本名は岩鬼正美。水島新司『ドカベン』シリーズの副主人公ともいえる存在。
『チャンピオン』にこの漫画の連載が決まったのは、山田太郎の地味さに編集長が難色を示した際、すかさず水島が岩鬼の顔を出し、それで編集長が「面白い」と言ったことであるという。
常に学生帽を被り、葉っぱをくわえている。あの学生帽自体が髪の一部とのうわさもある。さらに葉っぱは、岩鬼の感情のバロメーターにもなっており、岩鬼が機嫌がいいと花が咲く。たぶん、共生の関係なのではないか(笑)。
自分から「天才」と言い切る自信家であり粗暴、かつ相当口が悪い。
しかし、それは、彼が資産家の家に生まれながら、親の愛情を注がれなかったためである。神奈川県出身なのに関西弁を使うのも、お手伝いさんに世話をしてもらっていたから。
実際のところ、彼の悪口は愛情の裏返しである。意外にも涙もろい。また、作中では山田以上の優しさを見せる場面もある。山田が本当に悩み苦しんでいる際は、岩鬼の方から相談に乗ったり、山田の怪我を治させるため、自分の恩人でもある武蔵坊弁慶を岩手県から呼び寄せたりしている。なんだかんだ言って、仲間想い、かつ義理堅い。『大甲子園』では、病気で父を亡くした子供との約束を果たすため、巨人学園の奇襲に怯まず、そして約束通り勝利をもぎとった。
実際、『ドカベン』48巻分は最初の一コマが岩鬼の顔で、最後は、家庭の事情で明訓高校を去る里中に岩鬼が激励を送る場面で幕を閉じる。
殿馬とは、お互いに補い合い、悪口を言い合う名コンビ。しかも、同時期に結婚しており、さらに新居が向い合せだった。
野球選手としては、サードとして美技を披露する一方、油断からチョンボを犯す場面も多い。
打者としては、ど真ん中が打てず、悪球だとほぼ確実にホームラン。
「グワラゴワガキィーン」なる、どうすればそんな音が出るんだ、というのがイラストのネタにされる。
本人は、度の強い眼鏡をかける、その手段と見せかけて伊達メガネで悪球を誘う、コンタクトレンズで視力を矯正、息を止めて無理やり視界を混乱させる、バットで頭を殴る、など、常人の及ばぬ発想で悪球を造り出す。
努力の人でもあるのだ。
作中では長嶋茂雄、王貞治のONに山田以上の評価を受け、感動に震える場面もあった。
明訓高校卒業後、福岡ダイエーホークス(2012年現在ソフトバンクホークス)に所属、FA権取得後はスーパースターズに所属。