのである。
サンマにまつわる言葉
ことわざには以下のようなものがある
- サンマが出るとアンマが引っ込む
按摩とは押す、さする等の療法のこと、要するにマッサージ師
秋に脂ののったサンマは按摩がいらなくなるぐらい栄養豊富だという意味
- サンマ騒がせで豆腐屋上がったり
安いサンマが市場に出回って豆腐屋に人が来なくて商売にならないという意味
- 秋のサンマは孕み女に見せるな
秋のサンマは脂肪が多すぎるので、妊婦には毒になるという意味……本当にそうなのだろうか?
似た言葉に「秋茄子は嫁に食わせるな」というものもあるが、体を冷やすからいけないという思いやりとも、単にこんなうまいもの嫁=余所者になんかやるかという意地悪とか言われている。
- 貧乏秋刀魚に福鰯
寒流に乗ってきたサンマが豊漁のときは、寒流の勢いが強く農作物が不作になる。逆にイワシが豊漁のときは暖流が強くて夏の気温が上がり豊作になる。
- さんまは目黒に限る
せっかくサンマを取り寄せて貰ったのに殿様が「さんまは目黒に限る」と言った落語から。骨や油を抜いているうちに冷めてしまい、内陸の目黒で食べた鮮度の悪い魚でも焼きたてのほうが美味しいに決まっている・・・というオチ。