「向き」と近い意味を持つが、しばしば、移動することを念頭に置いたり、その方向のずっと先にある物と関係を帯びたりしているような場合に用いられる言葉である。
「向き」が話者を中心にした概念であるのに対し、「方向」は客観的な基準で測った概念であるともいえる。
たとえば、
- 「この銅像は南向きに立っている」
という文と
- 「この銅像は南方向に立っている」
という文とでは意味が違ってくるだろう。
前者は、銅像の顔が向けられている向きが南である(南に顔を向けている)事を意味するのに対し、後者では、話者の意識している場所を中心としてそこから南へ進んでいくと銅像が見つかる(銅像の顔の向きはどの向きでもよい)ということを表している。
同様に、「方向音痴」という人たちは存在するが「向き音痴」の人はまず考えられない。
「自分が東へ進んでいるのか北へ進んでいるのか分からない」人はいても、「自分が前へ向かっているのか左へ進んでいるのか分からない」人はいないだろう。