概要
万年筆は、ペン軸の内部に保持したインクが毛細管現象により溝の入ったペン芯を通じてペン先に持続的に供給されるような構造を持った携帯用筆記具の一種。
インクの保持には、使い捨てのインクカートリッジを用いるもの、ペン先をインク壺に浸してインクを吸入するものがある。吸入式には、これまた様々な方式がある。
画材として、ミリペンなどと混同される場合がある。
歴史
従来ペンと言えば、先端にインクを付けて書くものであり、ごく短時間しかインクが持たないのが欠点であった。そのため、ペン自体にインクを溜めておくという発想は昔からあり、エジプトファーティマ朝(909年~1171年)の時代には、既に万年筆の原型が完成していた。
現在まで続く毛細管現象を利用した万年筆は1883年、ルイス・エドソン・ウォーターマンによって考案された。
保険外交員であったウォーターマンが、ペンの故障のせいで大切な書類を台無しにしてしまい、そのせいでライバルに大口契約を取られるという営業マンの悲哀から生まれた・・・というのが有名な逸話だが、後代の創作の可能性があるらしい。
【ウォーターマンについて、22:30~】
なお、彼が立ち上げたウォーターマン社は、現在でも有名万年筆メーカーとして存続している。
つけペンと共に、改竄不可能な書類への筆記具として使われていたが、徐々にボールペンに取って代わられ、現在では正式な書類には使われない。
しかし、その趣味性が注目され、高級文房具として存続している。
名称
英語では「fountain pen(泉のペン)」と呼ばれる。
つけペンと比べて長時間書けるため、軸から泉のようにインクが湧き出てくるというイメージから名付けられたものであろう。
日本語の「万年筆」は、1884年頃から使われていたのが確認できるが、その由来については定かではない。
一節には英名の「ファウンテン」が「まんねん」と聞こえたためではないかとも言われる。
あるいは、手入れさえしていれば非常に長持ちするために「万年」の名がついたとも。
特徴
使用者の筆記の癖に合わせて、ペン先がわずかに変化し、馴染んでくるのが最大の特徴。
このため、長年愛用して自分好みに育てることができ、この気の長さと趣味性が高級文具として扱われる理由である。
脚本家の向田邦子は前述のウォーターマンの製品の愛用者であった。向田は、馴染んでいない新品の万年筆を嫌い、既にある程度使い込まれた他人の万年筆を狙って、懇願、脅迫、泣き落としなどの手段で譲ってもらっていたという。
主な被害者は実弟。